音楽ホールにコンクリートブロックを使った造形は珍しい。
音楽ホールは公共施設の中でも日常から離れた特別な場であり、
100年を越えるものも数ある。
そういう長年、飽きのこない、建築デザインと美術が要求される。
豪華でなくても高級な素材とつくりが多い。
そんな状況の中で、能勢孝二郎は「南城市文化センター/シュガーホール」(1994)で、
舞台上とホールの左右の壁ほほ全体をコンクリートブロックでリリーフ状に造形している。
あらゆるものも人も灰塵に帰した沖縄戦から50年経ったにしろ、
能勢は一つひとつコンクリートブロックをレゴブロックのようを積む如く、
沖縄と自身を積み構築する表現に結びついた。
砂や砂利とセメントを水で混ぜたコンクリートのように、
岩や石に近い地球の重力がつくった果てしない密度のものでは息が詰まったのではないか。
沖縄ではよく見かけるサンゴ石の塀のように、
空気の通るスポンジのような素材との共感も能勢にとって重要だったろう。
抑圧を受け続けてきた歴史や、
島という、世界に向けてオープンの反対に孤立ししている現実との狭間で、
開放とか空気のように自由への願望は、表現の基本だったと思える。
西洋音楽の殿堂はパルテノンに始まり、
バロック的な表現の流れの中で、能勢はコンクリートブロックの穴を使って、
世界は揺れ動き、流れていることを
ジンベイザメの大きな口と鰓を使って大洋を泳ぐ様に見えた。
アトリエでくつろぐ能勢孝二郎ご夫妻 2019年6月
20世紀の世界のパブリックアートの動きの中でも、特筆すべき成果を上げた。



