日本人のためのピケティ入門: 60分でわかる『21世紀の資本』のポイント/東洋経済新報社- ¥864
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普段と違う書店に入ると、推している本が随分違っていたりして、そこで思わぬ発見をしたりすることもあり、面白いものです。
特に大学生協の書店は面白いですね。
今、大学生に詠まれている本、大学生が読むべき本というものがどんなものなのかがよくわかります。
そこで目についたのが、”ピケティ”。
「21世紀の資本」という話題の経済書を記したフランスの経済学者です。
その「21世紀の資本」は、資本主義が始まって以来、資本家と労働者の格差は一貫して拡大し続けてきたことを、欧米の過去200年以上にわたる経済データを分析して示したものだそうですが、理論的に未整理で分量も多く、読み物としては非常に難解とのこと。
ということで、その内容をわかりやすくかみ砕いて説明した本が多数出ています。
この本もその一つ。
ピケティの入門書としてベストかベターか、正直わかりませんが、一般の人が雰囲気を知るにはいいと思います。
この資本家と労働者の格差の拡大というのは、最近の傾向としては英米では大企業の経営者の報酬の急激な上昇によるところが大きいようです。
日本では、その点に関しては英米ほど著しい格差はなく、内部留保に勤しむ企業と労働者の間の格差や正規雇用と非正規雇用の格差のほうが問題だとしています。
(とはいえ、最近は日本でも、日産の社長やソフトバンクの副社長の報酬が話題になったりしますが...)
いずれにしても、元来、発展するにつれ所得分配は平準化されると言われてきた資本主義において、このような格差の拡大が続いているのは、そのシステムに欠陥、盲点、矛盾といったものが存在している、あるいは税制、教育、金融などのシステムとの整合性に問題があることを示しているわけですね。
ピケティは所得分配の不平等の是正にために、グローバルで累進的な資本課税と、そのために必要なグローバルな金融情報の共有を提案しているそうです。
先日読んだ、「歴史家が見る現代世界」では、グローバルでトランスナショナルなつながりが現代世界の特徴だということを指摘していましたが、拡大し続ける所得格差を今後どう修正し、資本主義をどう発展させていくのかということを考えていく上でも、国家や国家間ではなく、グローバルな視野をもって取り組まねばならないということなのでしょうね。