暗幕のゲルニカ | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録

 

 

原田マハさんの美術小説を2作連続で読みました。

 

まず、1冊目は「暗幕のゲルニカ」。

 

スペイン内戦時にドイツ軍が行ったゲルニカに対する無差別都市爆撃(ゲルニカ爆撃)への反発のメッセージを込めたピカソの「ゲルニカ」。

 

1937年のパリ万博で初めて公開され、アメリカ各地での展覧会に出展され、その後勃発した第二次世界大戦の戦火から逃れるため、そのままアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)に保管されていたこの名作が、ピカソの故郷であるスペインに返還されたのは戦後、三十数年を経た後のこと。

 

「暗幕のゲルニカ」では、ピカソの愛人ドラ・マールの視点で描いた「ゲルニカ」の制作過程からパリ万博を経てアメリカに渡るまでのストーリーと、9.11後のニューヨークにおいて、MoMAの日本人キュレーターがスペイン返還後、国外に出されることのなかったゲルニカを、ピカソ展の目玉として再び迎えようと奔走するストーリーが並行展開していきます。

 

「楽園のカンヴァス」も2つの時代のスト―リーが並行展開する構成でしたが、あちらが回想型とすればこちらは共鳴型。

 

時代を超えて、共に「ゲルニカ」を通して反戦と平和を願うメッセージを伝えようとする人々の思いを、「ゲルニカ」だけでなく、様々な形でシンクロさせているところ、そして、最後に2つの時代の強い結びつきが一つ一つ明かされていく過程が非常に面白い作品でした。

 

タイトルにもなっている「暗幕」もそうですが、ピカソが好んで描いたという「鳩」の絵の登場のさせかたが特に印象的でした。

 

「暗幕」の黒と「鳩」の白。平和への願いを表した「ゲルニカ」と、平和の象徴である「鳩」。

 

暗闇の中に希望を見出すような確かなインパクトがありました。

 

もし、ピカソの作品を1点飾るとすれば「鳩」がいいですね。