桜の季節も最終盤。
今年は桜を観ることを主目的として出掛けることはありませんでしたが、最後にもう少しだけ名残りの桜を観ておこうかと思いついたのが吉野の桜。
そのついでに、これまた気になっていた吉野から熊野へと続く修験の道、大峯奥駈道を洞川温泉まで歩いてみることにしました。
吉野から洞川温泉までは約21km。標準コースタイムで9時間30分。
また、洞川温泉から帰りはバスになりますが、その最終が15時58分発。
逆算すると、標準コースタイムよりも少し早く歩けるとしても、吉野駅を7時までには出発したいところ。
自宅から始発で吉野に向かったとしても7時には到底間に合わないので、マイカーで吉野の少し手前、洞川温泉からの帰りのバスが停車する下市口駅に向かいました。
下市口駅近くの駐車場に車をデポし、下市口駅から吉野行きの始発に乗り、吉野駅に6時35分に到着。
この時期、観光客でにぎわう吉野でも、さすがにこの時間に駅に降り立った人は2~3人。
時折、車が行き交うだけで、ほぼ歩いている人はおらず、お店も開いていない、静かな吉野のメインストリートを下千本から奥千本へと登って行きます。
銅製としては現存最古で、宮島の木の鳥居、天王寺の石の鳥居と並び、日本三鳥居の一つとされる銅の鳥居。
金峯山寺の仁王門は修理中のようです。
金峯山寺蔵王堂。
ちょうど中では朝座勤行が行われており、読経の合間に法螺貝や太鼓が鳴り響く、修験道独特の雰囲気を少しだけ感じることができました。
下千本、そして、蔵王堂の少し先、中千本辺りはすっかり葉桜。
桜の代わりにシャガがそこら中にわんさか咲いていました。
それでも、上千本まで登ってくると、桜の花が目立つようになってきました。
上千本、花矢倉展望台からの吉野全景。
上千本から中千本が満開の時期には白やピンクが目立つここからの風景ですが、今はもう緑が勝っています。
吉野水分神社。
時刻は8時前。まだ閉まっていました。
上千本と奥千本の間にある高城山展望台。
この辺りはちょうど見頃でした。
奥千本の方向を見ると、山の斜面の一部が薄くピンクに染まっています。
こちら、奥千本口の桜ですね。
満開を少し過ぎ、散り始めといった感じです。
吉野山の地主神、金山彦命を祀る金峯神社。
金峯というのは、吉野山から大峯山にかけての一帯の総称で、古来、地下に黄金の鉱脈があると信じられていたのだとか。
左手に少し下ると、義経隠れ塔。
大峯修行場のひとつで、義経が弁慶らとともに隠れたとも言われています。
さて、吉野駅から金峯神社までは、ほぼ車道歩きでしたが、ここからいよいよ本格的に大峯奥駈道になります。
と、その前に右手の道にちょっと寄り道。
奥千本最奥にある名所、西行庵です。
上皇の身辺警護を務める北面の武士であった西行が、23歳で武士の地位を捨てて出家し、庵を結び、3年間住んだのがこの地なのだそうです。
西行庵の前にはちょうど見頃の山桜。
西行は月と花をこよなく愛し、ここ吉野でも花を詠んだ和歌を数多く残しています。
中でも西行の心をとらえたのは桜なのでしょうね。
吉野山、東山、平泉、戸隠、弘川寺...
私がこれまでに訪れた西行ゆかりの地にも、桜を詠んだ歌、桜に因んだ逸話、”西行桜”と名付けられた桜の木などが残されており、能にも同じく”西行桜”という演目があり、西行といえば桜と強く印象付けられています。
そんな西行の桜好きのルーツはやはりこの吉野の桜だったのでしょうか。
この山桜の華やかすぎない朧げな美しさには、何かこう西行のような世の中に嫌気がさした人の心にじんわりと染み入るような優しさも感じられます。
西行庵から大峯奥駈道に戻る道の途中には、西行が
とくとくと落つる岩間の苔清水 汲みほすほどもなきすまいかな
と詠んだ苔清水もありました。
遠目に振り返る西行庵の桜。
こうしてみると、けっこうな急斜面なのに木の密度が低く、ここの地盤、大丈夫なんだろうかと不安になります。
(2)へつづく...