「ここ、ちょっと暗くなりませんか?」
「ここ、ちょっと暗くなりませんか?」
間取りを見ながらお話ししていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
リビングには大きな窓がある。
ダイニングにも光は入りそう。
でも、
図面の少し奥まったところを見ながら、
「この辺って、暗くならないですか?」
と。
家を建てるなら、
できるだけ明るい家にしたい。
そう思うのは自然なことですよね。
そんなとき私は、
「では、ここにも窓をつけましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「この場所では、どんなふうに過ごしそうですか?」
と、お聞きしてみます。
「暗い」と聞くと、
あまりいい印象を持たないかもしれません。
昼間なのに照明が必要。
じめじめしている。
なんとなく居心地が悪い。
そんな場所であれば、
もちろん光の入り方を考えた方がいいでしょう。
でも、
家の中のすべての場所が、
同じように明るい必要があるかというと、
少し違うようにも思います。
例えば、
料理をする場所。
本を読む場所。
ソファで休む場所。
廊下を歩く場所。
夜になる前に、
少しぼんやり過ごす場所。
そこで必要になる光は、
それぞれ違います。
以前、ご相談いただいた方も、
リビングの奥にあるスペースを見ながら、
「ここ、暗そうですよね。」
とおっしゃいました。
そこには大きな窓がなく、
南側の窓からも少し離れていました。
そこで、
「ここでは、何をしていると思いますか?」
とお聞きしてみました。
少し考えて、
「たぶん、ソファに座って本を読んだりしていますね。」
と。
「そのとき、リビングの窓際と同じくらい明るい方がいいですか?」
と聞いてみると、
「そう言われると、そこまで明るくなくてもいいかもしれません。」
とおっしゃいました。
むしろ、
少し奥まっていて、
窓から入る光を横から感じられる。
そのくらいの方が、
落ち着いて座っていられそうでした。
「暗い場所」だと思っていたところが、「少し光の静かな場所」に見えてきたんです。
光というと、
どうしても「量」を考えがちです。
窓を大きくする。
窓を増やす。
できるだけたくさん、
自然光を入れる。
でも、
窓が多ければ、
必ず心地よくなるわけでもありません。
眩しくてカーテンを閉めることもあります。
外からの視線が気になって、
一日中レースカーテンを閉じていることもあります。
家具を置ける壁が少なくなることもあります。
だから私は、
光の量だけではなく、
どこから入って、どこに届くのか。
そんなことも考えています。
明るい場所があるから、
少し暗い場所が落ち着く。
少し暗い場所があるから、
窓から入る光がきれいに見える。
朝には、
東から光が入ってくる。
昼になると、
壁に柔らかく光が回る。
夕方には、
床に長い影が伸びる。
家の中の光は、
一日中同じではありません。
その変化を感じられることも、
家で過ごす楽しさの一つかもしれません。
もちろん、
「暗くてもいいですよ」という話ではありません。
キッチンで包丁を使う。
洗面で身支度をする。
子どもが勉強する。
そんな場所には、
その行為に合った明るさが必要です。
だからこそ、
単純に明るいか暗いかではなく、
「ここでは何をするんだろう。」
と考えてみる。
すると、
必要な光も少しずつ見えてきます。
ですから、
「ここ、ちょっと暗くなりませんか?」
と聞かれたとき、
私は、
「ここは、どんな時間を過ごす場所になりそうですか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
朝から明るくしたい場所なのか。
作業しやすい光が必要なのか。
外の明るさを眺めながら、
少し落ち着いて過ごしたい場所なのか。
それによって、
必要な光は変わります。
家の中には、
明るい場所があって、
少し光を抑えた場所があってもいい。
その違いがあることで、
自然と居場所を選べることもあります。
家全体を明るくするのではなく、その場所で過ごす時間に合った光を考える。
私は、「暗くない家」を目指すだけではなく、そこでどんな時間を過ごしたいのかをお聞きしながら、光と影の両方が心地よく感じられる家を一緒に考えていけたらと思っています。
「子どもが自分の部屋にこもらない家にしたいんです。」
「子どもが自分の部屋にこもらない家にしたいんです。」
家づくりのお話をしていると、
こんなご希望をいただくことがあります。
子ども部屋は、
あまり広くしない方がいい。
テレビやゲームは、
