彫刻家/ダニ・カラバンの訃報(5月29日)を聞いた。
パリの新都市ラ・デファンスからセルジ・ポントワーズに、
ダニ・カラバンの「大都市軸」が繋がった(1980-88)。
当時、日本の建築家、都市計画家、都市に関わる人の間では大革命だった。
都市にとっても、樹木のような、幹や枝が次々伸び、
新しい葉や花や果実を実らせる意図や目的とシステムが必要と思われていなかった。
都市は権力者、企業などが経済活動や文化活動など、利便性のために、
成長や膨張を自然発生的に続けているだけだと考えてきたからだ。
パリ、セーヌ河畔のルーブル美術館から始まる「大都市軸」は
ナポレオンの凱旋門を通り、ラ・デファンスのグランアルシュの巨大新凱旋門を抜け、
20kmほど西北の、パリの人口を分散する新都市・セルジ・ポントワーズに辿り着く。
文化大国を標榜するフランスの結晶であるパリを象徴するルーブル美術館から
文化の歴史軸を現代を通過し、未来へいかに繋げるのか。
これをいかに表現するのか。
過去にも古代から様々に試みられてきた都市軸は、
どこも為政者の欲求や変化によって、細切れ、形骸化してきた。
フランソワ・ミッテラン大統領の在任中の
このダニ・カラバンの「大都市軸」の終点、
セルジ・セルジポントワーズの大きな円形広場を囲む公営住宅の中心に建つ
地軸を思わす36mの高さの塔から、パリ、ラ・デファンス方向を遠望すれば、
意識やイメージは、セーヌ河と合流するオワーズ川に至る空間は、
鳥が食べた実の種を各地にフンとして落とし、
それが軸線になってゆくような展開が、
かつての都市軸とは正反対に見えたからだ。
この「大都市軸」の素晴らしさは広大な空白、
何も無し、どこにも準拠しない大空と水と緑の間に
自由な大都市軸のイメージを描けることにある。
誰にとっても、人生と同様に都市も目的をもって築いてゆくことが必要なのだ。


