ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

ホントは何をする人なの!?
謎多き「忍者」を解明する、甲賀市本気のプロジェクト

 

 ジャパニーズカルチャーを代表するシンボルとして、アニメや映画など、さまざまなエンターテインメントに登場する「忍者」。しかし、実際はどういう存在だったのか解明されていないことが未だに多い。そこもまた魅力ともいえるが、甲賀市では「忍者のリアル」を明らかにするため、専門家による調査組織を結成。地域に残る数多くの古文書や遺跡を探査・探訪するとともに、未だ日の目を見ない忍者資料を掘り起こし、専門的知見から甲賀流忍者の「見える化」を目指している。調査組織の名は『甲賀流忍者調査団〜ニンジャファインダーズ〜』。団長は国際日本文化研究センター教授で歴史学者の磯田道史氏、副団長は京都市立芸術大学教授の畑中英二氏が就任している。

 市が調査に取り組むきっかけになったのは、平成12年(2000年)に帰郷した忍者の末裔(と本人も後でわかる)によって、偶然発見された全157点もの古文書の存在。『渡辺俊経(としのぶ)家文書』と名付けられたこの古文書群は、万治2年から大正3年(1659〜1914)にわたる忍者の存在を示す史料や忍術書が含まれ、この文書を残した渡辺家は江戸時代、尾張名古屋藩に雇われた「甲賀五人」と呼ばれる忍びのメンバーだったことが判明した。

 

 

2021年には甲賀市の指定文化財の忍術書「万川集海」の元となった詳細な記述の忍術書『間林清陽』を発見したことで、忍者研究を大きく前進させた。

「忍者は決して荒唐無稽な存在ではなく、地域に根差した住民としての性格と、激動の時代を生きた甲賀武士・古士としての性格を併せ持った生き様がわかってきました」と語るのは、甲賀市観光企画推進課主事の奥村泰雅さん。

甲賀在住の忍者の子孫たちによって、関係資料が大切に守り伝えられ、今も豊富に残っているのも甲賀の地の大きな特徴で、調査団は甲賀忍術研究会など民間団体と連携し、所蔵機関や個人宅を訪問し、当該古文書の調査にあたっている。その研究成果は定期的に報告書として発刊されているほか、講演会の開催やメディアへの公開などを通じて、広く発信。今年6月には磯田氏と歴史学者平山優氏の特別対談が行われ、全国から大勢の忍者ファンが甲賀の地を訪れた。

 

 

「仕官ながらも、地域社会に根ざして生きたリアルな甲賀流忍者の姿が明らかになりつつあります。それは、甲賀流忍者と双璧をなす伊賀流忍者はもちろんのこと、忍者全体の実態解明や、より確かな忍者像を世界へ発信していくことにも繋がっていくはず。確かな根拠に基づいた「リアル忍者」の解明と情報発信のため、一歩ずつ努力を重ねていきたいです」と、奥村さんは続けます。

 今年度より地域プロジェクトマネージャーを登用しました。また甲賀流リアル忍者館には本調査団の調査結果を展示しています。市民や関係団体と協力して一気通貫で「甲賀流忍者調査団」のプロジェクトを推進そ、甲賀流忍者を広く発信し、観光のみならず政策にも活用していきたいです。「甲賀市には、「忍者」と呼ばれた人々の足跡を辿ることができるさまざまな施設や史跡が残っています。これらを巡って、ここにしかない甲賀流リアル忍者の姿を感じてみてください」(奥村さん)。

 

【profile】
甲賀流忍者調査団〜ニンジャファインダーズ〜
忍びの里として名高い甲賀の地で、忍者にまつわるさまざまな「こと」を調査する組織。平成27年から活動開始。今も残る甲賀流忍者の古文書やエピソードなどを集め、専門的知見から分析。その結果を発信し、「甲賀流忍者源流の地」としての独自性を高める役割を担う。調査団は、磯田道史氏(国際日本文化研究センター教授)を団長に、副団長は畑中英二氏(京都市立芸術大学教授)、甲賀市観光企画推進課、甲賀市歴史文化財課で構成される。