芸術は、自由の実験室─夏のアートキャンプ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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この夏、川崎市岡本太郎美術館では、

“芸術は、自由の実験室─夏のアートキャンプ”が開催されています。

 

 

 

岡本太郎現代芸術賞出身の4人の作家による、

実験室のような、アートキャンプのような、グループ展です。

星

 

 

参加アーティストの1人目は、村上力(むらかみつとむ)さん。

これまでに岡本太郎現代芸術賞に4度も入選、

そのうちの3回は、特別賞を受賞しているほどの実力者。

M-1で例えるなら(?)、笑い飯のような存在です。

本展ではこれまでの入選作品が勢ぞろいしていました。

 

 

 

これらの立体作品は基本的にすべて、

麻の布を漆で貼り重ねて制作されています。

つまりは、乾漆造。

興福寺の阿修羅像と同じようなスタイルです。

 

村上さんが生み出す人物像はどれも、妙なリアリティがあります。

ただ、そのテクスチャーが、人の皮膚とは明らかに違うため、

生きている人間というよりも、アンデッドのように感じられるのです。

《PW-生きている俘虜》という作品にいたっては、

目に飛び込んできた瞬間、マジで心臓が止まりかけました。

『ウォーキング・デッド』が頭をよぎりました。

 

 

 

2人目の参加者は、画家の國久真有さん。

 

 

 

一見すると、一気呵成に描かれた、

抽象画のように思えるかもしれませんが、さにあらず。

自身の身体を軸にして、腕のストロークと遠心力で、

まるでコンパスのように円弧を重ねて描かれたものです。

 

 

 

なので、制作時は、キャンバスを、

腕が動かしやすい高さの台の上に平置きし、

その四辺を自身が移動しながら、線を描き続けているとか。

なお、制作には1~2ヶ月かかるそうです。

 

 

 

興味深いのは、キャンバスのサイズと、

腕の長さと関係で、中央部分に空白部分が生まれること。

 

 

 

描かなかった、いや、描けなかった部分なのに、

ただの空白ではなく、「空の概念」のようにも思えます。

絵の中心にぽっかりと生まれた空白部分に、

むしろ何かしらの意味を感じずにはいられませんでした。

 

なお、本展では巨大なキャンバス×2に描いた最新作も発表されています。

 

 

 

その横幅は約10m(×2)、高さはそれぞれ約5m。

普通の画家なら、それでも充分すぎるほど大作ですが。

國広さんの場合、周囲を移動しながら描くわけで。

20+20+5+5。

つまり、約50mを移動しながら円弧をひたすら描き続けたということ。

100㎞マラソンくらいにハードな制作です。

 

 

3人目は、園部惠永子さん。

「グンニグル」と名付けた、めちゃめちゃ描きづらい、

オリジナルの筆を制作し、参加型の作品を制作するアーティストです。

 

 

 

こちらが、そのグンニグルのうちの1つ。

 

 

 

長いわ、おもりが付いて重いわ。

とにかく描きづらい筆です。

(先端に取り付けられたクリップに色マジックを挟んで、描く仕組み)

誰でも参加できる作品ゆえ、せっかくなので、チャレンジしてみることに。

 

 

 

とりあえず、バンクシー的なものを描いておきました。

自由に動かせないわりには、それっぽく描けたと思います(←自分に甘い!)。

 

ちなみに。

会場ではこれまでに制作された、

さまざまなタイプの「グンニグル」も紹介されていました。

中でもインパクトが大きかったのが、こちらのグンニグル。

 

 

 

お神輿タイプのグンニグル。

その名も、《担グニル(かつぐにる)》

絵を描くためには、大人4人の力が必要となるそうです。

 

 

4人目の参加アーティストは、仏師の西除闇(にしじょあん)さん。

昨年の岡本太郎現代芸術賞で西さんは、

廃棄予定だった古い『週刊ジャンプ』を素材に、

何体もの仏像を彫った作品を発表していました。

本展でも、その作品は展示されています。

 

 

 

さらに、本展では、流木の一部に、

仏像の顔を彫ったタイプの作品も発表していました。

 

 

 

また、来場者が参加できるタイプの作品も。

 

 

 

円形に並んでいる流木は、いわゆる十王を表しているそうです。

そして、中央に置かれているのが、十王の一人である閻魔になれるアイテム。

またまたせっかくなので、アイテムを装着してみることに。

 

 

 

・・・・・・・閻魔なのか??

閻魔というよりは、どこかの部族の狩人のようです。

 

なお、西さんは仏像だけでなく、

週2、3で通うほどマクドナルドも好きなのだそうで。

こんな写真作品も発表していました。

 

 

 

街中に捨てられたマクドナルドのゴミを撮影したものです。

あまり意識したことが無かったですが、

世の中には、こんなにもマックのゴミが捨てられているのですね。

 

 

 

ちなみに。

作品名は、《野生のマック》とのこと。

ネーミングセンスが最高です。

数ある《野生のマック》の中で、

もっとも野生感があったのは、この写真でしょうか。

 

 

 

野性というよりも、野良マック。

退治した後(?)は、仲間になりたがってくれそうです。

 

 

 

 

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