丸原「……ハァ…」
体育館から離れた丸原は、廊下に少し進むと、しゃがんでしまい、ため息をつく
先程円には「黒羽が来たか確認して来ますね」と言って出てきたが、確認はしていない
宗方「丸原」
丸原「ひっ…!」
そこに宗方も付いてきた
顔を隠している赤いバンダナを取り外していて、頭蓋骨が丸見えだ
宗方「ひっ…!ってなんだよ、ひっ…!って」
丸原「あ、あぁ…すいません宗方さん…」
宗方「まぁこんな顔じゃ慣れねぇよな。それより…お前大丈夫か?顔色悪いぞ?」
丸原の顔は青くなっていた
疲れが出たのだろう、宗方は心配した
丸原「ハハ…円さんの事が、心配になっちゃいまして…」
宗方「あぁ…まぁ、滅茶苦茶ピリピリしてんな」
丸原「…円さん、昔はあんなじゃ無かったんだけどなぁ…」
ため息と吐いたと同時に、丸原は昔の円を思い出す
初めて出会った時、円は青年で、自分はまだ学生の身だったが、ある記者を殺すために、結託して、復讐を果たすことに成功した
それからは“烈怒羅夢”が生まれ、1度は壊滅するも再び復活して、今に至る…
だが、丸原は今の“烈怒羅夢”と円に怯えている
丸原「最初は円さんの事を、怖いけどすごく良い人だなって思っていたんです。俺の母ちゃんを自殺に追い込んだ奴をやっつけてスカッとしたから…。怖いところはあるけど、俺らの事を大事にしているところもあるし、仲間もこーして増えて行って、とても楽しく思えたんですよね。…来海ちゃんが、殺されちゃうまでは…」
宗方「…」
丸原「来海ちゃんが死んじゃった事はすごくショックだったけど、それより円さんの作戦にすごく驚いた。いつもみたいに許せない相手を捕まえて、拷問すりゃ良いだけなのに…今回は無関係な生徒達を人質にするなんて…!恐い以外なんにもない…!」
ガタガタと大きな巨体が震える
それほど円を恐いと思ったことは無かったみたいだ
丸原「そりゃ確かに暴力とか振るうところはあったけどさぁ…!」
宗方「丸原、お前…」
ギョロッと剥き出しの目玉の目線を、丸原に向ける
その表情は、怒っているみたいだ
丸原「ひっ…!」
宗方「甘ったれたこと言ってんじゃねぇぞ?半グレってそー言うもんだ。目的を果たすためならどんな手段も行う、そして奪うんだ。無関係とか歳とか関係ねぇよ」
丸原「ヒィッ!す、すいません…!」
宗方「…そんなに恐いなら、脚を洗うんだな。お前半グレに向いてねぇよ」
そう言い宗方は体育館へと戻った
後ろ姿を見た丸原は、先程の目付きを思い出し、足がすくんで動けなかった
丸原「…向いてない、か…。確かにな…」
宗方(…)
丸原の方を振り返らず、歩みを止めない
先程の丸原の話を聞いて、心にイライラが募っていた
宗方(何が無関係の奴を巻き込むなんて、だよ。そんなの偽善者が考えることだ。そうだ、無関係の人間なら無関係らしく振る舞えよ。助けるとか、余計なことやらずに大人しくしてりゃ良いんだよ…!弱い人間の癖に、精神が強ければなんでも出来るとか思い込みやがって…!そう言う奴、本当に大っ嫌いだ!“あん時の女”みたいにな!)
犬渕『えー、犯人に継ぐ!』
宗方「ん?」
犬渕の声が外から聞こえた
よく耳を凝らす
すると
?『…生徒達は大丈夫ですか?』
宗方「…!」
犬渕警部の声ではない声が聞こえた
生徒達を心配する教師の声、黒羽正臣からだ
宗方「ハッ、とうとうお出ましか」
円「…待ってたぜ、“先生”」
体育館にも声が聞こえ、ニヤッと微笑む
黒羽と会うために、円はその前に人質を連れていく事にした
もちろんゆにだ、髪を引っ張る
ゆに「あっ…!」
真緒「ゆにさん…!」
克幸「待て!俺を連れていけ!」
ゆにを助けるため、克幸は声をかける
だが円にすぐ否定された
円「お前はここだよ。確かに人質としては価値はあるけど、お呼びじゃないんでね。あ、お前ら動くなよ?」
そう捨て台詞を決め、ゆにを連れていく
生徒達はまだ脱出できない状態だ
円「さぁて、ゆっくり顔を拝みますかねぇ…!」
しかし円は知らない
今の声が、黒羽正臣ではない人物の声であることを…!
輝人(黒羽)『私が…黒羽正臣です…!』