真アゲハ ~第68話 森久保 ユウナ2~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



斑目探偵事務所に思わぬ客がいた
それは同じアゲハ族でカンナの実姉・ユウナだった

2人は斑目探偵事務所から出て、カンナが住むアパートへと帰る

カンナ「もう姉さんったら!お母さんから鍵貰っていたんでしょ?先にアパート帰っててって言ったのに!」

ユウナ「だって、カンちゃんに会いたかったんだも~ん」

カンナ「明日の土日は特別に休み貰ったし、ゆっくり過ごせるから今会わなくても…」

ユウナ「いいじゃんいいじゃん、誰でも早く会いたいって気持ちはたくさんあるんだから~(*>∀<*)」

カンナ「もうっ…!」

頬を膨らませるカンナだが、どこか嬉しそうな感じがする
それもそうだ
久し振りに姉が遊びに、しかも今回は泊まりで来てくれたんだ
前回はあまり観光が出来なかったため、今回はゆっくりするつもりだ

ユウナ「さぁて、明日からどこに行こうかな~?前回はあまり出かけることも出来なかったからなぁ~」

カンナ「うん、そうだね。姉さんが前に行きたがっていた水族館とかいいよね」

カンナがコップに飲み物を入れ、ユウナに差し出す
その時、ユウナはあることに気付いた

ユウナ「…ん?カンちゃん、ちょっと良い?」

カンナ「え?」

ユウナの声にカンナは反応し、振り向く
すると、ユウナの両手がカンナの頬を包むように掴まれた

カンナ「ふぇ?むぁにしゅるのよ~?(え?何するのよ~?)」

ユウナ「…カンナ、仕事で何かあった?」

カンナ「ふぇ?」

呼び方が“カンナ”に変わった
いつもちゃん付けで呼ぶのに、真剣な顔をして名前を呼ぶと言うことは、珍しくユウナが何か真面目な話をする時だ

ユウナ「カンナの顔見て分かるよ?カンナ、仕事で何かあったでしょ?」

カンナ「…ふぁふぁひて(はなして)」

そう言うとカンナはユウナの手を払う
ユウナは普段天然だが、こう言うのは昔から勘が良い
流石姉と言うところだ、隠すことなんて出来ない

カンナ「…姉さんはさ、同期が早く出世したら、素直に喜べる?」

ユウナ「?…どうしたの?」

カンナ「本当に素直に喜べる?どこかしら…悔しいって思えない?」

カンナは今の自分の状況をユウナに相談した
航平も日奈子も、同じタイミングでアゲハ族に入った良き仲間だ
だが何故か2人が先にエスポワールの効果を使えるようになった
航平は他のアルバイトも行っているし、休日は合コンとかで遊んでばかりで、訓練であまり見かけない
一方の日奈子も、自分と同じ学生で、どちらかと言うと一緒に住んでいる茜の方が守っている感じで、あまり戦闘なんて見たことがない

自分の方が真面目にアルバイトも取り組んでいるし、火傷や胸を刺されるなどの重傷を負った経験があるし、実績的にはあの2人より強いハズだ
でも実際、エスポワールの進化がないのは自分だけだ

悔しい、羨ましい、妬ましいと思う
だが、そんな感情に囚われてしまってはいけない

カンナ「…このままじゃ、私同期だけじゃなくて、さらに自分の事を嫌いになりそうなの。自分が強いのにって思っちゃいけない。そんなの…」

ユウナ「うんうん、そうだね」

カンナの相談を頷きながら聞く
その内カンナの眼から涙が零れ、余程辛かった気持ちが伝わってくる

カンナ「…グスッ…」

ユウナ「…大丈夫?」

カンナ「…ううん、全然…」

泣いた顔を見せたくないのか、カンナはティッシュペーパーで涙と鼻水を拭う

カンナ「…ごめん、姉さん…」

ユウナ「ううん、久し振りにカンちゃんの悩みを聞けて良かった」

泣いているカンナに対し、ユウナはニコッと微笑んで返す

ユウナ「カンちゃんは、エスポワールの効果を使えるようになりたいんだね」

カンナ「うん…でもどうしたら効果が使えるのか分からなくて…」

ユウナ「そっかそっか」

カンナ「もうなんか色々、頑張ってるのが疲れちゃってさ…」

カンナの口から大きなため息が出る
先程から返事をしていただけのユウナは、少し考えると、口を開く

ユウナ「まず…最初の質問に答えるね。私は同期が最初に出世したら、素直に喜べるよ」

カンナ「だよね…」

ユウナ「でもその分だけ、私の励みになる」

カンナ「励み?」

ユウナ「うん、私も頑張らないとなーって!すごく励みになるし、その同期を応援したくなるよ!その同期が出世したのは、私の知らないところで頑張っている証明になってるからね!」

カンナ「頑張っている証明?」

ユウナ「きっと私には出来ない頑張り!多分私は、同じことは出来ない!」

カンナ「ず、随分ハッキリと…」

ユウナ「だって同期と私は違うでしょ?」

カンナ「…!」

ユウナ「だから私は私なりに頑張るの!その結果が報われなくても、諦めずに頑張るんだ!」

カンナ「……すごいな、姉さんは」

そんな考え、カンナは全然思い付かなかった
ユウナの考えを聞いて、自分はまだ考え方が子供だなと思った
するとユウナは大声を出す

ユウナ「…よし!明日行く場所決まった!カンちゃんのために、特別講習を行うぞ~!」

カンナ「え?えええ~~~っ!?」