サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、千葉市美術館では、日本初となる・・・いや、

世界初となる鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)の大規模回顧展が開催中!

その名も、“サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展”です。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


 

鳥文斎栄之は、旗本出身という異色の経歴を持つ浮世絵師。

将軍の絵の具を用意する「絵具方」という役目を務めるも、わずか数年で辞職。

経緯は今のところよくわかっていないそうですが、

その後、浮世絵師として活動、のちに肉筆画へと転向しました。

 

そんな謎多き浮世絵師、鳥文斎栄之に迫る世界初にして、

史上最大規模の回顧展には、大英博物館やボストン美術館を含む、

国内外の鳥文斎栄之の作品が、千葉市美術館に一堂に集結しています。

その数、約160点!

それらの中には、保存状態が特に素晴らしいものや、

本展が初公開となる貴重な肉筆画なども含まれています。

 

 

 

ちなみに。

こちらは、鳥文斎栄之の弟子とされる鳥高斎栄昌によるもので、

ボストン美術館が所蔵する《郭中美人競 大文字屋内本津枝》という作品。

 

 

 

現在世界で確認されているのは、

これ1枚のみというSSS級に超レアな浮世絵です。

浮世絵好きとしては、絶対に見逃せない一枚と言えましょう。

星星

 

 

さて、鳥文斎栄之の代名詞といえるのが、「紅嫌い」です。

紅嫌いとは、天明から寛政年間にかけて流行した浮世絵の一種。

別名「錦絵」とも呼ばれるほどに、

全盛期の浮世絵は多色摺りで色鮮やかなものですが。

あえて、紅系の派手やかな色を使わず、

シックなトーンに抑えたものを「紅嫌い」と言います。

その生みの親とも言われるのが、鳥文斎栄之。

彼は、浮世絵師の中でも最も多くの「紅嫌い」を残しました。

 

 

 

色鮮やかでポップな色合いばかりのインスタの投稿写真の中で、

あえて、セピア加工した写真のほうが、オシャレでカッコよくて目を惹く。

「紅嫌い」が支持を受けたのは、それに近いものがあったのかもしれません。

 

また、鳥文斎栄之のライバルといえるのが、

来年の大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎がプロデュースした喜多川歌麿。

歌麿は美人をバストアップで描く大首絵で人気を博しましたが、

対して、鳥文斎栄之は美人を全身像で描くスタイルにこだわりました。

 

 

 

そのポージングの美しさに加えて、

着物の華やかさにも定評があった栄之。

蔦屋重三郎と歌麿を脅かす存在として、

来年の大河ドラマにも登場するかもしれません。

 

とはいえ、栄之も数点は美人画の大首絵を描いていたそう。

展覧会では、そのうちの貴重な1点が紹介されていました。

 

 

 

なお、貴重な作品だからなのでしょうか。

本展の図録の表紙にも採用されていました。

 

 

 

・・・・・・・いや、そこは、美人画の全身像を採用しないんかい(笑)!

 

 

最後に、個人的に一番印象に残った作品をご紹介いたしましょう。

重要文化財に指定されている《善玉悪玉青楼遊興》です。

 

 

 

一見すると、遊郭のとある一コマが描かれているだけのようですが。

よく見ると、ところどころに善玉と悪玉、

人の心の善悪を擬人化したキャラクターが登場しています。

こうした善玉悪玉が登場する浮世絵は、

鳥文斎栄之以外にも、多くの浮世絵師が描いていますが。

栄之が描く善玉悪玉は・・・・・

 

 

 

妙に合成感がありました。

出来の悪いARのよう。

 

 

 

 

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