抽象のラビリンス―夢みる色と形― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、東京都渋谷公園通りギャラリーでは

アール・ブリュット2024巡回展 抽象のラビリンス―夢みる色と形―”が開催中です。

 

 

 

正規の美術教育を受けていない人による芸術、アール・ブリュット。

その魅力を都内に巡回して紹介する展覧会、

“アール・ブリュット巡回展”が2020年より毎年開催されていますが、

今年の2024年展は、その5回目に当たります。

それを記念して、本展ではアール・ブリュットの研究家として、

国際的に活躍するエドワード・M・ゴメズさんがゲストキュレーターに!

彼が選んだ世界に発信すべき7名のアーティストの作品が紹介されています。

星

 

 

ちなみに。

本展のテーマである“抽象のラビリンス”にちなみ、

ラビリンスをイメージした会場デザインとなっていました。

 

 

 

会場構成を担当したのは、建築家ユニットのアトリエ・ワン。

同館のほど近くにある宮下公園を、

「みやしたこうえん」に改修したお二人です。

再利用も可能で、環境にやさしい段ボールで展示壁が作られています。

なお、作品を展示する高さを変えているのにも理由が。

 

 

 

見やすい高さは人それぞれで違います。

であるならば、みんなでその不便を分かち合えばいい!

そういった考えから、あえて展示の高さを変えているそうです。

 

本展の参加作家の中で個人的に気になったのは、

ポスターなどのメインビジュアルにも採用されている箭内裕樹さん。

 

 

 

作業室に流れている音楽を聴きながら鼻歌を歌い、

太さの違う様々なボールペンを使って、実に楽しそうに描いているそう。

 

 

 

確かに、どの作品からも鼻歌が聞こえてくるようで、

無心になって楽しんで描いてるのが伝わってきました。

オザケンの音楽を聴いている感覚に近い多幸感がありました。

 

続いて気になったのは、對馬考哉さん。

2020年の国内外の障害者アートの公募展、

「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 公募展」で、

最高賞に当たる審査員賞に選ばれたアーティストです。

本人は意識していないのでしょうが、

その作風はどこかバスキアを思わせるものがありました。

 

 

 

彼の作品の中でとりわけ印象に残っているのが、

《肯定》というタイトルが付いた写真手前の作品です。

 

 

 

タイトル名通り、画面にビッシリと「肯定」と書かれていました。

 

 

 

これだけ「肯定」という字があると、

逆に肯定されていないような気がしてきました。

むしろ否定されているような気さえします。

 

 

本展出展作家の中で最年長なのが、

広島市在住の画家ガタロさん、御年75歳。

広島市のとあるショッピングセンターで清掃員として、

実に35年以上に渡って清掃の仕事を続けてきたそうです。

働き始めた頃は何度も仕事を辞めたくなったそうですが、

続けるうちに、懸命に働きすり減ったり汚れたりした掃除道具たちを、

愛おしく感じるようになり、それをモチーフに絵を描くようになったのだとか。

本展には、そんなガタロさんが長年に渡って、

清掃道具を描いた絵画のごく一部が紹介されていました。

 

 

 

何の変哲もない雑巾。

いや、それどころか、使い古されて、

一般的には見向きもされない雑巾なのですが。

 

 

 

ガタロさんの手によって描かれると、

まるで北方ルネサンスの画家デューラーの作品のような。

オールドマスターを彷彿とさせる風格が漂っていました。

 

 

最後にもう一人紹介したいのが、伊藤駿さん。

木炭を使ってて、動物やギターなど、

自らが興味関心のあるものを自由に描く作家です。

どの作品からも、いい意味で禍々しく、

一度観たら目を逸らせない圧のようなものを感じました。

 

 

 

ちなみに。

こちらの作品は、《戦う司会者》とのこと。

 

 

 

誰をモチーフにしたのかは不明ですが、

日和見の司会者ではないことは確かです。

スタジオを戦場と考えている“お笑い怪獣”こと、

明石家さんまさんのイメージなのかもしれませんね。

 

それらのパワフルな作品に混じって、1点だけ脱力系の作品がありました。

 

 

 

描かれているのは言わずもがな、マンボウです。

表情といい、余白といい。

観れば観るほど、やる気が奪われていきました(笑)。

 

なお、数ある伊藤駿さんの作品の中で、

個人的にもっとも印象に残っているのが、こちら↓

 

 

 

タイトルは、《鶴》とのこと。

悲しみとか怒りとか、あらゆる負の感情が渦巻いているかのよう。

「あの時、助けてもらえなかった鶴の父です」

そう言って人間に対して娘の復讐を果たす。

鶴の父を主人公にした物語をモーソウしていました。

タイトルは『鶴の恩讐』とか?

 

 

 

 

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