
まことに小さな国が、開花期を迎えようとしている。
という書き出しで始まる司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」
明治期の日本を描いたこの作品の三人の主人公、秋山好古、秋山真之、正岡子規の故郷松山には、三人の足跡を記す史跡や施設が数多くあります。
そんな「坂の上の雲」の物語を感じる街歩きというのも、松山観光の魅力のひとつですが、その中核施設となるのが、この「坂の上の雲ミュージアム 」です。
東大阪にある司馬遼太郎記念館もそうですが、こちらも安藤忠雄建築なんですね。
ここでは、三角形の建物を下から上へとスロープを登りながら、三人の主人公の足跡、彼らが生きてきた明治という時代、そして作品について学ぶことができますが、3Fから4Fへのスロープの壁一面に貼られた「坂の上の雲」の新聞連載の展示は圧巻でした。
この新聞連載は、ファイルに綴じてあるものを自由に閲覧することもできるのですが、この形で本を出しても面白いのではないかと思います。

展示をひととおり観た後は、ミュージアムカフェで地元の銘菓と飲み物をいただきながら、関連書籍を読んだりしながらくつろぐことができます。
ミュージアムショップではグッズやお土産物がありますが、何か一つくらい記念になるものがほしかったので、人気No.1という「みゅーじあむセット」なるものを買いました。
メモ帳、一筆箋、クリアファイル、ブックカバー、しおりに缶バッジが付いたお得なセットです。
あと、「坂の上の雲」を冠したお菓子がいくつかあり、そのうちの一つ、一六タルトでおなじみの一六本舗が出している「坂の上の雲」を買って食べてみたのですが、空にぽっこりと浮かぶ雲のような形で、しっとりとした皮の中に伊予柑を混ぜ込んだミルク餡が爽やかで美味しかったです。

坂の上の雲ミュージアムからほど近いところには、主人公のうちの二人、秋山兄弟生誕地があります。
原型に近い形に復元された生家には、ゆかりの品々が展示されています。
兄の好古さんは軍を退いた後、松山で中学校の校長先生をしていたんですね。
生涯を通して、教育に熱心な方だったようです。

生家の前には騎乗姿の秋山好古とその対面に目線を合わせるようにして立つ真之の銅像。
今のこの時代の松山において、何を語り合っているのでしょうか。

道後温泉の近くには、もう一人の主人公、正岡子規の生涯や作品世界を紹介する、「子規記念博物館 」があります。
子規自身、あまり人気がないのでしょうか、中は閑散としていましたが、非常に充実した展示内容で、病に侵されながら創作を続けた壮絶な生涯と、当時の文学界に革新をもたらした功績の数々をよく知ることができます。
秋山兄弟生誕地で教えてもらったのですが、数年前に3年3期にわたって放送されたNHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」が、この秋から来年の春にかけて、再放送されるそうです。
前回はところどころ飛ばしてしまったので、今回はちゃんと全部観なければ。
いや、それより、原作もちゃんと読まなければ...(笑)