カラーブックスの古本ネタ 鉄道シリーズから
とはいえ今回の題材は結構な搦め手ですが。
カラーブックスの通巻124「駅弁旅行」(石井 出雄 著)
最近では駅弁は駅で買うというよりも実質的に「スーパーやデパートなんかの駅弁フェアで買って食べるもの」というイメージが定着している気がします。
かつての様にクラブの鉄道模型運転会を併設するとか、鉄道イベントにドッキングさせるというのはまだ良い方で、どうかすると「スーパーの入り口前に無造作に駅弁が積まれているだけ」という弁当大バーゲンと変わらないものも結構多いのですが、それでも人気の駅弁などはさっさと売り切れてしまう辺り駅弁グルメは一般にも定着はしているのでしょう。
本書の初版は昭和42年で大都市圏でも「デパートの駅弁大会」が始まったばかりというタイミングの出版です。
ですから題材は駅弁でも「実際に彼の地に行かないと名物駅弁が買えない、食べられない」時代、駅弁の食べ歩きが気力、体力、粘り(加えて金力、暇の要素も大きいですが)の3拍子揃わないと実行できなかった時代の一冊と言えます。
本書では南の九州鹿児島から始まって、北海道の釧路まで北上する「読む全国駅弁ツアー」の様相で各地の名物駅弁(一つの県に1~3つ程度)を紹介し、併せてその地の観光名所の写真を挟み込む事で「旅情」を感じさせながら読ませる構成。
わたしなんかにとっての収穫は1990年代にコメの不作をきっかけに廃止されてしまった「盛岡のジンギスカン弁当」に再会できた事ですかw
ただ、これは他のカラーブックスでも書いて来た事ですがカラーページと白黒ページが交互に来る構成のために、せっかくの駅弁の半分が「弁当の彩りを愉しめない」ことです。上述のジンギスカン弁当もそのあおりを食ってしまい、モノクロページでの収録となった為嬉しさも半分だったりします。
発行時期の関係もあり、現在では買えなかったり中身が変更されている駅弁ばかりなのですが、パッケージなんかを見ると弁当箱が経木のパッケージ主体だった時代だけに今では味わえない温もりも感じられます。
その意味では単純に昔の駅弁を懐かしむ一冊として今でも機能しますし、巻末の駅弁の歴史や蘊蓄を語るページは今読んでもなかなかに読みごたえがあります。
(むしろ「駅弁趣味」がメジャーでなかった頃の一冊なせいか、趣味の魅力を伝えようとする筆者の熱意が行間から透けて感じられるのがこれまた心地よかったりもします)
本書は望外の入手ができた事も併せて今回の鉄道ネタカラーブックスで最も楽しい一冊となりました。