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落語小説集 芝浜 (小学館文庫)
702円
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「芝浜」、「井戸の茶碗」、「百年目」、「抜け雀」、「中村仲蔵」
落語の人気演目をノベライズしたこの作品。
その発想が目からウロコで読んでみました。
少し前に、NHKで「超入門!落語THE MOVIE」という落語を映像化した番組がありましたが、あれも目からウロコでした。
よくよく考えれば、落語も物語なんですから小説にもなりましょう、映像化もできましょう。
でも、普通は落語は落語としてしか見ない。
完成された芸として見ているからでしょうか。
確かに、この小説、落語の感覚で読み始めると、かなり違和感を感じます。
落語は説明を極力端折り、巧みな話芸と所作でもってテンポよく話を進めていきますが、小説にはそのようなテンポの良さがなく、じりじりとじらされているようなもどかしさがあります。
しかし、背景や所作をじっくりと緻密に描き、逆にあえて余計な会話を省くことで、落語では表現できない広がりや奥行きを出せるのが小説のいいところです。
それを理解してからは、ひとつの時代小説として味わい、楽しむことができました。
ただひとつ残念だったのは「百年目」が江戸の話に置き換えられていること。
「百年目」といえば、米朝師匠のイメージが強いので、元の船場の商人の話のままにしてほしかった。