パラダイス鎖国 | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録


パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)/海部 美知
¥760
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鎖国と言うと様々な分野での外資の参入に対する規制や障壁等、外から内へのベクトルで語られることが多い今日ですが、逆に内から外へのベクトルで鎖国について指摘しているのがこの本です。



高度成長期を経て世界第二位の経済大国となり、先進国の仲間入りを果たし、豊かさを手に入れた日本。


しかし、快適な生活を手に入れたがゆえに、今の日本人は無意識のうちにかつてのような海外へのあこがれや興味を失い、海外に果敢に飛び出して行こうという意欲も失い、快適な自国に閉じこもろうという傾向が強まっていると筆者は指摘します。


この現状を筆者は「パラダイス鎖国」と呼んでいるわけです。



永遠に続くのであれば「パラダイス鎖国」も悪くはありません。


しかし、パラダイス鎖国化した結果、かつてのソニーやホンダのようにベンチャーから世界ブランドへと飛躍する企業が新たに誕生することもなく、存在感を増す中国など新興国とは対照的に、世界の中での存在感が急速に薄れつつあります。


また、外部の変化に柔軟かつ迅速に対応できない社会システムは日本全体に何ともいえない閉塞感を生み出しています。



このような現状を打破するための方策として、筆者はゆるやかな開国と、イノベーション・ベースの経済体質の強化を提唱しています。


具体的に踏み込んだ提言ではありませんが、決して日本を見放すかのような批判論に終始しているわけではなく、日本の未来への期待を込めて実現可能な提言をされているというスタンスが心地よい読後感を与えてくれる一冊です。