できればリビングで。
階段もリビングを通るようにして、
帰ってきたら顔を合わせられるようにしたい。
「大きくなっても、家族と一緒に過ごしてほしくて。」
そんな思いをお聞きすることがあります。
そんなとき私は、
「では、子ども部屋を小さくしましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「お子さんが部屋にいることの、何が気になりますか?」
と、お聞きしてみます。
子どもが自分の部屋へ行く。
扉を閉める。
何をしているのか分からない。
声をかけても、
なかなか出てこない。
そんな姿を想像すると、
少し寂しく感じるのかもしれません。
でも、
もう少しお話を聞いてみると、
「部屋に行ってほしくない」ということではない場合があります。
一人で過ごす時間も、
もちろん必要だと思っている。
ただ、
家族との関係が、
そこで完全に途切れてしまうような感じが心配。
そういうことだったりします。
それなら、
考えたいことが少し変わってきます。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「子ども部屋を居心地よくしすぎたくないんです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「どうしてですか?」
とお聞きしてみました。
「ずっと部屋にいたら、何をしているのか分からなくなりそうで。」
さらに、
「では、リビングにいてくれたら安心ですか?」
と伺うと、
少し考えてから、
「ずっとリビングにいてほしいわけでもないですね。」
と。
お話を続けていくと、
ご夫婦が大切にしたかったのは、
子どもがいつも親の近くにいることではありませんでした。
帰ってきたら、
「ただいま」と顔を合わせる。
夕食のときには、
なんとなく集まってくる。
自分の部屋へ行く途中で、
リビングにいる家族の気配を感じる。
ときどき、
何でもない話をする。
一人になっても、家族との関係が切れないこと。
そんな暮らしを望んでいたんです。
子どもは、
ずっと同じ年齢ではありません。
小さい頃は、
親のそばで遊んでいる。
少し大きくなれば、
一人で本を読んだり、
ゲームをしたりする。
中学生や高校生になれば、
友達と話したいことも、
一人で考えたいことも増えていくでしょう。
自分の部屋へ行くこと自体は、
自然なことなのかもしれません。
だから、
「部屋にこもらせないこと」を間取りの目的にしてしまうと、
成長した子どもにとっては、
少し窮屈になることもあります。
それよりも、
リビングに戻ってきたくなる理由を考えてみる。
好きな場所がある。
家族がいる。
飲み物を取りに来る。
庭が見える。
なんとなく落ち着く。
誰かと話したくなったら、
そこへ行けばいい。
無理に集めなくても、
自然と行ったり来たりできる。
そんな家の方が、
そのご家族には合っていることもあります。
「リビングにいさせる」のではなく、「戻ってきてもいい場所にしておく」。
少し似ていますが、
考え方はずいぶん違います。
もちろん、
リビング階段にすることも、
子ども部屋の広さを考えることも、
一つの方法です。
でも、
それだけで家族の関係が決まるわけではありません。
階段がどこにあっても、
自然と会話する家族もいます。
リビングを必ず通っても、
ほとんど話さないこともあるでしょう。
間取りでできるのは、
家族をつなぎ止めることではなく、
つながるきっかけを、暮らしの中にそっとつくっておくこと。
そのくらいなのかもしれません。
ですから、
「子どもが自分の部屋にこもらない家にしたいんです。」
と聞いたとき、
私は、
「お子さんと、どんなふうにつながっていたいですか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
いつも姿が見えていたいのか。
帰ってきたときに顔を合わせたいのか。
食事の時間は一緒にいたいのか。
別々の場所にいても、
なんとなく家族の気配を感じていたいのか。
そこが分かってくると、
子ども部屋をどうするかだけではない考え方が見えてきます。
子どもが一人で過ごす時間もある。
家族と過ごす時間もある。
そして、
その間を自由に行ったり来たりできる。
家族が同じ場所にいることだけが、つながっているということではない。
私は、お子さんをリビングに集める方法を考えるよりも、成長して距離が変わっていっても、自然と家族のところへ戻ってこられる家を一緒に考えていけたらと思っています。
「キッチンから、子どもの様子が見えた方がいいですよね?」
