宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議 (講談社現代新書)/講談社- ¥777
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宇宙生物学というのは宇宙規模で生命の起源や成り立ちを解明する学問だそうです。
この本では、宇宙生物学の研究に携わったのち、医師へと転身した筆者が、宇宙生物学と医学を結び付けて、人体の仕組みの不思議について紹介しています。
そのカギとなるのは、人体を構成する酸素、炭素、窒素、リン、鉄などの元素。
これらの元素が人体においてどのような役割を果たしているのか、不足すればどうなるのか、多すぎるとどうなるのか...
そもそも、なぜそれらの元素でなければならないのか、他の元素で生命は作ることはできないのか...
そういう謎に満ちた人体の仕組みも、宇宙視点で、宇宙の誕生、地球の誕生から、生命が誕生・進化していく過程を見ていくと、目から鱗が落ちるように理解できることがあるというわけです。
生命にとって不可欠な酸素がそもそもは毒であるという話など、どこかでちらっと耳にしたような話も、なぜそうなったのかを実に明快に解説してくれており、とても面白いです。
そして、炭水化物...
炭水化物を抜けば肉や魚は好きなだけ食べてもよい...という話題の炭水化物抜きダイエットについても、その危うさを指摘しています。
炭水化物は燃焼させても廃棄物として出るのは人体にとっては無害な水と二酸化炭素のみですが、タンパク質からは毒性の高い窒素を含んだ廃棄物が出るそうで、タンパク質を採りすぎるとそれを代謝するために肝臓や腎臓に負担をかけてしまう恐れがあるのだそうです。
炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素についても、そのほかの様々な栄養素、あるいは元素についてもそうですが、要はバランスが大事ということなんですね。
何にしても多過ぎても少なすぎてもダメ。
この本を読むと、人体というものが実に微妙なバランスの上に成り立っているということがよくわかります。