熊野古道中辺路散策(2) | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録

 

熊野古道中辺路の旅、2日目。

 

霜が降りるほどに冷え込んだ朝でしたが、この日も快晴。

 

日が昇り、日置川に立ち込めていた川霧が次第に薄れていき、対岸の紅葉が鮮やかに輝き始めました。

 

こういう景色を見ていると、季節こそ違いますが、枕草子の”春はあけぼの...”を思い起こします。

 

 

この日は近露王子からスタートです。

 

近露からしばらくはほぼ車道歩き。

 

全体的に緩やかに登っていく感じで、いくつかの集落を抜けて行きます。

 

 

お、ジョウビタキ♂。

 

今シーズン初見です。

 

 

比曽原王子を過ぎ、途中、少し道を外れると、名水百選、野中の清水があります。

 

 

どばどばと水量豊富。甘露でとてもおいしいお水です。

 

この先、しばらくお店や自販機などのない道が続きますので、ボトルにたっぷりと汲んでいきます。

 

 

再び熊野古道に戻ると間もなく継桜王子に到着。

 

継桜王子の周囲には9本の杉の大木があります。

 

 

これらの杉は枝が南向き一方向にのみ伸びていることから、一方杉と呼ばれているそうです。

 

これらの一方杉は、明治時代の神仏合祀の際に伐採の危機に直面しますが、南方熊楠らの保存運動によって残されたそうです。

 

熊楠先生、素晴らしい!

 

 

継桜王子の隣にはとがの木茶屋という休憩所があります。

 

ちょうど紅葉見頃で、かやぶきの茶屋とともに素晴らしい景観です。

 

 

茶屋の方の話では今年の紅葉は色づきがイマイチとのことでしたが、天気がいいこともあり、十分きれいです。

 

 

とがの木茶屋の先には秀衡桜があります。

 

先代の秀衡桜は何年か前の台風で倒れてしまったようで、写真中央やや右にあるのがその切り株で、その右にあるのが当代の秀衡桜だそうです。

 

ここには、滝尻王子近くにあった乳岩に生まれたばかりの赤子を置き去りにして熊野へ向かう途中の秀衡が、赤子の無事を祈って、杖にしていた桜の木をこの地に突き立てたという伝説があり、その桜の木が成長したものが秀衡桜と呼ばれるそうです。

 

それにしても、秀衡のこの一連の行動...よくわかりません。

 

 

中川王子、小広王子、熊瀬川王子を過ぎ、山道に入り、草鞋峠を越えてしばらく下ると、迂回路の看板がありました。

 

紀伊半島に甚大な被害をもたらした平成23年の台風12号の影響で地すべりの兆候が見られるとのことで通行止めになっているとのこと。

 

すでに7年経っていますが、地すべりの兆候となると、再び通れるようになるにはまだまだ相当かかりそうですね。

 

 

ということで、迂回路に向かいますが、本来の熊野古道よりも少し標高の高いところを越えて行くようで、そこそこ急な登りが続き、結構きついです。

 

峠近くまで来て振り返ってみた景色。

 

いやぁ、よく登ってきました。

 

まだアップダウンはありますが、この峠がこの日の最高地点。

 

しばし、一山越えたという安堵感に包まれます。

 

 

峠からしばらく下ると蛇形地蔵があり、この先で再び本来の熊野古道に戻ります。

 

 

迂回路には古道感はありませんでしたが、このあたりからは再び古道の雰囲気が出てきました。

 

 

湯川王子を過ぎると、再び急な登りになり、

 

 

最後の峠、三越峠に到着。

 

近露王子からここまではコースタイム4時間55分のところを休憩込みで4時間45分。

 

ちょうどお昼過ぎだったので、ここでお昼休憩。

 

きれいな東屋があり、トイレもあり、昼食にはもってこいの場所です。

 

 

三越峠からは下り基調。

 

途中、地すべりのあとでしょうか、斜面が大きくえぐれた場所を通り過ぎました。

 

先程の迂回路もまさにこういうことになるリスクがあるから設けられたものだと思いますが、このあたりは台風や大雨によって時折大きな被害を受ける地域です。

 

数年や数十年という短いスパンで考えても、古道を変わりなく維持していくのは、相当難しいことでしょうね。

 

 

ということを考えながら歩いていると、また迂回路が...

