燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)/司馬 遼太郎- ¥780
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最近、読むようになった幕末もの。
勝者が正義と言いますか、勝てば官軍と言いますか、どうしても倒幕派を描いたものが中心になってしまいますが、たまには佐幕派の声も聞いてみようと思い手に取ったのが、新撰組副長、土方歳三を描いたこの作品です。
新撰組というと、幕末という変革期にあって、時代の流れやイデオロギーとは無関係に、ただ坂東武者のような気骨と戦国牢人のような野望のみを原動力として活動していたような印象を受けます。
ただ、それでも、時勢が大政奉還へと大きく動き出すと、初志貫徹とはいかず、幹部や隊士が相次いで離反し、局長の近藤勇すらその信念がぶれ始め、官軍との戦いで敗走を繰り返しながら四分五裂していくという行く末を歩んでいくことになるわけです。
(結果論ではありますが)時代錯誤な理念を掲げ、変革の波に乗り損ねた新撰組は、結局、この時代の歴史に革命を加速させるスパイスのようなインパクトしか残せなかったわけですが、そんな新撰組にあって、最後まで時勢に流されることなく、ただただ武士としての生きざま、死に場所というものを求め続けた土方歳三には、戦国時代における真田幸村などにも通じる生き方の美学のようなものを感じます。
この「燃えよ剣」でも司馬さんなりの解釈の土方歳三が生き生きと躍動しています。
小説であるが故に、すべてが史実通りというわけではありませんが、武士としての生きざまだけでなく、お雪との逢瀬で見せる優しさなども含めて非常に魅力的に描かれていると思います。
「龍馬がゆく」の龍馬とお田鶴様なんかもそうですが、司馬さんの描く男女の恋ってけっこう印象に残るんですよね。
燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)/司馬 遼太郎- ¥780
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