負けんとき 上: ヴォーリズ満喜子の種まく日々 (新潮文庫)/新潮社- ¥680
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明治末期に来日し、近江八幡を拠点に、キリスト教の伝道、教育、建築からメンソレータムの製造・販売まで、幅広い分野での業績を残したアメリカ人、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。
彼の建築にはなにかと縁があり、どこかに出掛けるついでに彼の手掛けた建築物を観たり、展示会などのイベントがあれば観に行ったりもしています。
ただ、彼の人生全般という意味では、それほどよく知りません。
ある時、書店で偶然目にしたこの本は、そんなヴォーリズを題材にした小説とのこと。
いい機会なので読んでみました。
日本人の女性と結婚し、年老いた両親をアメリカから招き、ついには日本に帰化してまで、日本のために尽くしたヴォーリズですが、その妻となった旧播州小野藩最後の藩主の娘である一柳満喜子さんもまた、優れた教育者として活躍された方なんですね。
この作品では、ヴォーリズというよりも、ヴォーリズ夫妻が様々な困難や逆境を共に乗り越えていく、そんな愛に満ちた人生を、満喜子さんの視点で描いています。
一般的には決して知名度が高いわけでもないヴォーリズ夫妻を、しかも主として満喜子さんを題材にしているというところが、すごくニッチなところを突いてくるなぁと、意外に思えたのですが、著者の玉岡かおるさんは、満喜子さんの卒業した神戸女学院の出身で、その神戸女学院の建物はヴォーリズ建築の代表作。
なるほど、そういうご縁があるわけですね。
歴史小説というか、伝記ものというか、こうした作品は、男性作家が男性を題材にして書いたものばかりを読んできたので、そういった意味でも、なかなか新鮮な味わいで、時代といい、ストーリーといい、また、女性ならではといいますか、優しさや柔らかさを感じる文章といい、NHKの朝ドラのような雰囲気を感じます。
ヴォーリズに興味のある方はもちろん、女性にも好まれそうな作品ですね。
負けんとき 下: ヴォーリズ満喜子の種まく日々 (新潮文庫)/新潮社- ¥767
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