アメリカ中部セントルイスを訪れた人は国民であろうが、
外国人であろうが、
アメリカを縦断するミシシッピー川畔に聳える「ゲートウェイアーチ」を見れば、
アメリカが偉大な国家であることを実感する。
アメリカ開拓時代、東部に辿り着いた移民が西部で発見された金を目指し、
山越え谷越え苦難の連続であった。
その中でも最大の難所が、アメリカを東西に分けていたミシシッピー川であった。
現代アメリカの繁栄が「約束の地」に至る入場門がセントルイスだったというわけ。
ステンレスで三角の断面を持つが、人工的でギスギスした印象ではなく、
放物線のカーブがナチュラルな、人をやさしく迎えてくれる。
1950年の国際コンペでスエーデン建築家/エーロ・サーリネンのこの案が選ばれた(完成は1965年)。
かつて、アメリカ中をグレイハウンドバスで回っていたころ、
朝早く起き、高さ192mもある朝日に輝く「ゲート」を見たとき、
祝福され、天国への道を感じたものだった。
そして、底辺部の三角の断面が上に向かうに従がって、
少しづつ細くなり、青空の中に溶け込んでゆくような、
あるいは、所々で刃で青空を切り込んでゆくような感じも、
世界と同調するような、自分が世界を切り拓いてゆく姿を夢想していた。
1カプセル5人乗りの数珠繋ぎのエレベーターで、アーチの頂点に上がれば、
今度は現実の地球の姿、ミシシッピー川やセントスイスカージナルス球場なが眼下に見える。
あらゆる思想や行為が金儲け主義のいアメリカで、
営利を度外視した20世紀最高のモニュメントを建てた国家は、
仮にどこまで落ちても
永遠に尊敬されることが確かな免罪符を手にしているのだ。


