真アゲハ ~第74話 那取 鮮斗6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



銀行強盗襲撃事件から1週間が経った
花恋はあの事件を収めた人物として注目を浴び、政治家の良い印象を与えた

花恋自身は「人として当然の事をしたまで」だと主張しているが、夫の天雨勉議員、そして息子の克幸からはめちゃくちゃ心配されたらしい
護衛の那取家も、今後は花恋が危険な目に遭わないためにしっかりと守ることを決意した

本日は、高級ホテルの一部を借りて、政治家同士で開かれるちょっとしたパーティーが開かれた
天雨議員と花恋も参加だ

勉『全く…こんなものを開かなくてもいいのに』

花恋『まぁまぁ、良いじゃないの。パーティーなんて久し振りだわ』

勉『…ん?なんだあれは?』

ロビーを覗くと、そこには白装束姿や河童、化け猫などの妖怪のコスプレをした者達がいた
ハロウィンは既に1ヶ月前に終わっているハズなのに、奇妙な集団だと思った

花恋『まぁ、“妖怪愛好会”ですって。私達とは別の会場で行うみたいよ?面白そうね』

勉『何が面白い?幽霊なんてこの世にいるハズないのに…ましてやコスプレなんて』

花恋『そう?コスプレ面白そうだわ』

?『…』

クスクスと笑いながら会場へと向かう

無駄を嫌う天雨議員にとって、このパーティーに参加する事は無意味に思っていたが、花恋が楽しみにしていたため、仕方なく付いてきたのだ
那取家の者も、護衛のために参加している
鮮斗もその1人だ

先日の事件の件で、花恋の周りにはたくさんの人が話しかけてきた
天雨議員は人混みに紛れるのが苦手なので、離れた場所で花恋の様子を見ていた

『鮮斗、そっちの様子はどうだ?』

鮮斗『異常なし、大丈夫だよ』

『そう?ナンパするんじゃないわよ?』

鮮斗『しないってば!』

『…あ、奥様が会場を出るわ。鮮斗は先生を』

鮮斗『はい』

花恋がお手洗いのために会場の外へと出て、その後を那取家の者が追う
お手洗いの前に立ち、花恋が出てくるのを待つ
すると、那取家の者に電話が入る

『はい?…あ、皆萌?大丈夫だよ、まだ続きそうだし…』

花恋『あら…?』

電話をしている最中に花恋がトイレから出てきた
だが電話中と言うことだから、邪魔しちゃ悪いだろうと思い、花恋は何も言わずに会場へと戻る
那取家の者は電話中で、しかもお手洗いの出入り口に背を向けて電話をしていたため、花恋が出たことに気付いていない

花恋『えっと会場は…』

会場へ戻ろうとした時、左側に“妖怪愛好会”の立て札と黒いローブを纏った骸骨の置物が立っている扉があった
先程のコスプレ客の会場はここらしい

花恋(近くの部屋だったのね。骸骨なんて雰囲気出るわ~。って…あれ?さっきここを通った時、骸骨なんてあったかしら?)

そう思い振り返ったその時だった

…ドスッ!

花恋『…え…!?』

骸骨の置物が倒れがかってきたと思いきや、胸に激痛が走り出す
胸に、鋭いナイフが刺さり、そこから赤い液体が漏れだし、服に滲み出した

この骸骨の置物は、ただの骸骨の置物では無かった

宗方『…偽善者がでしゃばってんじゃねぇよ』

死亡したと思われた、宗方だった
宗方は1週間前に死亡したと思われたが、過去に『REBORN』を投与した事でネクロとなった
そして花恋を狙い、胸にナイフを向けて殺したのだ

『奥様!?』
『おい!誰か救急車を…!』
『いやダメだ!この血の量では…!』

勉『花恋!?花恋!』

鮮斗『なんで…!?一体誰が…!?』

気付いた時には、既に遅かった
脈は消え、生気も消えている
花恋は、死んでしまったのだ

また発見された時、宗方の姿は無かった
既に逃亡を計り、宗方は夜の闇へと消えた

『この度は…本当に申し訳ありませんでした!』

数日後、花恋の葬儀が行われた
花恋の死を殺されたと公表するのは世間体に悪いと思ったのか、“病死”と発表した
那取家は花恋を守れなかった事を悔やみ、心から謝罪した
勉と克幸はその事を責めたりはしなかったが、大切な家族を失った悲しみもあったせいか、怒る気にもなれなかった

皆萌『奥様…!』

鮮斗『一体誰が…!?絶対に…!絶対に捕まえてみせる…!那取家の名に懸けて…!』

この事件は那取家の歴史上最悪の失態となってしまったが、これを機に、もう2度と失態を犯さぬように心に決めた








しかしまさか、6年後にその犯人を眼にするなんて、この時思ってもいなかった