言語学者と認知・発達心理学者がタッグを組み、言語学の中では周辺的なテーマと考えられてきたオノマトペの話を足掛かりにして、言語という巨大なシステムの本質に迫る本。
あらゆる感覚や感情などを写し取る擬音語、擬態語、擬情語として、日本人の日常会話にはもはやなくてならないものとなっているオノマトペ。
オノマトペの音象徴やアイコン性、言語間での共通点や相違点などの話だけでも面白いのですが、そこからオノマトペは言語なのか、子どもはどのようにして言語を習得していくのか、言語を習得する過程においてオノマトペはどのような役割を果たすのか、言語の進化の過程でなぜオノマトペから離れなければならなかったのかなど、どんどん新たな問いが生まれ、言語の本質へと迫っていく過程が面白く、普段何気なく使っている言語の深遠な世界に引き込まれていきます。
個人的には、言語の進化にしても、言語の習得にしても、どのようにしてオノマトペから離れて膨大で抽象的な記号の体系へと進んでいくのかというところの話が特に面白かったです。
言語の習得のプロセスを理解するためのキーワードとして、記号接地問題、ブートストラッピング・サイクル、アブダクション推論といった言葉が出てきますが、言語を習得するということは、地面に落ちた一粒の種が、オノマトペによって発芽を促され、大地に根を張り(記号接地し)、推論の力を養分としてぐんぐんと枝葉を伸ばしていく(ブートストラッピング・サイクル)というようなイメージですかね。
この感覚、プログラミング言語を習得する時なんかにも、味わっているかも。
言語に限らず、何か体系的な知識を得ようとするときには、自然にこのようなプロセスを踏むものなのかもしれませんね。