アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

 明日行きたくなる美術展情報をあなたに

星星星(3ツ星)
NEWピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ  国立新美術館(~9/21) 
  ・大ゴッホ展 夜のカフェテラス  上野の森美術館(~8/12)
  ・アンドリュー・ワイエス展  東京都美術館(~7/5)
  ・ロン・ミュエク  森美術館(~9/23)
🔜・ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち  宇都宮美術館(~6/21)
🔜・ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶  パナソニック汐留美術館(~6/21)
  
星星(2ツ星)
NEW山室眞二の薯版画〈かまくら博物誌〉  神奈川県立近代美術館 鎌倉別館(~9/127)
  ・日本・ベルギー修好160周年記念  美と知の交流の軌跡  國學院大學博物館(~6/28)
  ・ガリヴァーと奇想天外!ワンダーランド  慶應義塾ミュージアム・コモンズ(~7/30)
  ・(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ―新説/真説 コシノヒロコ―  東京都現代美術館(~7/26)
NEW松本陽子 宵の明星を見た日  府中市美術館(~7/12)
  ・浜口陽三と白倉嘉入展 満ちてくる光  ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(~8/2)
  ・川合玉堂 ―なつかしい日本の情景―  山種美術館(~7/26)
  ・イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび  PLAY! MUSEUM(~7/12)
  ・ちひろ美術館コレクション 魔法の絵本=絵本の魔法  ちひろ美術館・東京(~7/20)
  ・没後110年 日本画の革命児 今村紫紅  横浜美術館(~6/28)
  ・エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし  東京都現代美術館(~7/26)
🔜・ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界  サントリー美術館(~6/21)
  ・Unique Collection  彫刻の森美術館(会期未定)
🔜・スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー  東京ステーションギャラリー(~6/21)
  ・生誕100年 森英恵 ヴァイタル・タイプ  国立新美術館(~7/6)
🔜・拡大するシュルレアリスム  東京オペラシティアートギャラリー(~6/24)
🔜・ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求  SOMPO美術館(~6/21)
🔜・NHK日曜美術館50年展  東京藝術大学大学美術館(~6/21)
  ・太刀掛秀子展 ~『りぼん』70’sおとめチック☆エポック~  弥生美術館(~6/28)
  ・ジャッド|マーファ展  ワタリウム美術館(~7/12)
  ・Meet 美の交差点 近代日本画と東洋陶磁  クヴェレ美術館(~7/5)
  ・ピカソ・ミロ・バルセロのセラミック  ヨックモックミュージアム(~12/20)

星(1ツ星)
NEWぐるぐる展 進化しつづける人類の物語  MoN Takanawa(~9/23)
NEW心惹かれるチャイナドレス  日中友好会館美術館(~6/28)
  ・SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体  GYRE GALLERY(~7/12)
🔜・ノエミ・レーモンドの建築と意匠  Gallery A4(~6/18)
🔜・ひきつけるカタチとコトバ  たばこと塩の博物館(~6/21)
🔜・草野絵美「Ornament Survival」  √K Contemporary(~6/20)
  ・田中信太郎――意味から遠く離れて  世田谷美術館(~6/28)
  ・波板と珊瑚礁  WHAT MUSEUM(~9/13)
🔜・ティーカップ・メリーゴーラウンド  三井記念美術館(~6/21)
  ・佐内正史 雷写  岡本太郎記念館(~7/12)
  ・“YOU MADE ME LEAVE HOME...  エスパス ルイ·ヴィトン東京(~9/13)
  ・スープはいのち  21_21 DESIGN SIGHT(~8/9)
  ・うたう仲條 おどる仲條-文字と画と、資生堂と-  資生堂ギャラリー(~6/28)
  ・ミリアム・ハスケルをご存じ?  アクセサリーミュージアム(~7/25) 

東京国立博物館の平成館や豊田市美術館、

猪熊弦一郎現代美術館といった国内のミュージアムだけでなく、

MoMAことニューヨーク近代美術館の増改築の設計も手掛けた、

「美術館建築の名手」と呼ばれた建築界の巨匠・谷口吉生。

その彼が最初に手掛けた美術館建築が、

静岡県掛川市にある資生堂アートハウスです。

もし、その名にピンと来なくとも、

東海道新幹線の車窓から目にしたことはあるのではないでしょうか。

 

資生堂アートハウス建築と緑の木

 

 

昭和53年の開館以来、絵画や工芸品といった、

資生堂が所有する美術コレクションを一般公開してきましたが。

今月6月27日をもって閉館することが発表されました。

なお、隣接する資生堂企業資料館は、昨年11月にすでに閉館しています。

 

資生堂アートハウスの建物外観

 

 

ちなみに。

これをもって、資生堂がアートの分野から撤退するわけではなく、

今後のアート支援活動は、銀座の資生堂ギャラリーへ集約されるとのこと。

コレクションや資料・展示機能などの一部は、

銀座やShiseido Beauty Parkに移転するそうです。

敷地内にある大型作品は、さすがに移転できないでしょうが・・・。

 

