新アゲハ ~第62話 ビショップ・ロー・アザニエル13~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



あおい「…着いたっ!」

竜也はあおいのバイクの後ろに乗って、無事に市民文化センターに到着した
あと5分で約束の時間だ

あおい「てか…ここで降ろしていいのか?」

竜也「あぁ、後は走っていくよ。ありがとうな、あおい」

あおい「…やっぱ俺も…」

竜也「ダメだ、あいつは俺を希望している。大丈夫だ、俺がリナを救ってくるから…!」

あおい「竜也…」

竜也「……待っててくれ」

そう言って竜也は市民文化センターまで走る
『休館日』と書いてあるはずなのに、入り口は開いている
躊躇いもなく、竜也は中に入る

竜也(どこにリナが…?)

中に入ると、シーン…としていた
この市民文化センターにはメインの音楽ホールが2つあり、会議室や練習場も備えている

…キラッ

竜也「!」

ロビーの大階段の上の方で、何かが光った
近付いてみると、それはリナが落としたキーホルダーだった

竜也「これはリナの…!」

階段に落ちていたと言うことは、上に行けと言うことだと悟った竜也は、階段を上がる
2階には、メインの音楽ホールの入り口がある

竜也(よし…)

竜也は音楽ホールの入り口を開ける
赤いシートの座席が、階段の様に下に降りるかの様に並べられてある
見上げると、2、3階分の高さがある場所にも席がある
ステージは奥行きを感じるほど広く、音や声がよく響く

……コツン……コツン……ッ

竜也「…!」

ステージの方から、足音がした
見ると、ステージ端からビショップが現れた

竜也「…アリエス…!」

ビショップ「…思ったより、早かったですね」

竜也「リナはどこだ!?」

ビショップ「彼女の事が心配ですか?クールな方だと思っていましたが」

竜也「いいからリナを出せ!」

ビショップ「…焦らなくても、ちゃんといますよ」

そう言うとビショップはステージ端の方に手を伸ばす
拘束されたリナが引っ張られて現れた

竜也「リナ!」

リナ「んんっ…!(竜也…!)」

ビショップ「さぁ、取引と行きましょうか。先程の電話の通り…貴方の心と彼女を交換しましょう」

竜也「先にリナを離せ」

ビショップ「…」

竜也にまだ抵抗がある様に見えたのか、ビショップはエスポワールを起動する
薙刀を発動し、リナの喉に刃を向ける

リナ「っ!」

竜也「なっ!?止めろっ!」

ビショップ「これでもまだ、貴方が有利な立場だと?」

竜也「っ…分かった…!」

ビショップ「こっちに来てください。先に言っておきますが、罠は張っていません。」

竜也「くっ…」

リナ(竜也…っ)

リナを人質にされている以上、勝手な事は許されない
竜也は慎重にステージへと向かう
リナは竜也に向けて、小さく首を横に振る
「来るな!」と言いたいが、ガムテープで口を塞がれてるため、こうするしか伝える手は無い

竜也「…来たぞ」

ビショップ「エスポワールをこちらに投げてくれますか?」

竜也「…あぁ」

竜也は首からエスポワールのネックレスを外す
手元が見える様に、ネックレスを前に投げる
ネックレスがステージの中央に落ちたところを見計らって、ビショップはリナを連れて、ステージの中央に移動する

ビショップ「…」

竜也(…気付いてないみたいだな)

ビショップが早く中央に来ないか待っている
これは竜也が考えた作戦だ
実は竜也が投げたエスポワールは、エスポワールの幻覚で作った偽物だ
本物はポケットの中にある
ここに来る前に、エスポワールの効果を使ったのだ
ビショップが床のエスポワールに手を伸ばすために、姿勢を低くしたその時にリナを救うのだ

ビショップ「…」

ビショップは中央に到着した
エスポワールに向けて手を伸ばす

竜也(よし!今だ…)

ところが

ビショップ「気付いてないと思っていました?」

竜也「!」

ビショップ「言ったはずですよ?私は心が見えると、ですから貴方の作戦なんてバレバレですよ」

ビショップは偽物のエスポワールを踏みつける
偽物は消えた
それが分かると、リナを自分の後ろに突き離す
すぐに薙刀をリナに向けた

リナ「んっ!」

竜也「リナ!」

竜也はリナを助けようとすぐ駆けつけるが、ビショップの真横を通ってしまう
通ったと同時にビショップは竜也に薙刀を振る
竜也の胸に、昨日と同じ大きな傷が出来る

竜也「がっ…!」

リナ(竜也!)

ビショップ「…やはり貴方の心は綺麗ですね。壊しがいがありますよ。貴方の心を壊せば、彼女は絶望して、心の闇を一気に解放するでしょう。そうすれば、魔女と呼ばれたリルカ・デ・メデューサが蘇るはずだ。本当に、ありがとうございました」

竜也「ぐっ…!」

傷を抑えながらビショップを睨む

ソア「…ビショップの勝ちね…」

3階の観客席の方でステージを見ていたソアは呟く

ビショップ「さぁ、今度こそ壊させてもらいますよ」

ビショップは竜也の身体の中に再び入ろうとする
だが、竜也は絶対に入らせないと、傷を小さくするように抑える

竜也「っう…!」

痛みはあるが、耐える
耐えながら、這いつくばる様にリナの方に向かい、リナを守るように背を向ける

リナ「…!」

ビショップ「おや?最後の悪あがきですか?」

竜也「俺は…!もうあんな悲しみを…!悲しみを仲間に分けたくない…!楽しいことが無くなった辛さを…!音楽を一瞬忘れた恐怖を…!仲間を悲しませた罪を…危険な目に巻き込んでしまった事をもう2度と…!もう2度と失うわけには行かないんだ!」

ビショップ「無駄ですよ、何をやっても貴方には勝ち目なんてない」

竜也に薙刀を向ける
もう1度と傷を付けて、心への入り口を大きくする気だ
もし食らってしまったら、心どころか今度は命も危ない

ビショップ「さらばだ、奏江竜也」

竜也「…!」

ビショップは大きく薙刀を振り下ろした








……ピキピキッ…!パカッ!

その時だった
同時に新たな強化アイテムが生まれたのは…!