前回の続きです
前回の記事を書いている時に、色々検索してたらでてきたのがこれ
エクリン汗腺に発現する機能的嗅覚受容体を発見!
匂いの成分で発汗調節が可能に
2023年03月29日(長崎大学)のリリースなので、10日程のホヤホヤニュース。
ある香料を皮膚に塗ると汗の調節ができるとか。
ある香料とは…?
と、その前に汗についてざっくりとおさらいしておこう。
汗は若干ですが水分調節も担っており、出ないと体温調節できない、出すぎたら多汗症で悩む人も💦
アロマテラピーの資格試験にも出てくる解剖生理学。
特に皮膚のところは詳細だったと思われるが…みなさん覚えているかな?
汗について
汗を作り出すとこは…汗腺といい皮膚に存在する。
汗腺はコイル状に巻いている根元で汗を作り、管(汗管)を伝って汗を出す。
その種類は2種(※3種という説も)ある。
・エクリン汗腺(小汗腺)
・アポクリン汗腺(小汗腺)
※アポエクリン汗腺…下方の分泌部はアポクリン汗腺に似ていながら、エクリン汗腺のように表皮に開口しており、体温調節にかかわっている。
エクリン汗腺(小汗腺)
全身の皮膚に200万~500万個ある
発汗は自律神経(アセチルコリン)の支配
この汗をだすことで熱を下げ体温調節できる
汗は無色
ニオイ無し
アポクリン汗腺(大汗腺)
わきの下、乳輪、外耳道、外陰部などにある
エクリン腺より大きいが、エクリン腺より数は少ない
皮膚下で毛を覆う毛包と管(汗管)で繋がり、毛穴から汗が出るしくみ
発汗は性ホルモン支配(アドレナリン)と関係してる
元々、フェロモンの役割だった汗腺と考えられている
汗は乳白色(脂質を含んでいるので)
汗そのものはニオイがないが脂質やタンパク質を含むため、それを菌が分解するとニオイの元になる
汗腺からの発汗の3種類
・温熱性発汗…体温調節目的、手のひら、足の裏を除く全身のエクリン汗腺から出る。
・精神性発汗…「手に汗握る」といった緊張などの精神的な刺激でかく、手のひら、足の裏、わきなど局所的なエクリン腺、アポクリン腺からでる汗
・味覚性発汗…辛いものなどの味覚刺激でエクリン腺からでる汗
ちなみに体温を下げるためにかく汗は、体表から蒸発する時に気化熱を奪い、体温を下げるしくみだ。なので、皮膚にみっちりと汗が残ったままでは、汗のプールに浸かっているのと同様で、体表から熱を奪うことができないのだ。
発熱して汗をかいたら「汗をよく拭いて」パジャマを着替えましょう、という説明は、体表から汗を取り除かないと体温を下げられないからである。
では、本題に戻り。
発汗調節が可能な匂いの成分の発見とは?
エクリン汗腺が嗅覚受容体を発現し、ある種の香料の皮膚への塗布によって発汗を調節できることを発見。本研究では無汗症(発汗量が正常より少ない症状)における汗のでている皮膚と汗のでていない皮膚のエクリン汗腺に発現するmRNAの種類を比較し、発汗制御に関わる分子を解析。結果、エクリン汗腺における嗅覚受容体OR51A7とOR51E2の発現に注目した。特にOR51A7はβイオノンに反応し、βイオノンを塗布した皮膚の軸索反射性発汗試験で女性の発汗を減少させ、男性の発汗を増加させた。
この男女差は発汗だけではなく、女性協力者は全員βイオノンの匂いを感知できたが、男性協力者はほとんど匂いを感じられませんでした。
ある香料とは…βイオノン(β-Ionone)
イオノンとは?
イオノンは別名ヨノン
分子式 C13H20O
ケトン類(単環性テルペンケトン化合物)
すみれや金木犀様の香りと表現され、いちごなどベリー系にも含まれる
二重結合の位置が違う3種類の異性体、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノンがある
バイオレット(すみれ)精油には約22%のα-イオノンが含まれる
β-イオノンはワインや芋焼酎(カロテノイド由来)にも、毛染めヘナカラーで知られる原料植物ヘンナにも含まれる
γ-イオノンはタマリンドなどに含まれる
イオノンはカロテノイドが酵素によって分解され生成される
β-イオノンはレチノール(ビタミンA)やカロテノイド、および他の香料の合成原料化合物として利用される。植物精油からも得られるが、製造は主に合成香料。
研究結果の展望
長崎大学の研究記事では、今後の展開・将来展望として、次のように締めくくっている。
(1)βイオノンをベースとした新規合成化合物のデザインをもとに発汗異常治療薬の新規創薬
(2)βイオノンを応用した汗対策用の衛生用品の開発
(3)発汗誘発によるアンチエイジング効果の期待(男性)
(4)熱中症の予防
(5)地球温暖化に際し、発汗を制御することでヒトの暑熱順応を促し温暖化に適用させるプラネタリーヘルスへの貢献
私が調べたところ、以下のようなことがわかった。
イオノンの香りは少量でも感じるが、閾値(においを感じられる最低限の濃度)が低いため感じられる人が少ない(日本人で50%くらい?)。また、持っている遺伝子によって感受性が違い香らない人もいる。→嗅覚受容体OR51A7を持っていない(働いてない)人は香らない。
とすると、βイオノンを応用したものは、万人に通じるものじゃないかも?
(ってさんざん書いといてこんなオチでいいのか💦)
【参考】
ドクターズオーガニック 汗腺
ウィキペディア(Wikipedia)汗腺
Kao 汗の基礎知識
Weblio 辞書|イオノン
Nagis Wineworld「Rieslingに特徴的な香りを考える | モノテルペンとノルイソプレノイド」
広島大学|バイオのつぶやき|第48回磯谷敦子客員教授
厚労省|職場のあんぜんサイト
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