真アゲハ ~第65話 落合 蛍2~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



カンナ「……うっ……」

数分後、カンナの目が覚めた
目を開けると、そこは簡易ベッドや折り畳みテーブルが置かれたこじんまりとした部屋だった
何故ここにいるのか、思い出す

カンナ(……そうでした、確か目の前に強い光が…。その直後に後頭部に強い衝撃を喰らって…)

千晴『困るんですけど?俺の事、調査とか』

カンナ「…!」

千晴を追っていた時に、千晴に返り討ちにされたと思い出し、状況を理解する
だが既に遅い、自分の両手が結束バンドで拘束されている事に気付く
さらにその隣には、自分と同じく拘束された航平が寝ていた

カンナ「航平さん…!航平さん…!」

航平「ん…あ、あれ?カンナちゃん!?」

気付いた航平も、自分の状態に気付く
すると部屋の奥のドアから、千晴がヒョコッと顔を出した

千晴「おっ、起きた起きた。起きなかったらどーしようかと思ってたんだよね」

航平「あーっ!」

千晴の顔を見て声を張り上げる航平
その声に怯みもせず、千晴は両手に湯気が出ているどんぶりを持って、折り畳みテーブルのところへ向かう
それは、ラーメンだった

千晴「でもまさか、森久保先輩が俺の事を調べていただなんて驚きましたよ」

カンナ「…その先輩にこんな仕打ち、許されると思うんですか?」

千晴「すみません。一旦熱々のラーメンいただきますね。伸びちゃうとヤなんで」

航平(何なんだこいつは…)

カンナとの話を切り、ラーメンを食べることを優先する千晴
ラーメンの麺をスープから取り出し、ズゾゾゾ~~…!と勢いよく啜る
熱いのが伝わってくるかの様に、ハフハフ…!と冷ましながら食べ続ける

航平とカンナを捕まえて監禁していると言うのに、全くと言って良い程緊張感が無い

航平「わぁあ~~!放せぇ!解放しろぉ!」

カンナ「航平さん!」

航平は大声で抗議する
それを聞いた千晴は、ラーメンを食べるのを止めて、立ち上がる

航平「な、なんだよ…!」

千晴「一応ここアパートなんですよね?隣もいるんですよ?騒ぐの本当に止めてもらえません?それでも止めてくれないなら…」

航平「な、何するんだ!?」

千晴「ラーメン作ってきてあげますね」

航平「だぁっ!?((((;゜Д゜)))」

千晴の意外な答えに航平は転ぶ
その通り千晴は、台所へ向かい、ラーメンを作り出す

航平「な、なんでラーメン…?」

千晴「俺だけ食うのは申し訳ないなと」

カンナ「…何もしないんですか?」

千晴「俺は人を殺したり拷問したりしないですよ?むしろ専門外、俺は情報を集めるのが仕事ですから」

カンナ「貴方…何者なんですか?」

千晴「ネクロ暗殺集団“アクアリウム”の情報部隊のサーディンのメンバーです。炎さんと彩耶華がお世話になってますね」

航平「え!?や、やっぱり“アクアリウム”…!」

千晴「こっちの領域では、そう名乗ってます」

カンナ「え……?」

そう話しているうちにラーメンが出来た
自分が食べている大きなどんぶりより、少し小さめのどんぶりを2つ用意する

千晴「1人分しかないので、分けて作ってあげますね」

カンナ「もしかして、もう1つって私の分ですか?」

千晴「はい」

小さなどんぶりラーメン2人前が出来ると、わりばしを持って折り畳みテーブルへと持っていく
ラーメンを置くと、近くにあったハサミを使って、航平とカンナの手を拘束している結束バンドを切った

航平「あ、ありがとう…?」

千晴「食べづらいでしょ?」

カンナ「こっちの領域ではって…どう言うことですか?」

千晴「あの…ツバサさんから話何も聞いてません?」

航平「え?ツバサさんって…」

千晴「宵町ツバサさん」

2人「「え!?」」

予想もしない人物の名前に2人は驚く
むしろ平気な顔してツバサの名前を言った千晴に驚いている

カンナ「聞いてませんって……まさか…!」

千晴「はい、アゲハ族です」

2人「「ええぇーーーーーっ!?」」

さらに2人は驚く
なんと、千晴も2人と同じアゲハ族だったのだ

ーアゲハ族 “シジミ部” 情報部隊
 鏑木 千晴(18)ー

千晴「嘘だと思うならツバサさんに聞いてみてください。まぁ驚かれるのも無理ないか、斑目探偵事務所の人も知らないと思うし」

航平「君は…俺らの事知ってたの?」

千晴「一応情報部隊に配属されてるんで。あ、ちなみに2年目で、貴方達よりは先輩です」

カンナ「ですよね…ん?でも“アクアリウム”の情報部隊もやってるってさっき……」

千晴「あぁ、2重スパイですw」

あっさりとすごいことを次々に白状する千晴
千晴は本当はアゲハ族であるが、任務のため“アクアリウム”の情報部隊“サーディン”として潜入している

千晴「知っての通り、“アクアリウム”はネクロを容赦なく殺す組織です。いずれはあの“館長”が暴走するかも知れないから見張ってるために潜入しているんですよ」

カンナ「そう言うことだったんですね…」

千晴「手荒な真似してすみません。でもラッキーですね。見つかったのが俺じゃ無かったら、貴方達殺されてましたよ?」

航平「さらりと怖いこと言わないで!Σ((((;゜Д゜)))」

千晴「当たり前ですよ。只でさえ貴方達は斑目さんの味方してる訳ですから。もうマークされているんですよ?」

カンナ「そんな事まで…」

千晴「ラーメン食べたら送ってあげます。これ以上ここら辺にいると俺も危ないんで。それにこの後も少し仕事あるし」

航平「仕事って?」

航平は千晴が作ってくれたラーメンを啜りながら聞く

千晴「実はこれは、まだ“アクアリウム”に出回ってないんですが…うちの学校(風校)で、奇妙な動物が現れているって事がありまして……」