真アゲハ ~第68話 森久保 ユウナ3~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



日奈子「へぇ~、お姉さんが来たんですね!」

翌日の土曜日、日奈子は栗栖からカンナが休みだと言うことを聞いた

航平「ユウナさんか、久し振りだなぁ。前会った時は本当にカンナちゃんのお姉さんとは思えない程、ふんわりしていたもんなぁ」

栗栖「ゴホッ、ゴホッ…ゆ、ユウナさんは表にはもう立てないけど、サポート役として動いて貰ってるから。分からない事があったら、色々聞いてみると良いよ。ゴホッ…」

栗栖の咳が未だに続いていた
咳が止まらないのか、マスクをして誰にも移さないようにする

輝人「栗栖?お前医者に行ったら?」

栗栖「…一応俺も医者だけどね」

輝人「そーじゃなくて、いくら医者でも薬は作れないだろ?市販の薬飲んでも治らないなら、それよりも良いやつ飲んだ方が良い。そうだろ?」

栗栖「うん…そうだな。すまない、ちょっと行ってくるよ。ゴホッ、ゴホッ…」

栗栖は財布と鍵を持って、探偵事務所を出る
その後ろ姿を見た日奈子達は、心配する

日奈子「…栗栖さん、大丈夫かな?」

航平「お医者さんは、人々の治療をする仕事だけど…やっぱり治療している本人が病気にならない訳無いよな」

茜「まだ病気だと決まった訳ではありませんよ」

茜が全員にコーヒーを提供する
日奈子にだけは紅茶だ

輝人「そんで?昨日お前らが追いかけた奴らは、結局逃げたんだって?」

昨日の夜、たまたま宝石店強盗を見かけた日奈子達
追いかけて捕まえようとしていたが、逃げられてしまった

日奈子「逃げられ…ました」

輝人「ったく何やってんだお前ら!それでも探偵事務所のアルバイトかよ!」

航平「いやそれが…奴らの罠にハマっちゃって…」

輝人「罠ぁ?」

恐らく日奈子達の言い訳だと思ったが、一応聞いてみることにする

日奈子「まずカンナさんが落とし穴にハマって、私と航平さんで追いかけたんだけど…」

航平「その後でどこからか網が飛んできて、俺にかかるわ…日奈子ちゃんが追いかけたらさらにどこからか、たらいが落ちてきて…」

輝人「たらいィ?ギャグじゃあるめぇし」

茜「私もその現場を見たのですが、不思議なのはそのたらいが何もない日奈子様の頭上で突然出現したのですよ」

日奈子「え?そうだったの?」

茜の証言に耳を傾ける
だが輝人は未だに信じていない

輝人「ふーん、まぁ今度から宝石店強盗がまた現れたら俺を呼べよ?お前ら簡単に逃げられてんだからな」

日奈子「むー…(-""-;」





一方、名古屋港水族館では

オクたん『やぁ!ボク、オクたん!』

ナルミ「ただいま、オクたん」

ネクロ暗殺集団『アクアリウム』の“館長”ことジョー・ナルミは館内へと入っていく
手には何やら、イルカを中心とした海の生き物達の可愛い絵が描かれた紙袋を持っていた
秘書のハルナ・ジョーンズが迎える

ハルナ「お帰りなさいませ、長旅ご苦労様でした」

ナルミ「少しの間、離れていてごめんね。丁度向こうの水族館に呼ばれてしまって」

オクたん『海の生き物については、ボクに聞いてネ!』

ナルミ「…“オクトパス”、今は他の者もいないから大丈夫だよ」

コソッとナルミが小声で話すと、オクたんの球体の様な画面が変わった
アップロードが出来たみたいだ
“オクトパス”に変わる

オクトパス『…全世界の水族館に顔を出すとは、無茶にも程がある。今はこの名古屋に拠点を構えていると言うのに』

ナルミ「無茶?全世界の海の生き物をこの目で見られるなんて、幸せじゃないか。それぞれの水族館は個性があるし、それぞれによって人気の生き物が違う。必ず同じと言うことはない」

ハルナ「今回向かったのは確か…」

ナルミ「雨宗市水族館だ。以前は大変な事件が起こったと耳にしていて、心配で向かったんだが、何とも無くて良かった。ゴマフアザラシのクスリちゃんも可愛くてね、芸を覚えたそうなんだ。あ、これはお土産。クスリちゃんの顔が描かれたクリーム大福と、ヒトデ形のショコラクッキー。あとオウムガイをイメージしたミニロールケーキに…」

ハルナ「ちなみにその雨宗市水族館ですが、裏情報だとまた襲撃があったとか。今度は爆発物が持ち込まれたそうです」

ナルミ「おや、それは大変だ。また行かなくてはいけないな」

オクトパス『ゴマフアザラシのクスリなら無事だ。爆発も未遂で終わってる』

ナルミ「なら良かった。葵くんも大変だね、館長務めながらも俳優業や…」

ハルナ「それより館長、館長がお戻りになる前に、“シーホース”から連絡がありました」

ナルミ「!…トールから?」

“シーホース(タツノオトシゴ)”ことトール・ハンセンから連絡が来た事に耳を傾ける

ナルミ「…なんだって?」

ハルナ「…“マンタ”を、無事に見つけてこちらに向かってるそうです」

ナルミ「!そっか、ようやく見つかったか」

オクトパス『全く、あいつの方向音痴には理解出来ない。連絡は出来たものの、居場所が高知県とはな』

ハルナ「以前連絡した時は沖縄にまで行ってましたね」

ナルミ「はは…何とか連れ戻せるみたいで良かった。しばらく彼は、トールと一緒に行動して貰うことにするよ」

オクトパス『明らかにトールの仕事量が増えたな…(・・;』