「決められない自分」を責めなくていい
家づくりの相談に来られる方の中には、
「なかなか決断できなくて……」と
少し申し訳なさそうに話される方がいます。
土地のこと。
間取りのこと。
お金のこと。
どれも大事で、
どれも簡単には決められなくて。
「自分は優柔不断なんじゃないか」
「もっとスパッと決められたらいいのに」
そんなふうに、
自分を責めてしまう人は
少なくありません。
でも、私は思っています。
“決められない”という状態は
何かが間違っているサイン、ではないと。
それよりもむしろ、
—— まだ、心が追いついていないだけ。
—— まだ、自分の中で整理が終わっていないだけ。
—— まだ、大切にしたいことを
ちゃんと掴めていないだけ。
そんなことの方が多いのです。
家づくりは
「選ぶ作業」の連続ですが、
同時に、
「何を手放すか」
「何を諦めるか」
「どこに重心を置くか」
—— そういう選択でもあります。
それを、
短い時間で
迷いなく決められる人の方が、
もしかしたら
少ないのではないでしょうか。
悩むということは、
ちゃんと向き合っている、ということ。
考えるべきことを
考えようとしている、ということ。
未来の暮らしを
軽く扱っていない、ということ。
だから私は、
「決められなくて……」と
少し肩を落として話される方に対して、
否定的な感情を
抱いたことはありません。
むしろ、
—— ああ、この方は本気で考えているんだな
と、感じることが多いです。
もちろん、
ずっと迷い続ければいい
というわけではありません。
どこかで決めなくては進まない。
それも事実です。
でも、
「早く決めなければ」
という焦りから生まれた決断は、
後から
心に引っかかりとして残ることがあります。
時間をかけて考えた末に出た選択は、
たとえ完璧ではなくても、
—— “納得”という強さを持ちます。
だから、
いま迷っている方に
お伝えしたいのは、
「決められない自分」を
責めなくていい、ということ。
それはきっと、
弱さではなく
迷いではなく
“真剣さの裏側にあるもの”
なのだと思っています。
少し時間をおいてもいい。
もう一度
同じ場所から考え直してもいい。
その過程もまた、
家づくりの
大切な一部なのだと思います。
もし、
その迷いの途中で立ち止まったら。
誰かに話してみる、という選択も
悪くないかもしれません。
ひとりで抱え込まなくても
いいのですから。
迷っている時間が、あとで効いてくることもある
家づくりの相談を受けていると、
「なかなか決められなくて、進められていないんです」
そんな言葉を
ときどき耳にします。
周りの人は
どんどん土地を探して
間取りの話をして
もう工事が始まりそうな人もいる。
その様子を見ていると
「自分たちは出遅れているんじゃないか」
そんな不安が
ふっと胸に浮かんでしまう。
でも–––
迷っている時間って
本当に「遅れ」なんでしょうか。
ぼくは、そうは思っていません。
迷っているということは
まだ
「ちゃんと考えようとしている途中」
ということでもあります。
すぐに決めることが
悪いわけではありませんが
「なんとなく決まってしまった家」と
「たくさん迷って
やっと選び抜いた家」とでは
住み始めてからの
“納得の深さ”が
少し違ってくるように感じています。
迷っているときって
頭の中で
いろんな可能性を並べてみたり
「これで本当にいいのかな」と
自分に問いかけてみたり
意外と
たくさんの作業をしています。
外から見ると
止まっているように見える時間でも
内側ではゆっくりと
大事なところが整理されていることがあるんですね。
そして、不思議なことに
その「迷った時間」が
あとになって
効いてくる場面を
何度も見てきました。
少し時間をかけて考えたことで
ぶれにくい判断軸ができていたり
家族の中で
気持ちの共有が進んでいたり
将来のことを
自然と想像できていたり。
「あのとき迷ってよかったですね」
そう言葉にできるのは
家ができてから
しばらく経ってからのことです。
もちろん
長く迷えばよい、という話ではありません。
でも「決められない自分」に
焦りを感じたときは
それは“立ち止まるべきところで
立ち止まれているだけ”
なのかもしれません。
迷っていた時間も
家づくりの一部。
そう思えると少しだけ
呼吸が楽になることがあります。
いま考えていることも
迷っていることも
きっとどこかで
静かにつながっていくはずです。
家づくりの不安は、悪いものではない
家づくりの相談に来られる方の多くが、
最初にこうおっしゃいます。
「楽しみなんですけど…不安もあって」
その表情には、
期待と不安が
半分ずつ混ざったような、
なんとも言えない揺れが見えます。
不安を抱えている自分を
どこか責めている人もいます。
「もっとワクワクしてなきゃいけないのに」
そう感じてしまう方も、少なくありません。
でも、私はいつも思います。
不安があることは、
悪いことではないんですよ、と。
それどころか、
家づくりの不安というのは、
たいていの場合、
「ちゃんと考えようとしている証拠」
でもあります。
家づくりは、
人生の中でも
そう何度も経験することのない出来事です。
住まいは「今のため」だけでなく、
これから先の暮らしとも
静かに結びついています。
だから、
-
これでいいのかな
-
本当に合っているかな
-
未来の自分はどう感じるだろう
そう考え始めると、
少し足が止まる。
それは当然のことなんだと思います。
むしろ危ういのは、
不安を感じないようにして、
勢いのまま走ってしまうこと。
考えなくていい理由を探したり、
「みんなそうしているから」と
自分を納得させてしまったり。
あとから振り返ったとき、
「あのとき、もう少し立ち止まって
考えてみてもよかったなあ」
そう感じてしまう方も、
実は少なくありません。
不安というのは、
「やめたほうがいいサイン」ではなくて、
「まだ整理されていないところがあるよ」
と、
心が教えてくれているサインのような気がします。
何を迷っているのか。
どこで引っかかっているのか。
それを一つずつ言葉にしていくと、
ただの“不安”だったものが、
だんだん “考える材料” に変わっていく。
そんな瞬間を
これまで何度も見てきました。
家づくりは、
不安がゼロになってから
始めるものではありません。
不安を抱えたままでも、
少しずつ前に進んでいくもの。
そしてその過程で、
不安は消えるのではなく、
「納得」に姿を変えていきます。
もし今、
あなたが少し不安を感じているのだとしたら。
それは、
間違っているからではなく、
遅れているからでもなく、
ただ、
“ちゃんと向き合おうとしているだけ”
かもしれません。
その不安を
急いで消そうとせずに、
そっと横に置きながら、
一緒に見つめていく。
そんな家づくりであれば、
きっと大丈夫だと思っています。