数時間後
ハロウィンナイトは予定時間より早く終わり、街には1人もいなくなった
先程まで騒がしかったのが嘘みたいだ
場所が変わって、ここはネクロ研究センター
輝人達はここにやってきた
と言うのも、栗栖の希望だ
栗栖『祐希奈の…いえ、グレイシアのその傷を、治したいんです。これは元婚約者としてではなく、医者として治したいんです』
輝人「…とか何とか言っていたが、やっぱ栗栖は甘いんだから」
茉莉花「いくら腕を負傷して抵抗できないとしても、自分を襲ったネクロを助けるなんて…」
日奈子「でも分かる気がするなぁ。栗栖さんってやっぱり優しいよ」
そうこうしている内に、ウィーン…と研究室の扉が開いた
そこから所長の加治木と栗栖、そして烏丸と両腕に包帯を巻いたグレイシアが現れる
良く見ると、グレイシアの服装は別の物に着替えられ、ネクロ専用の手錠をかけられている
航平「栗栖さん!大丈夫…ですか?」
瑠美「何とか治療は終わったよ。栗栖さんの腕、流石ですね」
栗栖「いえ、俺は医者として当たり前のことをしただけです」
グレイシア「ハッ…医者として当たり前ね…。私の命も助けてくれなかったくせに良く言うわ」
栗栖の台詞を聞いてグレイシアは鼻で笑う
だが栗栖は、静かに返す
栗栖「…俺の知ってる祐希奈は、そうやって俺を責めたり、後ろ向きな発言をしたりしなかった」
グレイシア「は?」
栗栖「今日ようやく、決別することが出来る。烏丸さん、後はお願いします」
亜季「…分かった、行くぞ」
グレイシア「っ…!どこに連れていく気なのよ!」
亜季「ネクロ専用の牢獄だ。安心しろ、お前が過ごしやすくなるように細工はしてある。ネクロと言えど、すぐに死刑にはしない。生きて罪を償ってもらうぞ」
グレイシア「くっ…!これで終わった訳じゃないからね…!」
ギロッ!と烏丸を睨むが、烏丸は無視をする
栗栖はグレイシアに背を向け、黙ったまま輝人達の元へ向かう
始「栗栖さ…」
カンナ「始くん、ダメですよ」
始「え?」
ゆに「今は…そっとしておこう」
茜「ですね」
輝人「…フゥ…」
栗栖「…」
栗栖は静かに外に出る
1人になったことを確認すると、その場に倒れるように蹲った
栗栖「っ…!ううっ…!」
栗栖は、泣きだした
グレイシアとの決別を言い渡した時、本当は辛かった
何も言わずに外に出たのは、自分の感情を抑えていたからだ
栗栖(これで良いんだ…!これで…!)
決別をしたのは、グレイシアのため、そして自分のためだった
いつまでも感情に囚われてしまっていては、どちらも助からないと思ったのだろう
だからこその決別、今度こそ会った時は、敵同士だ
輝人「…大人だから泣かないってのはないよな。人間なんだ。泣くなんて、何もおかしい事じゃねぇよ」
栗栖にそう良うかのように、輝人はそう呟いた
こうして、ハロウィンナイトは終わった
翌日からついに11月だ
輝人「栗栖は…まだ起きてこねぇか」
朝になっても栗栖は起きてこない
珍しく疲れたのだろうか、眠っているみたいだ
輝人「…朝早くからの依頼もねぇし、今日は少し遅めに開けるか」
そう呟きながら、コーヒーを入れる
すると、プコンッ♪と音が聞こえた
アゲハ族専用のiPadからだ
画面には、メッセージが載っていた
輝人「あ?また依頼か?ったく、アゲハ族のジジイ共もしつこいな…」
メッセージを消そうとしたが、間違えて開くボタンを押してしまった
画面に大きくメール文が映る
輝人「あ、やべっ…!あけちった…ん?」
すぐ閉じようとしたが、メール文を見て気になったのか、全部を読んだ
その内容は、“闇の商人”に関する内容だった
輝人(…“とある組織に潜入中のアゲハ族からの新たな情報で、『闇の商人』の名前が分かった。名前はクロノス、ネクロの灰やネクロの武器を売り捌く恐ろしい商人だ。”…か)
文章を読んで、内容を理解する
だが次の文を読むと、輝人は思わずコーヒーを噴き出しそうになった
ークロノスの正体は未だに不明だが、特徴は掴んだ。クイズを出題するようなふざけたセリフに、顔に目立つような痣がある人物だ。ー
輝人「…は?」
その文章を見て、輝人は止まった
何故なら、その特徴が一致する人物を最近2人も見たからだ
日奈子が通う花巻女子学園の英語教師・黒羽
愛知県警“屍人対策課”の警視・烏丸
この2人だ
輝人「…ちょっと待てよ?それじゃあ…“闇の商人”は、近くにいるって言うのか?」
新たなる敵の存在の情報を手に入れた輝人
この時、後にあんな大きな事件を引き起こすだなんて、思ってもいなかったのだ
ーグレイシアー
完
○NEXT●
→「あばよ、輝人」と徳川から別れの言葉を聞いた輝人。実は『CASINO Shachihoko』を閉めると言う。と言うのも、ネクロハンターに気付かれる前に逃げ出すと言う魂胆だ。
その閉店間際に、ネクロハンターのサム達が現れる。徳川は逃げ出すことが出来るのか…!?