真アゲハ ~第74話 那取 鮮斗5~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



婦人会に参加している親子の代わりに、自分が人質になると言い出した花恋は、銀行内に連れていかれた
花恋なりの正義のつもりなのだろうが、その場にいた全員はもちろん心配だ

犬渕『…正面入口と裏口に突入部隊を付けろ』

やむを得ず、犬渕は許可を出す
正面入口と裏口に、警察の突入部隊が待機する
合図があれば、いつでも乗り込める

篠木『ハッ、バカな女だねぇ。自分が人質になるとは…何を考えているんだか』

銀行内に連れていかれた花恋は、人質達の前に座らされる
怯えてはいない

花恋『…何故、この様な事を?』

篠木『あ?』

花恋『何故強盗などと、酷い行動に出たんですか?』

花恋は篠木に質問するが、案の定篠木を怒らせてしまう

篠木『黙れ!あんたに分かるわけねぇだろ!私らは半グレだ!どんなことをしようが、あんたら上流階級の人間に、分かるハズねぇ!』

花恋『…えぇ、分かりません』

だが花恋は怯えず、屈せず、真っ直ぐな眼で話し出す

宗方『はぁ?』

花恋『だからこそ、聞かせてください。こんなことではなく、他に解決策があるかもしれません。私は、貴方達のためにも全力で向き合います』

花恋の言葉にその場にいた全員は理解不能だった
銀行を制圧し、人質を取って、逃走を考え、しかも自分を人質にした悪党だ
そんな悪党相手に、“全力で向き合います”という言葉を投げ掛ける花恋に、「こいつは何を言ってるんだ?」と言う顔で見る

だが、1人違う反応を見せる者がいた

?《しのちゃん、私に何でも言って!私が解決策を考えてあげる!しのちゃんのためなら、なんでも聞くよ!》

篠木(…!)

それは、篠木だった
しまっておいたハズの1つの記憶が、一瞬だけ蘇ったみたいだ
それも、自分を支えてくれた大切な存在の記憶だ

篠木(……なんでこんな記憶を思い出したんだ?だってもうあいつは…!)

宗方『おいアマ…馬鹿にしてんのか?』

花恋の話を聞いて、宗方は花恋に銃を向ける
額には、血管が浮き出ていた

宗方『舐めた態度取ってると、殺すぞ!』

花恋『構いません、撃つなら私を撃ってください!ですが他の方々は…!』

宗方『んだと!?』

篠木『止めな宗方!』

引き金を引きそうになる宗方を止めたのは、篠木だった
先程の威勢は全く無く、何故か戦意喪失している

宗方『…?』

篠木『なんでだろうね…、あんたの事を見てると、昔を思い出しちまったみたいだ…っ』

花恋『…?』

篠木はそう言うと、銃を捨てて、1人銀行の外へと出ていく
残った宗方達には理解が出来ず、篠木は銀行の外で両手を上げる

篠木『……自首するよ』

犬渕『何!?』

篠木があっさりと自首した事に警察は戸惑う
だが丸腰だと言うことが分かると、すぐに篠木に手錠がかけられる

宗方『…~~~~!ふざけんなよこのアマぁっ!』

篠木が逮捕されたことに頭に来た宗方は、花恋に向けて引き金を引こうとした
何故篠木が突然自首をし出したのかは分からないが、花恋と話をしたからこんなことになった
元々花恋は無関係だ、関係無い女が入ってこなければこんなことにならなかった
この女のせいだ、そう思い動こうとする
しかし

バリィンッ!

『キャーーーーッ!』

突然銀行のガラスが割れて、3発の弾丸が飛んできた
花恋の付き人、もとい護衛の那取家の人間だった
その弾丸は、宗方の心臓と肩、腹に当たった

宗方『…ゴフッ!』

犬渕『突入ーっ!』

犬渕の号令で、突入部隊が飛び込む
すぐに人質救出と、半グレ組織『犯娑亜』の他のメンバーは取り押さえられた
撃たれた宗方は、まだ息はあったものの、弾丸の打ち所が悪かった
致命傷だ

『ご無事で何よりです!花恋様!』
『お怪我は?』

花恋『大丈夫よ、ありがとう』

篠木『…』

警察に連行される篠木は、花恋の事を黙って見ていた
それに気付いた花恋は、篠木の元へ向かう

篠木『…なに?』

花恋『貴方に何があったか分からないけど……ありがとう』

篠木『…ハッ、あんたに言われたって、嬉しくなんてないからね…』

そう言い放ち、パトカーに乗り込む
半グレ組織『犯娑亜』は思わぬ形で崩壊した
そして宗方は、病院に搬送されるも、その後死亡が確定された









…ドクンッ…!