グリーン資本主義 | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録


グリーン資本主義 グローバル「危機」克服の条件 (岩波新書)/佐和 隆光
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石油と自動車が牽引してきた20世紀の経済発展と成長は、21世紀初頭、金融危機という形でひとつの行き詰まりを見せました。

では、21世紀は何が経済成長の原動力となるのか。

それを考える上で、20世紀の終わり、1997年に京都議定書が採択されたことは歴史的に意義のあることであったのではないかと著者は言います。

つまり、石油と自動車が成長を牽引してきた20世紀が「CO2排出の世紀」であったとするならば、21世紀は「CO2削減の世紀」ということになり、グリーン・ニューディール政策のような気候変動対策こそが21世紀の経済成長の原動力となる、ということです。

著者は、地球温暖化対策は経済成長を阻害する、あるいは国民負担を増大させるといった批判にも、それは計量経済モデルを悪用し、国民の不安をあおるよう仕掛けられたものだと反論し、政策次第で鳩山首相が宣言した温室効果ガス排出量を90年比25%削減するという目標も十分に達成可能だと力説します。


若干余計な説明、冗長な説明も多いものの、石油・自動車が牽引した20世紀型資本主義からグリーン資本主義とも呼ばれる21世紀型資本主義への流れがわかりやすくまとめられていると思います。

ただ、経済成長と地球温暖化対策をセットで考えようとすることに対して、個人的に抱いている懸念や違和感をすっきりと払拭してくれるようなインパクトのある目新しい主張は感じられませんでした。


技術革新、経済成長の根本的な原動力となるのは、人間の欲望です。

20世紀型の技術革新・経済成長は、その方向性が人間の欲望に合致するものであったため、半ば自発的に推進力を増していきました。

しかし、21世紀型の技術革新・経済成長の中核と目される環境技術については、現時点では、欲望というよりは個人の美意識に依存するものであり、そういう意味では20世紀のようなトルクフルな経済成長というのは望めないものではないでしょうか。

著者も、その点は認識しており、優遇税制などのインセンティブを巧妙に仕掛けることの重要性を主張していますが、原油価格が急騰するとか、異常気象の規模と頻度がより深刻なレベルまで拡大するというような、相当追い詰められた状況にでもならない限りは、なかなかうまくいくようには思えません。

また、そのようなインセンティブや排出権取引といった仕組みが、あたらな利権やバブルの温床になるのではないかという懸念に対して、一切言及がないことにも物足りなさを感じました。


まぁ、地球温暖化対策に取り組むのはよいとしても、それを21世紀の経済成長の起爆剤として期待する時期ではないのかな...

それよりはむしろ、無理に仕掛けることによって生まれる歪みと、そこから引き起こされる新たな問題に対する懸念の方が強いかな...

そんな気がします。