「キッチンから、子どもの様子が見えた方がいいですよね?」
家づくりのお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
料理をしている間も、
リビングで遊んでいる子どもが見える。
ダイニングで宿題をしている様子も分かる。
何かあれば、
すぐに声をかけられる。
「やっぱり、キッチンからリビング全体が見渡せる方が安心ですよね。」
小さなお子さんがいるご家族では、
そんなふうに考えることも多いと思います。
そんなとき私は、
「そうですね。全部見えるようにしましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「どんなときに、お子さんの様子が分かると安心ですか?」
と、お聞きしてみます。
まだ小さなお子さんであれば、
料理をしながらでも、
何をしているのか見えていたいことがあります。
転んだり、
危ないことをしたりしないか。
兄弟で何をしているのか。
そんな時期には、
キッチンからリビングが見えることが、
安心につながることもあります。
でも、
少し大きくなってくると、
必要な距離は変わってきます。
いつでも姿が見えていなくてもいい。
何をしているのか、
全部分からなくてもいい。
それでも、
「家にいるな。」
「今、二階に上がったな。」
と分かれば安心できる。
そんな時期もやってきます。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「キッチンから子どもが見える間取りにしたいです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「どこにいるところが見えたらいいですか?」
とお聞きしました。
リビング。
ダイニング。
庭。
最初はいろいろなお話が出てきました。
でも、
もう少し聞いてみると、
奥様が、
「ずっと見ていたいわけではないんです。」
とおっしゃいました。
料理をしている間に、
子どもが帰ってきたことが分かる。
宿題を始めたことが、
なんとなく分かる。
庭へ出れば、
その気配が伝わってくる。
それくらいでも、
十分なのかもしれない。
そんな話になりました。
そこで見えてきたのは、
子どもの姿そのものより、何をしているかがなんとなく伝わる安心感でした。
家族の様子を感じる方法は、
「見る」だけではありません。
「ただいま」という声が聞こえる。
玄関が開く音がする。
階段を上がっていく足音がする。
ダイニングで鉛筆を動かしている。
庭から子どもの声が聞こえてくる。
姿は見えなくても、
それだけで、
何をしているのか分かることがあります。
反対に、
いつでも家族全員が見える間取りが、
落ち着かないこともあります。
親にも、
子どもにも、
少しだけ自分の時間が欲しいときがありますよね。
だから私は、
「見える」と「分かる」は、同じではないのかもしれない。
と思っています。
キッチンから、
リビング全体が見える。
それが合うご家族もいます。
一方で、
ダイニングだけ見えて、
リビングは少し視線から外れている。
階段は見えないけれど、
上り下りする音は聞こえる。
子ども部屋は二階だけれど、
家族の気配が完全には途切れない。
そんなつながり方もあります。
家の中には、
見える。
聞こえる。
なんとなく分かる。
いろいろな距離があっていいのだと思います。
そして、
子どもは成長します。
今は、
キッチンのすぐ近くで遊んでいるかもしれません。
数年後には、
ダイニングで宿題をするかもしれない。
さらにその先には、
自分の部屋で過ごす時間が増えるでしょう。
ずっと同じ距離でいるわけではありません。
だから、
今の子どもの姿だけを見て間取りを決めるのではなく、
少し先の距離まで想像してみることがあります。
ですから、
「キッチンから、子どもの様子が見えた方がいいですよね?」
と聞かれたとき、
私は、
どこまで分かれば、安心できますか?
と、お聞きしてみたいと思っています。
姿が見えていたいのか。
声が聞こえればいいのか。
帰ってきたことが分かればいいのか。
同じ家にいることを、
なんとなく感じられればいいのか。
その答えによって、
キッチンと家族の場所との関係も変わってきます。
いつでも全部見えることだけが、
家族のつながりではありません。
見えない時間があっても、どこかで気配がつながっている。
私は、お子さんの今の年齢だけでなく、これから家族の距離がどう変わっていくのかもお聞きしながら、そのご家族にちょうどいい「見え方」を一緒に考えていけたらと思っています。