コペルニクスの法則 - 悪貨は良貨を駆逐する

「悪貨は良貨を駆逐する」とはグレシャムの法則として有名なものである。

品位が劣る貨幣と良質な貨幣を同時に流通させると、後者は退蔵されるなどして、市場から姿を消すことを言う。またその結果、インフレとなる。

グレシャムは、イギリスの商人でエリザベス女王の王室代理人。女王への書簡の中で、この説すなわちグレシャムの法則のことを述べている。

転じて、グレシャムの法則とは「質の悪い仕事(しかしない人)が質のよい仕事(をする人)を駆逐する」「目先の仕事が大事な仕事を駆逐する」「不必要な出費が必要なものを買えなくする」「不用な品物が必要な品物の置き場所をなくす」「売れない商品が売れ筋の商品の売り場をなくす」「単価の低いものしか食べない客が席を占有して、単価の高い客の居場所をなくす」「低ランクの商品が売れたために、(本来こちらで儲けようと思っていた)高ランクの商品が売れない」などとも言われている。

さらに「非本命から申し込まれれために、本命と一緒になれなかった」とも言われる。いや、これは違うか。

耳の痛い話である。本稿を書いている時間が大切な時間を奪っているかも(笑)。

なお、聖職者、天文学者、医者であり、貧しい人にはタダで医療を施し、事実上の独立国であったエルムランド管区の政務を取り仕切り、その合間に天文観測を行い、ドイツ騎士団からの侵略を受けた時には踏みとどまって戦い、ポーランドの英雄となっている、しかし聖職者でありながら女性を囲っていたと根拠のない噂をされているコペルニクスも、同様の法則を述べたことが知られている。

コペルニクスの方が先。つまりグレシャムの法則ではなく、コペルニクスの法則である。

当時、新大陸より銀が流入するようになり、ヨーロッパはインフレ状態であった。プロシャとポーランドやドイツ騎士団だけではなく、ダンチヒなどの都市も独自の硬貨を発行しており、利益を上げるために、価値の低い硬貨を鋳造していた。これらがさらにインプレを加速した。コペルニクスは、これらの地域の統一硬貨を主張した。が、実現できなかった。

注、上記の「根拠のない噂」は、コペルニクスがプロテスタントと接触することを好まないエルムランド司教のダンティクスによるものらしい。当時コペルニクスは66歳。またダンティクスは、コペルニクスから治療を受けた恩義もあったはず。

2014/09/06