現在、世田谷美術館で開催されているのは、
“民藝 MINGEI—美は暮らしのなかにある”という展覧会。
思想家の柳宗悦や河井寬次郎、濱田庄司らによって、
約100年前に提唱された「民藝」をテーマにした展覧会です。
(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)
展覧会は全3章で構成されています。
まず第1章は、「1941生活展」。
まるで、日本民藝館の一室がそのまま、
世田谷美術館の中にワープしてきたかのようです。
と思ったら、こちらは、1941年に日本民藝館で開催された、
伝説の展覧会“生活展”の一部を完全再現したものなのだそう。
今でこそすっかり日常的になった民藝ですが、
まだこの頃は、そこまでその概念が浸透していませんでした。
そこで、柳はこの“生活展”において、
日本民藝館の展示室内に生活空間を作り、
そこに民藝のアイテムを並べてみせたのだそう。
(それらの中には、柳が普段使いしていた食器もあったとか)
この画期的なアイディアにより、当時の人々に、
「いかに民藝が暮らしのなかにあるか」を伝えるのに成功したのでした。
確かに、展示ケースに並べられるよりも、
こうして生活空間を再現してもらったほうが、イメージしやすいですよね。
IKEAと同じ手法です(←?)。
続く第2章は、「暮らしのなかの民藝」。
こちらでは柳が収集した民藝の品々を、
「衣・食・住」の3つのキーワードに分けて紹介しています。
展示品のほとんどが、日本民藝館の所蔵品なので、
日本民藝館にいるような感覚になってしまうのは当然のような気もしますが。
その感覚を、より助長(?)していたのが、
展示台の一部に使われていたこちらの布です。
日本民藝館で見慣れた布。
日本民藝館の竣工時より、
壁面に使用されているという大井川葛布です。
この布があるだけで、どこでも日本民藝館になってしまうのですね。
大井川葛布、恐るべしです。
さて、第3章は「ひろがる民藝」。
こちらは、柳の没後、濱田庄司や芹沢銈介によって、
1972年に刊行された書籍『世界の民芸』をもとに構成された章で、
南米やアフリカといった海外における民藝品の数々が紹介されています。
また、第3章では、小鹿田焼や八尾和紙といった、
日本各地の伝統的な工芸の産地の“今”にもフィーチャー。
現代の作り手の姿を映像とともに紹介しています。
なお、展覧会を締めくくるのは、こちらのインスタレーション。
セレクトショップ「BEAMS」のディレクターとして、
昨今の民藝ブームに大きな役割を果たしてきた、
テリー・エリスと北村恵子(MOGI Folk Art・ディレクター)によるインスタレーションです。
現代のライフスタイルに、実に違和感なく、
民藝のアイテムの数々が取り入れられていました。
それも、モデルルームのような空間ではなく、
誰かがさっきまでそこにいたかのような生活溢れる空間に。
椅子の背もたれに掛けたスカジャンなんて、
これでもかというくらいに生活感が溢れていました。
民藝の品が一番しっくりくる空間は、日本民藝館。
そうこれまで思い込んでいましたが、
意外と、現在のライフタイルにも合うものなのですね。
思わず、真似してみたくなりました。
これぞ、まさしく1941年の“生活展”の令和版。
ちなみに。
こちらのインスタレーションで民藝欲がダメ押しで高まった後には、
20以上もの全国の老舗の名店や人気工房が集結した特設ショップが待ち構えています。
財布の紐が緩むこと必至です。