前から気になっていた小野アルプスを歩いてきました。
自宅から小野へ行くには、神戸電鉄粟生線か、JR加古川線か、あるいは自動車かということになりますが、小野アルプス縦走のスタート地点に最も近いのがJR加古川線の市場駅であり、所要時間でも新快速で加古川まで行って加古川線に乗り換えるのが最速だったので、そのルートを選択しました。
しかし、乗った新快速がまさかの遅延。
加古川駅に着いてみると、加古川線の電車は出た後でした。
次の電車は約30分後ですが、目的地の市場駅の1つ手前、厄神駅止まりで、さらにその次の電車も同じく厄神駅止まり。
市場駅まで行く電車はなんと1時間半後。
なんと間の悪いことでしょう。
駅員さんに聞いても、他にバスなどの代替交通機関はなしとのこと。
諦めて引き返すか、1時間半待つか、厄神駅から歩くか、しばらく思案した結果、厄神駅から歩くことにしました。
しかし、いろいろ事情はあるようなのですが、加古川駅からわずか3駅の厄神駅止まりってどうなんでしょう...
せめてあと3駅、神戸電鉄、北条鉄道との乗換駅である粟生まで行ってくれれば利便性がいいのに。それでこそ、鉄道”網”なのに。
と、釈然としないまま、厄神駅に着き、とにかく歩き始めます。
上の写真は、その途中、加古川に架かる橋の上から撮った小野アルプスの全景。
すんなり、市場駅まで行っていたら、見れなかった景色ではありますが...あまり慰めにはなっていませんね。
厄神駅から1時間強、約6km歩き、小野アルプス縦走のスタート地点である、「白雲谷温泉ゆぴか」に到着。
逆ルートだと、ゴール即温泉なんでいいですね。
当初予定から2時間近く遅れて出発です。
歩き始めて約10分で最初のピーク、高山(127.1m)に到着。
低いながらも加古川を見下ろす、なかなかの眺望です。
遠くには六甲の山並みが見えます。
小野アルプスは、標高200mにも満たない山々が連なる自称「日本一低いアルプス」だそうです。
この高山から前山(135.8m)、愛宕山(154.2m)、安場山(156.6m)、総山(168.4m)、アンテナ山(171.6m)と、雑木林の里山のような山々をアップダウンを繰り返しながら歩いて行きます。
わずか数十メートルのアップダウンではありますが、インターバルトレーニングのようでなかなか疲れます。
そして、小野富士と呼ばれる一番高い惣山(198.9m)へ。
惣山の山頂は木々に囲まれて眺望はありませんが、少し歩くと、展望デッキと呼ばれる見通しのいい岩場があり、ここから周りの景色がよく見えました。
中央やや左手にここまで歩いてきた小野アルプスの山々。
遠くには少し霞んでいますが、明石海峡大橋も見えます。
北側には小野の町並み。
そして、西側には権現湖と小野アルプス縦走最後のピークであり、最大の見どころ、登りどころ(?)である紅山(182.8m)が見えます。
惣山から急坂を下り、紅山へと登り返すと目の前にどーんと露出した岩肌が現れます。
この岩稜登りが小野アルプスの醍醐味。
低山にもかかわらず、小野アルプスと呼ばれる所以でもあります。
最初緩やかなんですが、徐々に傾斜がきつくなっていき、最後は両手両足を使って、這い登る感じになっていきます。
体力も使うし、緊張感もあり、息が上がります。
しかし、この岩稜は流紋岩という岩でできているそうで、固い岩質でボコボコと凹凸もあるので、落ち着いて登ればそれほど怖いことはありません。
慣れてくると、軽くボルダリングをやっているような感覚でかなり楽しいです。
山頂から振り返って。
紅山から権現湖を望む。
権現湖の手前を走る道路は山陽自動車道。
ということは、山陽自動車道からもこの岩稜が見えるはずですが、何度も通っているのに、こんなところにこんな山があることに気づいていませんでした。
紅山を下れば、小野アルプス縦走のゴール。
小野アルプスハイキングマップでは14.7km、コースタイム3時間45分とありましたが、実際にはそんなに距離はないのではないでしょうか。
休憩込みで2時間45分で歩けました。
