日本のまんなかでアートをさけんでみる | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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群馬県渋川市の原美術館ARCでは現在、

「セカチュー」みたいタイトルの展覧会が開催されています。

(正式には、“日本のまんなかでアートをさけんでみる”)。

 

 

 

実は、意外とそんなイメージは無いでしょうが、

原美術館ARCのある群馬県渋川市は、「日本のまんなか」なのだそうです。

・・・・・と言っても、文化や経済の中心地という意味ではなく。

日本の主要四島で最北端である北海道宗谷岬と、

最南端の鹿児島県佐多岬を円で結んだ中心に位置するのが、群馬県渋川市。

つまり、地理的に「日本のまんなか」というわけです。

それを象徴しているのが、鈴木康広さんによる屋外作品《日本列島のベンチ》

 

 

 

日本列島の形をしたベンチで、実際に座ることもできます。

床面に施されているのは、年輪をイメージしたドローイング。

その中心に位置しているのはもちろん、群馬県渋川市です。

 

というわけで。

原美術館ARCが「日本のまんなか」にあることは、

地理的にいえば、疑いようのない事実ではあるのですが。

やはり、原美術館が品川にあった時代に比べてしまうと、

主にアクセス的な理由から、アートファンが気軽に足を運べないようで。

その呼びかけを、声を大にする必要がある。

そこから、“さけんでみる”というフレーズを採用したようです。

 

 

さて、展覧会の冒頭を飾るGallary Aでは、

「思考のきせき」と題し、戸谷成雄さんの《森Ⅱ》と、

 

(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

名和晃平さんの「PixCell」シリーズの初期作が展示されていました。

 

 

 

その周囲を囲むように展示されていたのは、

長時間露光による写真作品で知られる佐藤時啓さんによる作品です。
長時間露光での撮影中に、自身で手鏡やペンライトを持ち、

カメラに向かって光を当てては移動を繰り返し、写真に無数の光を定着させる佐藤さん。
(佐藤さん自身は絶えず動いているので、長時間露光で撮影した写真には写りません)

本展では、今は無き原美術館の建物をモチーフにしたものと、

原美術館ARCとしてリスタートを切った建物を舞台にしたシリーズ。

その計12点すべてが、一挙に展示されています。

 

 

 

続くGallary Bのテーマは「あいまいな境」。

こちらでは、杉本博司さんの「海景」シリーズや、

 

 

 

柳幸典さんによる越境やボーダレスをテーマにした、

「アント ファーム シリーズ」の1つ、《38度線》などが紹介されていました。

 

 

 

それらに混ざって展示されていたのが、

世界的建築家・磯崎新さんによるシルクスクリーン作品です。

20世紀を代表する芸術家デュシャンの造語を、

美術評論家・東野芳明が和訳した単語をオマージュして制作したものとのこと。

 

 

 

作品に添えられたのキャプションのその説明を目にして、

“なるほど。そういうインテリジェンスな言葉なのか”と思いましたが。

この2文字がパッと目に飛び込んできた際は、

大半の方が、オカモト的なアレ(?)を連想してしまったことでしょう。

 

 

3部屋目となるGallary Cのテーマは「中心のゆらぎ」。

こちらでは、森村泰昌さんの作品群や、

 

 

 

作品内に描かれたリングと対応するように、

実体化された(?)リングが、ぶらんぶらんと動く、

ジョナサン・ボロフスキーの《踊る道化師 2,964,771》が紹介されています。

 

 

 

それに加えて、あまりにデリケートであるため、

これまで収蔵庫からほぼ出されたことがないという、

草間彌生さんの初期作《自己消滅》も特別に展示されていました。

 

 

 

さらに、本展では、モダンアート界の“鬼才”ブルース・ナウマンや、

「宇宙船地球号」という概念を提案したバックミンスター・フラーなど、

日本であまり公開される機会の少ない芸術家の作品も紹介されています。

原美術館ARCの本気が伝わる展覧会。

原美術館ARCの魂の叫びが聞こえる展覧会です。

星星

 

 

ちなみに。

先ほど紹介した《踊る道化師 2,964,771》も個人的に印象に残っていますが、

同じくボロフスキーによる《芸術は精神のために No. 3094239》も印象的でした。

 

 

 

色味といい、絶妙なチープさといい、

全体的に、夏休みの宿題感(?)が漂っていました。

これが小学生による作品であれば、

何かしらのポスターコンクールで入賞する気がします。

 

 

 

 

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