4月中旬。
都内では桜がすっかり散ってしまいましたが、
燕子花のシーズンが、すぐそこまでやってきています。
毎年この季節に合わせて、根津美術館で開催されるのが、
尾形光琳による国宝《燕子花図屏風》を主役にした展覧会。
財団創立85周年を迎えた記念すべき今年は、そのスペシャル版として、
“国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図 光琳・応挙・其一をめぐる3章”が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
根津美術館が所蔵する国宝・重要文化財は約100件。
そのうち、日本近世の絵画は3件です。
一つが、円山応挙の重要文化財《藤花図屏風》。
一つが、鈴木其一の重要文化財《夏秋渓流図屏風》。
そして、もう一つが、国宝《燕子花図屏風》です。
国宝ではなく、重要文化財といえども、
《藤花図屏風》も、《夏秋渓流図屏風》もそれぞれ、
過去に同館で開催された展覧会では、主役を張った経験あり!
名実ともにスター級のコレクションです。
本展では、その3点が揃い踏み。
トリプル主演を果たしています。
重要文化財 円山応挙《藤花図屏風》 日本・江戸時代 安永5年(1776) 根津美術館蔵
重要文化財 鈴木其一《夏秋渓流図屏風》 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
国宝 尾形光琳《燕子花図屏風》 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
年代も描かれた場所もバラバラですが、
3点とも六曲一双の金屏風仕立てであり、
カラーリングも、金と青と緑と、共通しています。
さらに、いずれの作品も花が重要な役割を果たしています。
重要文化財 円山応挙《藤花図屏風》 日本・江戸時代 安永5年(1776) 根津美術館蔵
重要文化財 鈴木其一《夏秋渓流図屏風》 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
国宝 尾形光琳《燕子花図屏風》 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
まさに、出逢うべくして出逢った3点。
その奇跡の競演をじっくりと堪能できる展覧会です。
文句のつけようのない展覧会でしたが、
あえて一つだけ懸念点を挙げるとするならば、
来年以降の《燕子花図屏風》展は、本展を超えられるのでしょうか。
さてさて、本展では主役の3点以外にももちろん、
根津美術館が所蔵する日本近世の絵画コレクションから、
選りすぐられた名品の数々も出展されています。
その中でも個人的にもっとも印象に残っているのは、
生没年不詳の謎多き絵師・曽我宗庵による《鷲鷹図》です。
曽我宗庵《鷲鷹図》 日本・江戸時代 17~18世紀 根津美術館蔵
タッチが、実にハードボイルド。
『ビッグコミック』に掲載されていても、違和感なさそうです。
間違いなく、右隻の鷲(鷹?)は・・・・・
「俺の後ろに立つな。」と言っています。
それからもう一点印象に残っているのが、
俵屋宗達の工房で制作された《桜下蹴鞠図屏風》です。
《桜下蹴鞠図屏風》 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
右隻に描かれているのは、蹴鞠に興じる人々。
蹴鞠は基本的に8人制とのことで、
画中の人物はすべてプレーヤーと考えられています。
蹴鞠は、個人戦でも4対4の団体戦でもなく、
8人全員がワンチームとなって、協力し合い、
いかに長く落とさず蹴り続けられるかを楽しむものなのだそうです。
なお、桜の木が4本描かれていますが、
これらは「懸かりの木」と呼ばれるもの。
この4本の内側がフィールドとなるようです。
と、蹴鞠のルールについてわかったところで、
個人的に印象に残っているのは、左隻に描かれたこちらの人物。
何があったのかわかりませんが、めっちゃ笑顔です。
しかも、ガッツポーズ。
ガッツ石松が広めるよりも前に、
江戸時代にガッツポーズをしていた人物がいたのですね。
おそらく、日本最古のガッツポーズです。
┃会期:2025年4月12日(土)~5月11日(日)
┃※オンライン日時予約制
┃会場:根津美術館
┃https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/