美術の世界には、奇跡を起こしたヒーローが数多く存在する。
もしも、そんな彼らにヒーローインタビューを行ったなら・・・?
インタビュアー(以下:イ)「放送席、放送席。
こちらには、過激な修行スタイルを発明し、一部のファンの間で、
カリスマ的人気を誇ったシメオンさんにお越し頂きました・・・ってあれ?
どこにもいらっしゃいませんね??」
シメオン(以下:シ)「おーーーい!ここにいるぞーーーー!」
イ「ん?え?」
シ「上、上!塔の上!」
イ「まだそんなところにいるんですかー?」
ウィリアム・バージェス《登塔者聖シメオン》
シ「俺といえば、塔だろ?!」
イ「まぁそうですけど。
というか、そもそも、何で塔の上で暮らすようになったんですかー?」
シ「10代の頃は修道院で修行してたんだけど。
過激な修行を自ら行ってたから、周りのみんなにドン引きされちゃって。
修道院を追い出されちゃったもんだから、
崖みたいなところで、ひっそりと苦行を行ってたのよ」
イ「何でそんな苦行が好きなんですか?」
シ「修行なんて身体を張ってナンボだろ?」
イ「そういうものなんですか??」
シ「とにかく、そんな生活を続けてたら、いつの間にか、
“誰よりもストイックな修行者”と噂されるようになっちゃって。
弟子になりたいって野郎がどんどん来るわけ」
イ「いいことじゃないですか?」
シ「イヤだろ!俺はひっそり修行したいんだよ!
だから、3メートルくらいの塔を作って、その上で生活するようにしたわけ。
それなのに、さらに人が集まってきちゃうんだよ」
イ「そりゃそうでしょ!だって、逆に目立つじゃないですか」
シ「あー、そうか!いや、それはもっと早く言ってくれよ!
3メートルじゃダメなのかと思って、4年後に、
今度は約6メートルの塔を作っちゃったじゃねぇか」
イ「何してるんですか?!」
シ「しかも、その3年後には、10メートルの塔を作って。
さらに、その10年後には、20メートルの塔を作って。
結局、死ぬまで20年間そこに住み続けたぜ」
イ「ずっと何してるんですか!」
シ「いや、俺だって途中でやめようかと思ったこともなくはなかったよ。
一度だけやめれそうなチャンスもあったし」
イ「それはどういうことですか?」
シ「俺のこの塔での修行をやめさせようと、
他の修道士たちが、使いを寄こしたことがあるんだよ。
「今すぐその塔から降りてきなさい」って言われて。
俺、降りようとしたのよ」
イ「はいはい」
シ「そしたら!すぐに降りようとするということは、
ただの目立ちたがり屋なわけじゃなくて、なんと謙虚な修行者だってことになって。
それで、「やっぱり降りなくていい!」って言われたのよ。
俺、降りる気満々だったぜ!」
イ「でも、その結果、37年間も塔の上で生活し続けたということで伝説になりましたからね」
シ「1クールのレギュラーより1回の伝説だろ」
イ「ちょっと何言ってるかわからないですけど。
伝説といえば、シメオンさんのその偉業は、ギネスブックに、
『世界一柱の上に長く座り続けた人物』として掲載されているようですね。
しかも、ギネス認定されている記録の中で、
もっとも長く更新されていない記録でもあるとか」
シ「俺としては別に更新してもらってもかまわないぜ。
よかったら、お前もチャレンジしてみるか?」
イ「いえ、やりません(キッパリ)!