瀬戸内国際芸術祭の夏会期、岡山を起点に1泊2日の日程で観に行ってきました。
岡山駅から西宝伝行きの直行バスで48分、宝伝港から船で10分で犬島に到着。
まずは犬島の中心部の集落を回り、犬島「家プロジェクト」などの作品を鑑賞します。
I邸/プレーンミラー 小牟田悠介
「家プロジェクト」のギャラリー内の作品は写真撮影不可のため、遠目から建物の外観のみ。
庭に住民の方々が世話をしているという花畑が広がるこちらの家には、ミラーを使って建物の中と外を一体として見せる作品がありました。
C邸/エーテル 下平千夏
こちらは元庄屋さんの家を改築したギャラリーで、中には建築現場などで使われる水糸が張り巡らされており、ハンモックに寝そべって見上げたり、階段を登って上から見下ろしたりしながら体感できる作品になっていました。
中の谷東屋 妹島和世
五脚のアルミ製のラビットチェア置かれた休憩所。
何の変哲もないように見えますが、屋根から漏れる光が描き出す模様や、音や声の反響がおもしろい作品です。
A邸/リフレクトゥ 荒神明香
透明なアクリル板を円形に配した家(?)
アクリル板にはカラフルな造花の花びらが上下対象に張り付けられていて、内部からは周囲の光景とともに作品を楽しめるようになっています。
S邸/コンタクトレンズ 荒神明香
こちらも透明のアクリル板を連ねた作品。
大きさの異なる円形のレンズが配されていて、背景がそこに映し出されることによって不思議な造形が生まれます。
木や森を背景にしたり、向かいの民家を背景にしたり、あるいはそこを通る人がいたり、様々な模様が楽しめます。
石職人の家跡/太古の声を聴くように、昨日の声を聴く 淺井裕介
全景ではわかりにくいですが、家の跡に古代の壁画のような動物や植物の模様が描かれた作品。
集落の路地にも同じような模様が見られました。
F邸/Biota(Fauna/Flora)
これも民家を改築したギャラリーで、生物相(動物相/植物相)を立体表現した3つの作品群が展開されていました。
集落内のアートを観賞した後は、犬島精錬所美術館です。
こちらは1909年に開設された銅の精錬所の跡地を活用した美術館です。
銅の精錬所は開設後わずか10年後、銅の大暴落によって操業停止となったそうですが、今なお数本の煙突と煉瓦の壁や床が遺構として残されています。
この普通の煉瓦よりも黒っぽい煉瓦は「カラミ煉瓦」と呼ばれる煉瓦です。
よく見ると金属的な光沢や割れ方などが特徴的ですが、これは銅の精錬の過程で生まれたスラグを用いて作られているからだそうです。
犬島精錬所美術館 アート:柳幸典/建築:三分一博志
2007年に近代化産業遺産に認定されたこ精錬所跡を美術館として再生したのが「犬島精錬所美術館」。
犬島産の石やカラミ煉瓦を利用した建築の中に、三島由紀夫をモチーフとした作品数点が展示されています。
アート作品を観た後は、近代化産業遺産としての精錬所跡地を歩いて観賞します。
どこに何の目的のための建物があったかというところまではわからないところも多いそうですが、意外と広い敷地内に様々な形の建物の遺構が残されています。
アート作品にしても、近代化産業遺産にしても、ただ漫然と歩いて観て回っているだけでは、なんだかよくわからないものですが、犬島の港にある犬島チケットセンターでは、この犬島精錬所美術館や家プロジェクトなどすべての作品について解説してくれる音声ガイドの貸し出しも行われていますので、そのガイドにしたがって観賞するのも理解が深まっていいと思います。
敷地の一番奥にあるのは火力発電所の跡だそうです。
芸術祭の期間中には、この発電所跡の前で「犬島パフォーミングアーツプログラム」というイベントが開催されるそうで、訪れた当日もその公演があるらしく、その舞台装置などが準備されていました。
犬島は小さな島でアート作品もその中心部に集中していますので、ゆっくり回っても3時間ほどで全作品を鑑賞できました。
他の島々とは少し離れていて島へのアクセスも異なるため、プランを組み立てるのが難しいかもしれませんが、半日を岡山市内の散策に充てたり、小豆島、直島、豊島のアート観賞の前後に立ち寄るというのもいいかと思います。