資生堂アートハウスの屋外彫刻
資生堂アートハウスの丸いオブジェ

 

 

さて、資生堂アートハウスには、これまでプライベートで何度も、

資生堂のお仕事としても、コロナ禍に中継企画で訪れたことがあります。

名建築かつ入館無料でありながらも、

最寄駅から徒歩約25分と、アクセスに難があるため、

いつ訪れても、館内がゆったりしている印象がありましたが。

僕と同じように見納めしに来られた方が多く、いつになく館内が賑わっていました。

 

資生堂アートハウスの展示風景

 

 

閉館と決まった途端に、客足が伸びる。

閉館あるあるです(←?)。

 

 

そんな資生堂アートハウスの歴史のラストを飾るのは、

資生堂アートハウス所蔵作品展 小村雪岱-江戸を夢見る-”という展覧会。

「昭和の春信」と称された日本画家で挿絵画家、

小村雪岱(せったい)の作品約140点を紹介するものです。

 

資生堂アートハウス 小村雪岱展

 

 

会場には、雪岱の没後に制作された版画の数々や、

 

小村雪岱「春雨」の絵画と額装

 

 

舞台美術家としても活躍した雪岱の舞台装置下図の数々、

 

小村雪岱 舞台装置下図 2点

 

 

さらに、雪岱が装幀を手掛けた書籍の数々も紹介されています。

 

小村雪岱の装幀本と版画展示

 

 

ちなみに。

雪岱を装幀の世界に導いたのは、小説家の泉鏡花です。

鏡花は、大正3年に刊行した『日本橋』の装幀に、

当時まだ無名の若手画家だった雪岱を大抜擢しました。

 

image

 

 

その出来栄えを気に入った鏡花は、

以来、ほぼすべての装幀に雪岱を指名したそうです。

さらに、“雪岱”という雅号を与えたのも鏡花。

雪岱の本名は、安並なのですが、

“安並雪岱”では合わないだろうと、

旧姓の小村を名乗るようにアドバイスもしたのだとか。

 

なお、本展には、装幀だけでなく、

挿絵も手掛けた雪岱の代表作『おせん』。

 

小村雪岱『おせん』装幀画と書籍

 

 

その原画の数々ももちろん展示されています。

雪岱ファン垂涎の内容といえましょう。

 

小村雪岱「おせん」原画 和傘の雨宿り

小村雪岱『おせん』原画:湯船の女性と覗く女性

 

 

・・・・・・・ところで。

資生堂アートハウスの最後の展覧会が、

なぜ、小村雪岱の展覧会なのでしょうか?

実は、資生堂と雪岱には深い関係があります。

『日本橋』以降、売れっ子装幀家となっていた雪岱を、

どうしても意匠部の社員にしたかった資生堂初代社長・福原信三は、

「従来の仕事を自由に続けても良い」という破格の条件で招聘したのでした。

雪岱が資生堂に在籍したのは、約5年ほど。

その間に、小冊子の表紙や挿絵を担当したり、

香水のボトルデザインを手がけたりしています。

 

資生堂アートハウスの香水ボトルと箱

 

 

ちなみに。

資生堂の商品や広告に使われる特徴的なフォント(=資生堂書体)や、

資生堂の和文ロゴタイプの基本を作った一人が、何を隠そう小村雪岱です。

資生堂アートハウスの大トリを務めるに、もっとも相応しい芸術家といえましょう。

 

 

なお、資生堂アートハウスでは、小村雪岱展と併せて、

“工藝を我らにセレクション 2026”という展覧会が同時開催中です。

 

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2015年より7回にわたって開催された企画展。

それが、“工藝を我らに”。

美術品として遠のいてしまった工藝品を、

再び日々の生活に取り戻すことを目的とした企画展シリーズです。

その集大成として開催されているのが、本展。

過去の“工藝を我らに”に出展された同館所蔵の工藝品や調度品を、

お正月から大晦日までの一年の行事やトピックごとに取り合わせて紹介しています。

 

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食器セットと小皿、箸置き

 

 
あまりにさりげなく紹介されていますが、
展示されている中には、人間国宝の十四代 今泉今右衛門さんや、
オブジェ焼というジャンルを確立した伝説の前衛陶芸家・八木一夫による作品も。
 
資生堂アートハウスの小村雪岱展の小皿
小村雪岱の作品、三足の器

 

 

他にも富本憲吉や鈴木治、畠山耕治さんら、

工芸界の巨匠たちの作品が、あくまで日常遣いの道具として紹介されています。

どれも季節感が味わえる洗練された取り合わせで、真似してみたくなりました。

(↑家にそれらの工藝品があればの話ですが・・・)

なお、数ある工藝品の中でもっとも惹かれたのは、

ガラス作家の安達征良さんによる《硝子花入 青葉雨》という1点。

 

image

 

 

作品そのものももちろん美しかったですが、

背後に広がる青々とした芝との対比が、さらに美しかったです。
このようなシチュエーションで観られるのは、資生堂アートハウスならでは。
改めて、この素敵な空間が閉館してしまうのは残念でなりません。
星 星
 
 

 

 

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