ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

ハプニングも失敗もすべて勉強。
初の海外戦でまたひとつ強くなった。

 

去る3月1日、韓国・ソウルで行われたボクシングイベント『フェニックスバトル・ソウル日韓戦』で、湖南市出身のボクサー、安達陸虎(りくと)選手が出場。スーパーウエルター級8回戦で韓国のカン・ギョンミン選手を相手に3―0の判定で勝ち、日本ランキング10位に返り咲いた。安達選手にとっては初の海外戦。試合開始時間や対戦相手の直前の変更も珍しくない海外戦だが、「どんなことがあっても淡々といこう」という思いで韓国入りした。日本から駆けつけたたくさんの応援のおかげで、会場でアウェー感は感じることはなく、「終始冷静にいられました」と語る。

 

対戦相手のカン選手は、安達選手の重たいパンチに倒れることなくしぶとく攻める。「(カン選手は)顔をしっかり下げるのでパンチが当てづらかったです。ホールド(相手にしがみつく)が続くと普通はレフリーが注意しますが、今回は1度もなかった。それも(あ、アウェーやな)と思いました」。安達選手のペースで試合が進み、後半にはいろんなパンチを試す余裕もあった。普段のスパーリングでも経験のない8Rまで戦い抜く体力があると知れたことも、今後の安心材料になった。

 

試合直前はハプニングの連続。減量は好調に進み、あとは最後の水抜きを残すのみの状態で現地入り。ところが、ホテルの部屋に浴室はなく、訪ねた現地のサウナは室内でも寒暖差があり、残り1kgの減量に5時間を要した。計量後の食事も、夕食にウナギを食べるのがルーティンだが、ウナギ屋の予約が取れておらず焼肉に変更。炭水化物摂取のために持参したレトルトご飯も、ホテルに電子レンジがなかったためキンパ(韓国の海苔巻き)を代用。塩分の摂りすぎで、当日は身体が重かった。その影響か、7ラウンドには足が攣りかけたというが、「これも勉強。海外に行くこと自体初めてだったし、初めての経験が多かったので、メンタル的には強くなったと思います。今回の勝利は、自分の中でも大きな勝利です」と前向きだ。

 

 

 

所属している大橋ボクシングジムの大橋秀行会長も「ボクシング自体、確実によくなっている」と、安達選手を評しているという。「それは自分でも感じています。焦らない心を持てたことが、自分自身を強化したといちばん感じていることです」。メンタル強化に影響しているかも…というのが、電車移動やウォーキング中のオーディオブックの活用だ。「周りが見えなくなるくらい聴くことに集中する経験は、一種の瞑想に近いのかも。その経験がボクシングにもつながってくるのかなと思います」。

 

試合後に滋賀に帰省すると、相手の健闘を讃えながら、安達選手の勝利を喜んでくれた。「日本ランキングにも返り咲いたので、これからだなと思っています。いつか山中慎介さん(湖南市出身の元プロボクサー、第29代世界バンタム級王者)みたいになれるように頑張ります」。

 

前回の取材から半年。勝利を積み重ねながら、淡々と、自分に集中するという最強のスキルを身につけた安達選手。次の試合が早くも待ち遠しい。

 

【profile】

安達陸虎選手
本名:陸仁
1998年湖南市生まれ
2015年9月 プロテスト合格
階級:スーパーウエルター級
2017年 西日本新人王、最優秀選手賞獲得
2021年 大橋ジムに移籍
戦績22戦18勝4敗(2024年4月現在)