真アゲハ ~第73話 天雨 克幸9~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



輝人が考えた作戦はこうだ
輝人が黒羽のフリをし、円を外まで誘き寄せる
その間に日奈子達と炎達は中に乗り込み、人質の救出を行う
だが円以外にもネクロはいるので、そのネクロを誘き出すために、ネクロハンターが囮になる
ネクロハンターがネクロを押さえ込み、そして日奈子達が人質を救出する作戦だ

輝人(…前に取っておいて、正解だったな)

自分の右手首に装着している腕時計には、ネクロの灰が入ったカプセルが埋め込まれている
これは以前に取った“声(voice)”だ
※第6話参照

喉仏を触ることで、1度聞いた他人の声をコピーする事が出来て、これで輝人は黒羽の声を真似する事が出来た

腕時計を装着して、喉仏に触れて黒羽の声を出す

見た目は念のため変装しているが、遠くからなら円も見分けがつかない


輝人(黒羽)「私が…黒羽正臣です…!生徒達を解放してください…!」


犬渕(上手く行くと良いが…)

円「…」

体育館から円が現れた
ゆにも一緒にいる

ゆに「うっ…」

円「黒羽先生?どこ?」

輝人(黒羽)「…ここです」

そう言って、輝人は前に出る
距離があるせいか、輝人だと気付いていない

円「やっと来たんだ、じゃあ…こっちに来いよ?でないと、どうなるか分からないよなぁ?」

ゆに「ひっ…!」

輝人(黒羽)「…その前に、どうして私を指名したんですか?」

輝人が質問をし出したのは、変装がバレないためと時間を稼ぐためだ
円の性格からして、恐らく黒羽を中へと入れさせる気だ
そう来た場合、少しでも外にいる時間を稼ぐために、質問をして引き留めておく

輝人(…あいつら、もう入ったかなぁ?)





「…円さん行ったみたいだな」
「黒羽って野郎がどんなか見てみたかったが…」

一方、千鳥工業高等学校の校舎内
見張りをしていた“烈怒羅夢”のメンバーにも、声が聞こえた

「ったく、誰も入ってこれないのに校舎内を見張るなんてな」
「しかし電気を点けているから良いけど、この学校ってオバケ出るのかなぁ?」
「おいおい、信じてるのかよオバケとか。宗方さんが聞いたら怯えそうだなw」

と、言ったその時だった

…ギイィィ…!バタンッ!

「ん?なんだぁ?」

どこからか扉が開く音がした
だがここは学校だ、全て引戸で、扉の様な音はしない

「い、一体どこから音が…?」
「おい、ビビってんじゃねぇよ!きっと風だ!風が…ん!?」

部下の1人が振り返ったその時、何故か掃除用のバケツが宙を浮いていることに気が付いた
そのバケツは、もう1人の部下の後頭部に強く当たる

「グハッ!」
「な、なんだ!?まさかポルターガイスト…」

?「おやすみなさい」

ドスッ!

「ぐっ…!?」

後頭部に強い衝撃が走り、目の前が真っ暗になる
部下の2人を眠らせる事に成功した

日奈子「…ふぅ、バレたかと思った」

彩耶華「日奈子さん、扉の音は静かに閉めてくださる?」

何もない廊下から、日奈子と彩耶華が突然姿を現した
2人とも、“透明化(invisible)”のカプセルで透明になっていた
部下達を近くの教室に閉じ込めると、どこからかまた扉の音がした

ギイィィ…!

鮮斗「2人とも、大丈夫?」

始「よし、中に入り込めたぁ…!」

突然空間に大きな長方形の扉の様なものが現れたと思ったが、そこから他のアゲハ族とネクロハンターが入ってきた
これも、ネクロのアビリティだ

鮮斗「“扉(door)”は、空間に扉を作ることが出来て、あらゆるところに繋がっている。ただし、目的地が明確じゃないと、そこには行けない」

航平「こんなどこでもドアみたいな物もあるんだぁ…」

鮮斗「ネクロだったら自由に行けるかもね。外国に行けるとか試してみたけど、日本から出られないみたいだった」

カンナ「何とか中に潜入出来ましたね」

日奈子「茜さんには何かあった時のために残って貰ったけど…」

炎「おい、とにかく急ぐぞ」

そう言うと炎は体育館の方へと向かう
だがその時、誰かが階段から現れた

丸原「ん?うおおぉっ!」

炎「!」

それは丸原だった
丸原と炎がばったり会うと、炎は容赦なく中国剣を向ける

炎「貴様、まさか“烈怒羅夢”か?」

丸原「ヒィッ…!」

日奈子「あ!ま、丸原さん!?」

丸原の姿を眼に捉えた日奈子は声をあげる

彩耶華「ご存知ですの?」

日奈子「元『TOY Doll』の乙葉来海の親衛隊の人なの、なんでここに…?まさか…!」

丸原「ち、違う!俺はもう“烈怒羅夢”を辞めるんだ!もう、今の円さんに付いて行けねぇよ!」

大きな巨体を、ダンゴムシの様に丸くし、頭を押さえて怯えている
見たところ襲っては来ない

丸原「もう俺は自首する!だから殺さないでくれぇ…!」

日奈子「あ!危ない!」

ズガンッ!

炎「日奈子!」

突然弾丸が飛んできた
日奈子は丸原に飛びかかったため、何とか丸原を救出した

丸原「な、なん…!?」

弾丸が飛んできた方を見る
そこにいたのは、

宗方「円が外に行ってる間に連れ戻そうとは思ったが…やっぱりお前は向いてねぇな」

銃を向けた、宗方だった