ニューヨークに行く楽しみの一つに、
世界中から有名アーチストが集まる中、
生きている天才に会えることだ。
そのうちの一人ヴィト・アッコンチ(1940~2017)は
ニューヨークの美術シーンの中でも特異な存在だった。
というのも世界のアートビジネスの中心、ニューヨークでは、
ソーホーを中心に、タレント的に人気のバロメーターに振り回される。
特に、ペインターの悩みは尽きない。
オークションで話題になる高額の絵画のメジャーリーグに対し、
立体系はマイナーリーグと行ったところ。
だから作品の売買を気にせず、表現に打ち込める。
達観している人が多く、大らかだ。
ヴィト・アッコンチの場合、パブリックアートをつくっても、
インスタレーションの延長のように、短期間持てばいい表現が多い。
というのも 、堅固で永久不変の日常化してしまった環境をひっくり返す別次元の環境に
人を陥れる表現を目的にしているからだ。
固定した概念を解体し、
世界を自由な存在にして新たな関係をつくろうとしてきた。
オランダ、ズーテルメール市の公園では、
動くことのない大地を切り取り、手漕ぎボートにして移動する。
樋口正一郎「都市と彫刻」p.82 写真提供:Vito Acconci 鹿島出版会
セントルイス、ローマイヤーアートパークでは、
大地に人間の顔のように個性があってもよい。
樋口正一郎「アメリカ50都市の環境彫刻」p.117 ST.LOUISE 誠文堂新光社
ニューヨーク、クィーンズ大学では、
宇宙人としての人間を明確に認識するため、
夜空に輝く星々を広場に引っ張って並べた。
樋口正一郎「都市景観と造形の未来」p.115 下の写真提供:Vito Acconci 鹿島出版会
オーストリアのグラーツでは市内の真ん中を流れるムーア川に
ステンレス製のムーア島をつくった。
ウィーンの避暑地・グラーツの夏、
流れる川を水を切って走る海賊船のパーティを思い描いていたのだろうか。