小野アルプスは、紅山の岩稜登りも面白いですし、眺望もなかなかですし、距離も標高差もほどほどで、この程度の時間で歩ききれますし、エスケープルートも何ヶ所かあるので、体力に合わせて気楽に歩けていいコースだと思います。
低山ゆえに珍しい花には出会えませんでしたが、紅山からの下山途中にはサユリが咲いていました。
小野アルプスを歩き切った後は、近くにある鴨池へ出て、ここからさらにもう一つ気になっていたあびき湿原に向かいます。
あびき湿原は鴨池から一山越えたところにあり、車道だとぐるっと大回りして約3.5kmほど歩かなければならないのですが、鴨池には鴨池一周コースというハイキングコースがあり、地理院地図ではこの道からあびき湿原の方へショートカットできる枝道が書かれていました。
ということで、行ってみたのですが、地図上の分岐点あたりに江戸時代かそれ以前かというような古い古い道標があり、かすかに道らしき形跡が見られたものの、少し踏み入ってみると、蜘蛛が網を張って待ち構えており、藪漕ぎも必須。
距離もわずかだし、地図とGPSがあれば行けそうな気もしましたが、この先がどうなっているのかもわからないため、自重しました。
こういうほぼ廃道みたいな道は地図には載せないでもらいたいものです。
いや、逆に小野アルプスとあびき湿原をセットで歩いて楽しめるよう道を再整備してもらったほうがいいのかもしれません。
というわけで、大きく距離と時間をロスしましたが、何とかあびき湿原の入口に到着。
湿原は柵で取り囲まれており、また、湿原の手前では靴底に着いた植物の種が持ち込まれないよう、小川で靴底を洗うようになっており、大切に守られているようです。
それほど広くは感じないのですが、それでも兵庫県下でも最大級の湿原であり、希少な生物も見られるということなので、かなり厳重です。
あびき湿原では、季節ごとに様々な花が見られるそうですが、この日はノハナショウブと、カキランが見頃でした。
カキランは兵庫県版レッドリストではCランクに指定されている希少な植物だそうですが、ここではあちこちたくさん咲いていました。
もう少し早ければ、トキソウ(Cランク)も見れたそうですが、もう終わったのかこの日は見つけられませんでした。
生き物の方ではハッチョウトンボが見れました。
こうして見ると、赤トンボですが、その体長はわずか2cm程度。
日本最小のトンボです。
赤い方はオス。
茶色い方がメスです。
小さくて、また、ほとんどこうして止まってじっとしているので、最初、気づくまでには時間がかかりましたが、慣れてくると結構たくさんいることがわかってきました。
このハッチョウトンボも、多くの都道府県でレッドリストに指定されている希少なトンボだそうです(兵庫県ではBランク)。
ただ、時間も遅く、他に誰もいなかったので、自力で見つけられたのはこれくらい。
湿原に向かう途中に観察会か何かと思われる団体さんとすれ違いましたが、そういうのに参加していろいろ教えてもらった方がいいのかもしれませんね。
ただ、希少な環境であることはよくわかりました。
また、是非違う時期に訪れてみたいものです。
網引湿原からは歩いて、これもちょっと気になっていた北条鉄道の網引駅へ。
ここ、網引駅はローカル鉄道らしい風情のある駅で、鉄道ファンに人気となっています。
駅舎の横には大きなイチョウの木があり、秋はとてもきれいなんでしょうね。
ただ、こんなのどかな風景ではありますが、戦時中には、この駅のすぐ近くを走行中の列車の目の前を横切って旧日本陸軍の戦闘機紫電改が墜落し、その時に線路を引っかけて歪めてしまったため、列車が転覆して死者12名を出すという悲劇もあったそうです。
18時3分、粟生行きの列車に乗り、帰路につきます。
帰りは乗り継ぎもスムースで、すこぶる順調でした。
今回は、電車が遅れたり、道選びに失敗したりで、大きく時間をロスしましたが、それでも予定していたコースを歩き切ることができたのは、日の長い今の時期だったからこそ。
ちょっと疲れましたが、失敗も含めていろいろ経験できていい山歩きになりました。