アートと社会をつなぐコーディネーター 中田 洋子 FILE No.46 ART STYLE | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

日本の子どもたちにも、

日常にアートを感じてほしい。



今秋、近江八幡市で開催される芸術祭『BIWAKOビエンナーレ2007~風土~』をプロデュースする中田洋子さん。中田さんは、国内外のアーティストたちを広く紹介すべく、芸術イベントの企画から開催までを手掛ける「キュレーター」というお仕事。いわばアートと社会の橋渡し的存在だ。

中田さんが、現代美術と出会ったのは大学生のとき。関西学院大学文学部美学科で版画などを学ぶ傍ら、京都や東京で演劇活動に参加。その後3年間に及ぶNY留学で彫刻を学んだ後、マニラで事業を展開する。さまざまな街を訪れた中田さんにとって、90年代からひんぱんに訪れた壁崩壊後のベルリンは、その後の生き方を決めたまさに運命の街。廃墟と化した街に世界中からアーティストが集まり、街のあちこちで自然発生的に個展や展覧会を開催される…そんな現象に感銘を受けた中田さんは、自分で作品を作ることより、自分が感動した作品や作家を人々に伝える活動を選んだ。

40代で、芸術活動を支援する団体『アソシエーションエナジーフィールド』をフランスで設立。しかし、長い海外生活から日本に戻ってくると日本の街の激変ぶりに愕然となった。小さい頃遊んだ原っぱや日本家屋はなく、あるのは景観を無視した派手な看板やビルばかり…。「本当にこれが、日本のみんなが求めてた変わり方なの?って思ったんです」。偶然訪れた近江八幡市で、中田さんはその後のライフワークとなるヒントをみつける。

近江八幡市は、昔の酒蔵や商家や歴史的な洋館建築、市のシンボルである八幡堀や水郷など、街ぐるみで伝統的な風景を残そうと取り組むエリア。中田さんが求めていた場所が、そこにあった。「私が住むフランスでは、ルイ14世たちが住んでいた城が国立考古学博物館として使われていたり、画家の邸宅が美術館に使われたりして、フランスの人たちは小さい頃から芸術が生活の一部になっています。私は日本の子どもたちにもアートがあって当たり前という感覚を体感してほしい。近江八幡のような素晴らしい街なら、それができると思ったんです」。そんな思いが『BIWAKO~』の開催を実現させた。

会場やアーティストの交渉、営業活動まで、中田さんが一人で(しかも資金0円で!)こなしてきたこの芸術祭も、今や大手企業や市も賛同する一大イベントに成長した。開催中の約2カ月間、築100年を数える空き家、今は使われていない酒蔵などを会場に、作家たちがその空間だから成り立つ作品を展示。また、造形作家と市民が一緒に作品を作れるワークショップを行うなど、近江八幡の街が五感で楽しめるアート空間と化す。「アートがわからないという人も、ぜひ近江八幡市に来てください。会場に使っている建物を見てもらうだけでも、感動してもらえるはずです!」。

アーティストや作品について語る表情に、アートが好きでたまらない!という思いがあふれている中田さん。

『BIWAKO~』を世界に発信したいという夢も、必ず実現してくれるだろう。

【プロフィール】
関西学院大学卒業後、留学を経て、
2000年 フランスで「アソシエーションエナジーフィールド」設立(2005年 日本でもNPO法人に認証)
2001年に大津市、2004年に近江八幡市で開催された芸術祭「BIWAKOビエンナーレ」をプロデュース