真アゲハ ~第74話 那取 鮮斗4~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



…6年前
愛知県名古屋市の大型銀行に、突然銀行強盗が入った

ジリリリリリリリッ!

『キャアァーーーーッ!』

?『動くな!動いたら蜂の巣にしてやるよっ!』

大型銀行の入り口から堂々と入り、ショットガンを取り出しては発砲する金髪の女がいた
その女は後ろにマスクをした仲間を連れて、銀行へと踏み入る

その連中は、半グレだった

ー半グレ『犯娑亜』女リーダー
 パンサー篠木(当時28)ー

篠木『ここにいる全員は人質だ!全員スマホを没収しろ!言っとくが通報したらその場で殺すぞ!』

『は、はい!』
『オラオラァッ!1ヶ所に集まれ!』
『や、やめてください…!ヒィッ!』
『うわーんっ!ママ怖いよぉ!』

宗方『チッ、うるせぇガキだな…』

ー宗方 久吾(当時26)ー

その半グレ組織には、宗方の姿もあった
まだ自身の半グレ組織『愚炉手宿(グロテスク)』を立ち上げる前の様だ
それもまだ、ネクロにはなっていない

あっという間に『犯娑亜』が銀行を制圧し、金も全部回収する
後は逃げるだけだ
だが、その時既に警察が周辺を取り囲んでいた

犬渕『貴様らは包囲されている!大人しく出てくるんだ!』

宗方『チッ、サツが…!』

篠木『待て宗方、私がやるよ』

愛知県警を見てニヤリと笑う篠木
篠木は人質の中の子供の襟首を掴み、外へと出る
母親らしき女性が「止めて!」とすがり付くが、蹴り飛ばされてしまう
当然子供は泣き出し、愛知県警もざわつく

犬渕『な、何をする気だ!?』

篠木『すぐに逃走用の車を用意しろ!でなければ、この子供の頭が吹っ飛ぶよ?』

子供を盾にされ、身動きが取れない
歯を食い縛り、中に篠木と子供が入るのをじっと見ているしか出来ない

?『…今のって…もしかして…!』

その時、野次馬の中に1人の女性がいた
正確には1人では無いが、付き人らしき人物が2人もいる

?『間違いないわ…確か中村さん所の…!』

『奥様行けません!』
『そうですよ、離れていてください!』

付き人らしき2人が女性を止める
だが女性は諦めず、愛知県警に話しかける

犬渕『え?あ、貴方は…』

花恋『天雨勉の妻の、天雨花恋です』

ー天雨勉の妻 天雨克幸の母親
 天雨 花恋(当時34)ー

天雨 花恋
彼女は天雨議員の妻で、克幸の母親だった
無駄を嫌い、厳しいことで有名な天雨議員と同じ元警察官ではあったが、結婚を機に引退し、今では天雨議員のサポートをするために同じく政治家へと転職した

最近は婦人会会長として取り纏めもしていた
本日も、婦人会を行うつもりだったが、銀行強盗の人質として捕まっていた子供が、婦人会に参加している人物の子供だったらしく、子供が1人で銀行にいるハズ無い、もしかしたら母親も人質として捕まっているかもしれない、そう読んだ彼女は驚くべき行動に出た

篠木『早く逃走用の車を用意しやがれ!』

宗方『篠木さん、妙な女が…』

篠木『あ?』

宗方が外の様子をチラッと見て、花恋を発見した
篠木も花恋を確認すると、子供を盾に外に出る

篠木『なんだぁてめぇは』

花恋『私は、天雨勉議員の妻の天雨花恋と申します』

篠木『それがどうした?議員の奥さんなんてお呼びじゃねぇんだよ!』

花恋『人質の皆さんの、安全確認をしたいのです。どうか…中に入れさせていただけないでしょうか?』

それは、花恋自身が人質の安否を確認すると言う物だ
もちろん、普通議員の妻がそんなことを、許されるハズがない

『奥様お止めください!』
『危険です!すぐに逃げてください!』

篠木『うるせぇよ!』

花恋『止めてください!子供が怯えます!』

篠木『あぁ!?良いからとっとと車用意しろって言ってんだよ!』

篠木は花恋に銃を向ける
話して何とかしようと考えていたが、せめて子供と母親だけでも解放させたい

花恋『…ならば、私が人質になります』

犬渕『え!?』

花恋の提案に、その場にいた全員は驚く
篠木も「はぁ?」の顔をするが、花恋の眼は本気だ

花恋『私が人質の方が、色々融通が効きます。ですからその子を…その子とお母様を一緒に解放させてください。私はどうなっても構いません!』

篠木『チッ…面倒だな。これで油断してると、逆にこっちがやられる、いいよ入りな!あんたの約束は守ってやるよ!その代わり警察も、こっちの約束を守れよ!』

そう言い篠木は花恋を連れて、銀行へと入ってしまった

『奥様…!』

犬渕『なんて、事だ…!』