越後妻有アート散策(2) | Archive Redo Blog

Archive Redo Blog

DBエンジニアのあれこれ備忘録

ライトケーブ

 

越後妻有アートトリエンナーレ2018のアート巡り2日目は中里エリアの最奥部にある清津峡渓谷トンネルから。

 

今回の芸術祭で一番観たかった作品です。

 

さすがの人気スポットですね、朝9時頃に着いたのですが、すでに駐車場待ちの長蛇の車列。

 

幸い20分待ちくらいで駐車場に入れましたが、帰りにはさらに車列が伸びていました。

 

早めに来てよかったです。

 

こちらの最大の見どころは、トンネル最奥部にあるパノラマステーション。

 

上から見下ろすリアルな渓谷の風景と、トンネル壁面と床面に張られた水面に映し出される渓谷の風景が幻想的な眺めを生み出しています。

 

子供たちが水の上をびちゃびちゃと歩いて水鏡が波打っているのが少し残念ですが、これはもう子供たちの本能ですから、仕方ないですね。

 

 

清津峡は黒部峡谷、大杉谷と並んで日本三大峡谷に数えられるそうで、この清津峡渓谷トンネルは、清津峡の景観をより身近に安全に見れるように掘られた観光用のトンネルなんだそうです。

 

 

全長750mのトンネルを進んでいくと、3つの見晴所があります。

 

 

第一見晴所。

 

 

外を眺めると、目の前に高くそそり立つ岩盤が見えます。

 

斜めに走る筋は、清津峡の特徴である柱状節理です。

 

 

第二見晴所。

 

中央にある物体はトイレです。

 

 

第三見晴所。

 

天井に貼り付けられたバックライトのついたミラーが壁面からオームの内側に入ったような感じですね。

 

 

そして、パノラマステーションから見た清津峡渓谷。

 

この柱状節理、圧巻のスケールですね。

 

 

清津峡渓谷トンネルの手前にはエントランス施設があり、2階が足湯になっています。

 

ペリスコープ マ・ヤンソン/MADアーキテクツ

 

足湯の天井の開口部にはミラーがあり、清津峡の景観が映し出される仕掛けになっています。

 

潜望鏡をイメージした作品だそうです。

 

 

清津峡渓谷トンネルを見学した後は、そこへ向かう道中にあった「磯辺行久記念越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]」へ。

 

 

こちらでは「磯辺行久の世界-記号から環境へ」という企画展が開かれていました。

 

磯辺行久さんは現代美術作家でもありますが、そうした作品の展示よりも、環境計画家として制作した作品や記録が興味深かったです。

 

こちらの世界の海流を表現した作品や、

 

 

瀬戸内海の潮流を表現した作品、そして何よりも2000年からの妻有でのプロジェクトの記録の展示が充実しており、

 

川はどこにいった 磯辺行久

 

美術館の外にも、信濃川水の路プロジェクトの作品の一つ、「川はどこにいった」の一部が展示されていました。

 

土石流のモニュメント 磯辺行久

 

「信濃川水の路プロジェクト」の作品は、美術館以外の場所にも点在しています。

 

その一つ、「土石流のモニュメント」は2011年、東日本大震災の翌日に発生した長野県北部地震で発生した土石流の流路を黄色いポールを立てて視覚化したもので、巨大な砂防堰堤とともに土石流の爪痕を示すモニュメントになっています。

 

サイフォン導水のモニュメント 磯辺行久

 

「土石流のモニュメント」の向かいには地中を走る水力発電用の導水管を可視化した「サイフォン導水のモニュメント」もあります。

 

ポチョムキン カサグランデ&リンターラ建築事務所

 

倉庫美術館のあとは、この「ポチョムキン」など、いくつかの作品を観ながら、JR飯山線沿いまで戻り、

 

ワープクラウド ダミアン・オルテガ

 

津南町の中心部にあるこちらの作品へ。

 

天井から張られた糸に大小の球が付けられ、それが幾重にも重ねられることによって、奥へ向かって収束していくような視覚が生み出され、そこに吸い込まれていきそうな宇宙的な感覚が得られます。

 

最後の教室 クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン

 

津南町からは松之山、松代エリアへ。

 

その途中に立ち寄った「最後の教室」は旧東川小学校の校舎や体育館を使って展開している大規模なインスタレーション作品。

 

 

真っ暗な廊下を進み、2階、3階へと上がって行くと、

 

 

各教室に光と闇を利用したさまざまな作品が展開されていました。

 

影の劇場 クリスチャン・ボルタンスキー

 

死生観漂う不気味な展示でしたが、小学校の頃のお泊り会で感じた夜の学校の不気味さを思い出しました。

 

家の記憶 塩田千春

 

古民家に蜘蛛の巣のように張り巡らされた黒い毛糸。

 

この家に刻まれた生活の記憶が朧げに浮かび上がります。

 

瀬戸内もそうでしたが、妻有でもこうした古い空き家を利用した作品がとても多かったです。

 

 

道すがら、いくつかの作品を観ながら、松代エリアの中心的施設、まつだい農舞台へ。

 

2階ではアボリジニの伝統楽器イダキの世界を紹介する企画展が行われていましたが、こちらでは何気なく入ったトイレが面白かったですね。

 

入るまではよかったんですが、さて出ようかと思うと、まったく同じドアが3つ並んでおり、どれが出入口でどれが個室なのかわからず困惑。

 

入った時に見えた景色・角度なんかを思い出しながら推測し、ノックして恐る恐る開けてみると無事一発で正解でしたが、こういう現代アート施設のトイレは油断なりませんね。

 

花咲ける妻有 草間彌生

 

まつだい農舞台のそばに展示されていたこちらの作品は一目でそれとわかる草間彌生さんの作品。

 

草間彌生さん本人が一番気に入っている野外彫刻作品なんだそうです。

 

真上からも見てみたいですね。

 

 

また、まつだい能舞台に隣接する「まつだい郷土資料館」は築140年のけやき造りの民家を利用して昔のこの地の暮らしの道具や資料を展示しています。

 

雪国ならではの工夫なども見られて興味深い展示でした。

 

その他にも、まつだい能舞台の周辺には多くの作品がありましたが、この日も早くも夕方近くなってきたので、2日間の日程のアート巡りもそろそろ締めにかかります。

 

 

といっても、最後に見たのは、この地の象徴的な風景である棚田です。

 

一番有名な星峠の棚田というところに寄ってみました。

 

あいにく日が陰り始めた時間帯ではありましたが、夏の濃い緑の棚田は美しいですね。

 

 

星峠の棚田の近くのアート作品を観て回っている時に目撃した動物。

 

見た時はタヌキかと思っていたのですが、どうもアナグマのようですね。初めて見たかも。 

 

こういう出会いも里山の芸術祭ならではかもしれません。

 

 

以上、2日間、妻有のアートを駆け足で巡ってきましたが、6つのエリアに378点というアート作品が点在するこの芸術祭を観るのに2日では全然足りないですね。

 

6つのエリアといっても、すべて地続きでどこへでも行こうと思えば行けるので、歯止めが効かないというか、2日間で回れるだけ回ろうと気ばかりが焦ってしまい、1つ1つの作品を十分に味わうことができなかったような気がします。

 

そういう意味では瀬戸内の方が、近くて何度も行けるという気軽さもあり、今回はこの島だけと割り切れていいかもしれませんね。

 

でも、島とは違う里山・農村の芸術祭の雰囲気を味わえてよかったと思います。