プレミアムフライデーじゃないですけど、7月末の金曜日、仕事を定時で切り上げて、大阪国際美術館にボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展を観に行きました。
通常の開館時間は17:00までなのですが、「バベルの塔」展期間中は金曜日、土曜日に限り、夜間開館を行っており、21:00まで開館時間が延長されているのです。
「バベルの塔」展は、ネーデルランド絵画の系譜をたどりながら、奇想の画家、ヒエロニムス・ボスの出現、そしてその影響を受けた画家たちを経て、ピーテル・ブリューゲル1世へと至り、最後にその代表作「バベルの塔」という展覧会の構成。
その「バベルの塔」は、推定510mという壮大なスケールの塔であり、かつそれを細部に至るまで精緻に描写しているものですから、それなりに大きな絵かと思っていたのですが、実物は約60cm×75cmと想像以上に小さなものでした。
名画と呼ばれる作品には、こういうことが往々にしてあるような気がするのですが、気のせいでしょうか。
この日は、夜間開館はあまり知られていないのか、入場者もそれほど多くなく、ゆっくり観れましたが、それでもやはりこの作品の前には人が集中し、じっくり立ち止まって観ることはできませんでした。
ただ、細部を拡大したパネルや、東京藝術大学COI拠点の協力で作成したというCG映像や、「AKIRA」などでお馴染みの大友克洋がバベルの塔の内部構造をテーマに制作した「INSIDE BABEL」など、バベルの塔のイメージを膨らませる展示が、実物に対する欲求不満を補ってくれていました。
ブリューゲルの「バベルの塔」は”一生に一度は見たい名画”ですが、ボスから受け継がれた奇想の作品もかなり面白いです。
こちらは「バベルの塔」展の公式マスコット「タラ夫」ですが、ブリューゲルが下絵を描いた版画作品「大きな魚が小さな魚を食う」に登場するモンスターがモデルとなっています。
この「大きな魚が小さな魚を食う」や「七つの大罪」、「七つの徳目」シリーズなど、人間と共に奇々怪々なモンスターを画面いっぱいに描き、倫理的な命題を表現した作品は特にインパクトがありました。
こうしたボスに始まる奇想の絵画の数々は、少し前に兵庫県立美術館で開かれていた「ベルギー奇想の系譜展」でも観賞しました。
こちらは”奇想”というテーマに特化し、ボス、ブリューゲル、マグリットから現代アートまで、より幅広い時代をカバーした展覧会の構成になっており、”奇想”の世界を満喫することができました。
しかし、「バベルの塔」展と「ベルギー奇想の系譜展」は、会期が近く、似たようなテーマの展覧会にもかかわらず、全くリンクしていないところが不思議なところ。
これを観るならこれも合わせて観るべきかなと、自分で調べてコーディネートしたわけですが、美術館相互に協力して鑑賞者の興味を誘導し、幅を広げ、裾野を広げていくような取り組みでもすればいいのにと思ってしまいます。
でもって相互割引などがあるとなおうれし。
兵庫県立美術館と神戸市立博物館などはけっこう相互割引などをやっているんですが、自治体が違うとむずかしいんですかねぇ。