 

今度は、今年の台風21号の被害の影響とのことです。

 

この迂回路のため、スタンプの押印所のある猪鼻王子には行けませんでした。

 

 

林道をゆるゆると下って、発心門王子に到着。

 

滝尻王子と同じく格式の高い王子で、かつてはここに発心門、すなわち「悟りの心を開く入り口」とされる大鳥居があったそうです。

 

時刻はちょうど14時。

 

帰りのバスが本宮大社前16:45発なので、そこが気になっていましたが、このペースで行けば、16:00には本宮大社に着けそうなので、ほっと一安心です。

 

 

発心門王子から水呑王子までは久々に人家や田畑の広がる中、車道を歩きます。

 

ホオジロがいました。

 

 

水呑王子の前は紅葉がきれいでした。

 

 

たわわに実る柿の木と里山風景はこの季節の定番。

 

 

伏拝王子から祓殿王子へと続く最後の山道の途中、ちょっと脇道へそれて、「ちょっとよりみち展望台」へ。

 

日が傾きかけ、新宮川の広い河原に大きく影を落とし始めた中にすっくと立つ大斎原の大鳥居。

 

そして、その奥に連なる熊野の山々。

 

いい景色です。

 

珈琲でも淹れて、このまま夕暮れ時までゆっくりとこの景色を味わいたいところですが、行かなくてはなりません。

 

 

ちょっと寄り道展望台から熊野本宮大社までは1km足らず。

 

そういえば、ここまで35kmほど熊野古道を歩いてきながら、いかにも古道という情緒のある、道そのものの写真をほとんど撮っていませんでした。

 

振り返ってみれば、迂回路を通ったりしたせいもあるかもしれませんが、思ったほど古道という雰囲気を感じる道がなかったような気がします。

 

時代の変化に応じて、道は使いやすいように変化していくものですから、どこの古道へ行ってもそんなものかもしれませんが...

 

ということで、最後にちょうどいい雰囲気の石畳の道がありましたので撮っておきました。

 

 

最後の山道を抜けると、中辺路、滝尻王子~熊野本宮大社間にある最後の王子、祓殿王子に到着。

 

 

そして、ほどなく、熊野本宮大社の裏側の鳥居に到着。

 

時刻はほぼ想定どおりの16時前。

 

総距離24.5km、コースタイム8時間35分のところを、8時間ちょっとでした。

 

 

ようやくたどり着いた熊野本宮大社。

 

ただ、とにかくお参りしなきゃという気持ちが先走り、参拝の作法をろくに確認もせず、思うままにお参りしたのですが、あとで参拝の順序が全然違っていたことに気づき、ちょっと後悔。

 

次に来るときは、きちんと順序通りにお参りしたいと思います。

 

 

熊野本宮大社では、神の使いである三本足の烏、八咫烏が至るところに描かれ、あしらわれ、祀られています。

 

この黒い八咫烏ポストもそう。普通に投函できるポストで、はがきとして送ることができる八咫烏ポスト絵馬なんかもあるそうです。

 

 

八咫烏に関連する授与品もいろいろありましたが、この八咫烏おみくじもその一つ。

 

烏というより九官鳥か文鳥かといったかわいらしい姿ですが、中に入っているおみくじも変わっていて、吉や凶ではなく、進むべき道を示す八つの文字の一つが書かれています。

 

私が引いたおみくじには「風」という文字。

 

まあ、風みたいな人生ですからね...と妙に納得。

 

力を与えてくれる神様は「八百万の神さま」だそうです。

 

他のおみくじにどんなことが書かれているのかわかりませんが、一番ぴったりな字を引いたような気がします。

 

 

無事お参りを済ませ、帰りは熊野本宮大社前のバス停から16:45発のバスに乗り、紀伊田辺駅へ。

 

最終のくろしおに乗り換え、行きと違ってスムースに帰ることができました。

 

 

今回、初めて熊野古道を歩いてみましたが、三連休にもかかわらず、道中、ほとんど人に会いませんでした。

 

おかげで静かな古道歩きを堪能できましたが、ちょっと意外でした。

 

宿の人の話では、前日まではいっぱいだったとのことでしたが、外国人が多かったそう。

 

確かに、電車やバスで多くの外国人(ほぼ西洋人)を見かけましたし、熊野古道でも何人かに出会いました。

 

世界遺産だからというだけではなく、それ以上に西洋の人々を惹きつけるものがあるのかもしれませんが、日本人ももっと熊野古道を歩こうよ...そんなふうに思いました。

 

 

今回は熊野古道の中でも最もベーシックな中辺路の滝尻王子から熊野本宮大社を歩きましたが、中辺路にはさらに大雲取越、小雲取越などのルートがありますし、熊野三山の熊野那智大社や熊野速玉大社にも参っていませんので、中辺路完歩を目指して、また季節を変えて歩きに来たいと思います。