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若冲 (文春文庫)
756円
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2年前、生誕300年ということで若冲が盛り上がりましたが、その伊藤若冲の半生を描いた小説です。
若冲は、京の錦小路にあった青物問屋枡屋の長男として生まれ、23歳で家督を継ぐも、商売に熱心ではなく、40歳で弟に家督を譲り、以来、85歳で没するまで絵を描き続けたそうです。
ただ、絵を描くこと以外には関心を持たず、酒や遊興もたしなまず、生涯独身であったと言われている若冲ですが、その生涯についての詳細な記録はほとんど残っていないそうです。
しかし、逆に言えば、想像の余地も大きいわけで、多くの人を魅了する、あの美しく独創的な絵がどのように生まれたのかという、人々の興味に対して、作家がどのような解釈を提示してくれるのか...というのがこういう作品を読む楽しみであるわけです。
この作品での若冲の周囲には、孤独、哀しみ、憎しみ、苦しみなど、ネガティブな感情が渦巻き、若冲の生き方にも共感できるところがほとんどなく、読んでいて息苦しさを感じるくらいでしたが、あの絵に対してこういう解釈というのは確かにありうるなとは思いました。
美しい絵を描く絵師が美しく幸せな人生を送っているとは限らない...ということですかねぇ。