長野遠征、四阿山に登った翌日は曇天のため、山には行かず、北斎が見たいなと思い、小布施にやってきました。
平日の朝9時、開館直後の北斎館。
人もまばらでゆっくりと北斎の絵を楽しめました。
この北斎館、訪れるのは3回目。
北斎好きということもあるんですが、何度来ても飽きない美術館です。
北斎と言えば、一般的には浮世絵版画の印象が強いですが、ここには「富士越龍」、「白拍子」、「二美人」、「菊図」などの晩年の肉筆画の名作が多く展示されており、それらが実に素晴らしいのです。
今回は「生誕260年記念 北斎視覚のマジック」という特別展が行われており、視覚的演出という観点から北斎の初期から晩年までの画業の変遷を見ることができるような展示になっていましたが、その多彩な表現には毎度毎度驚かされます。
小布施ではこれまで北斎館しか入ったことがなかったのですが、今回はお得な三館共通入場券というものを購入し、「高井鴻山記念館」と「おぶせミュージアム・中島千波館」も見学してみました。
北斎館から高井鴻山記念館(東門)に向かう道は、栗の小径と呼ばれています。
道に敷かれた石畳か煉瓦に見えるのは、栗の木。
趣のある小径です。
高井鴻山は小布施の豪農商で、若い頃に京や江戸に遊学し、学問や芸術を学び、高井家当主となってからも学問思想に情熱を傾け、幕末の激動期に佐久間象山などの文人墨客と交流し、私財を投じて自らも時代の変革に関わった偉人です。
その江戸遊学中には北斎とも交流があり、80歳を越えた北斎は何度も小布施を訪れ、鴻山の支援のもと、画業に打ち込んだそうです。
北斎と小布施のつながりは、高井鴻山との交流によって生まれたものなんですね。
敷地内にある脩然楼。
高井鴻山はここに文人墨客を招き交流を重ねたそうです。
高井鴻山記念館では「北斎生誕260年秋季特別展 高山と北斎・応為 小布施に吹いた江戸の風」が開催されており、高井鴻山と北斎と娘の応為(お栄)との交流を伝える手紙や、北斎、応為、鴻山らの絵が展示されていました。
屏風に様々な絵や書を貼り付けた貼り混ぜ屏風や、北斎が下絵を描き、鴻山が仕上げた「象と唐人図」、応為の百合の絵など、興味深い作品がいくつかありました。
高井鴻山記念館を出ておぶせミュージアムに向かう時に見つけたこちらの看板。
小布施の町中のいくつかの施設や民家にはオープンガーデンがあり、誰でも自由にお庭を見学できるようになっているみたいです。
他にどういうお庭が見られるのかわかりませんが、地図やガイドブック的なものもあるようで、手軽に緑や季節の花を愉しむことができて面白い取り組みですね。
特にお庭作りが趣味な人にはいいですね。
おぶせミュージアム・中島千波館は、小布施生まれの日本画家、中島千波さんの作品や小布施の祭り屋台を展示する施設です。
中島千波さんの作品には初めて触れましたが、主に人物画と花の絵のを描かれる人なのですね。
今秋は「秋の中島千波展 人物画とクロッキーデザイン」という企画展を開催しており、人物画が前面に押し出されていましたが、これらの作品群は私はちょっと苦手でした。
ただ、花の方は、特に桜の絵が素晴らしかったです。
一本桜の巨樹を四曲一双の屏風に枝の一本一本、花の一輪一輪まで丁寧に描いた作品群は、その迫力に圧倒されました。
さて、小布施と言えば小布施栗。
街のあちこちで様々な栗のお菓子を買ったり食べたりすることができ、新栗の出回るこの季節は特に多くの人で賑わいます。
今回はそんな栗スイーツを2種類食べてみました。
1つは小布施堂のモンブラン(1個600円)。
栗の風味豊かでかなり美味しいです。
この小布施堂では、新栗の収穫期の1ヶ月間限定で、「朱雀」という究極の栗菓子が味わえるそうですが、惜しくも昨日提供を終了したとのことで味わうことはできませんでした。
(ただ、今年はオンラインでの事前予約のみで、どのみち無理だったようです。)
この朱雀、いつか食べてみたいですね。
もうひとつは、味麓庵の福栗焼き(1個320円)。
栗の形をした鯛焼きのような焼き菓子です。
大きさは高尾山の天狗焼くらいかな?
割ると中にはたっぷりの栗餡と栗。
日が差さずちょっと肌寒い日でしたので、このアツアツ、ホクホクがたまらなくおいしかったです。
このあと、お土産に栗のお菓子をいくつか買い、小布施の道の駅に移動して、栗と、りんご(秋映)と、シャインマスカットをお安くゲット。
あとはおそばですね。
長野に着いた日に、長野駅の駅ビルに小諸のお蕎麦の名店「草笛」が出店しているのを発見したので、お昼を食べに行きました。
草笛の名物は「くるみそば」。それにとろろとくるみおはぎがついた草笛セットをいただきました。
くるみそばは滑らかに練られたくるみのペーストをそばつゆで割ったくるみだれでいただくお蕎麦で、くるみの風味と甘味が何とも言えないおいしさです。
くるみおはぎは餡は入っておらず、そとにまぶしたクルミと砂糖の味でいただくシンプルなおはぎですが、きなこおはぎとはまた違ったくるみ特有の風味で、これもまたおいしかったです。
秋の信州は美味しいものが多くていいですね。
ついつい食べ過ぎてしまいます。
長野では、着いた日の夕方に善光寺そばにある長野県信濃美術館東山魁夷館も観に行きました。
信濃美術館本館は現在リニューアル工事中で、東山魁夷館はそれに先駆けて1年前にリニューアルオープンしたばかり。
今秋は「コレクション展第Ⅳ期 東山魁夷館開館30周年記念特別展『東山魁夷 日本画への出発』」を開催していました。
戦後、風景画家としての絵のスタイルが確立する以前の、戦前の作品を集めた展覧会でしたが、これらの絵の中にものちの作風の萌芽のようなものが感じられ、とても興味深く観ることができました。
この東山魁夷館には、本人から寄贈された千点近い作品が所蔵されており、定期的に入れ替えを行いながら展示・公開されているようですので、また訪れてみようと思います。