難病に冒され、心臓・肺の同時移植手術を受けた女性の手記。現題は「A CHANGE OF HEART」。本屋にかなり並んでいたので、読まれた方も多いかと思う。

この本の内容はレシピアントがドナーの影響を受けて、性格などの影響を受けるというもの。

日本語の題名にあるように、記憶そのものが転写されるわけではない。この手の話は、割り引いて聞かねばならないものもあるが、私は感情や想念が物質にも付着すると思っているので、ましてドナーの心臓や肺を移植して貰ったら、そのくらいの影響は十分にありうるものと考えている。

著者の女性は原発性肺高血圧症という難病に罹り、心臓と肺の同時移植手術を受けた。幸い経過も良好で順調に回復した。しかし、その後何か変。誰か他人が自分の体の中に存在しているようなのだ。

例えば、食べ物の嗜好。手術後のマスコミのインタヴューで何をしたいかと聞かれ、ビールは嫌いだったにもかかわらず「ビールが飲みたい」と口走ってしまった。KFCのチキンを好きになってしまった。

甘いものはもともと好きだったが、しかし食べる量がとても増えた。など。例えば、性格。男のような歩き方に変わった。少しばかり女性に惹かれるようになった。女性と一緒に暮らしている夢を見た。など。また「闘争的になった」とも言っている。

さらに彼女は、細身で長身の男の子の夢を何度も見るようになった。名前はティム・ラサール。

当然ながらドナーのことは「18才の少年でバイクの事故で死亡した」としか教えてもらえなかった。しかし自分に起こった変化、夢に出てくる男の子など、ドナーのことを知りたいとの思いは募るばかり。

ここでもちょっとばかり不思議なことが起こるのだが、それは省略して、新聞の交通事故の記事を調べて、ついにドナーを探し当てた。両親と連絡を取り、そのドナーの家族に会いに行った。

驚いたことに、夢で見た少年の名前(ただし本書中の「ティム・ラサール」は仮名)と一致した上に、食べ物の嗜好なども一致していたとのこと。

退院後、彼女は、移植患者サポートグループを作ったが、その中でも同じようなことが報告された。またこの本に載っている例だが、KKKの幹部が黒人のドナーから腎臓を提供してもらい、移植を受けたが、この人物は後に全国黒人地位向上協会に加盟したという。人種差別主義のKKKのことはご存知だろう。

明確に証拠立てるものはないが、どうもこのような事実はあるらしい。私も某MLで60才くらいの男性が、心臓移植を受けた後、ロックをガンガンやったり、若い女性に申し込んだりするようになった事例があると聞いた。

彼女の問いかけに対し、医師や看護婦は「気のせいよ。何も変わってないはずよ」という態度だ。