先日来取り上げているホーンビィのユーロスターのセットに関連したネタから。
メルクリンの時もそうだったのですが、これだけシステム性に優れた鉄道模型のメーカーはカタログも結構魅力的なものが多いと感じます。
今回のセット品にはカタログは含まれていませんでしたが、丁度メル〇リの出物に手ごろなお値段のホーンビィのカタログがあったのを幸い、入手しました。
セットに付属のパンフレットでもあれだけワクワクさせてくれたのですから、本カタログともなればどんな内容なのか読む前から期待が高まります(笑)
到着の夜に寝床で読み通しましたが、読み終わると眠けがすっかり飛んでいました。
わたしがこれまで読んできた、古今東西の鉄道模型カタログのどれよりも楽しかったからです。
このカタログの白眉はなんといっても「どのページにも見開きで魅力的な車両の写真が載っている事」「作例のジオラマ(ミニシーン)が生き生きしている事」の二点に尽きます。
わたし個人は外国型に対する興味は元々それほどではないのです(とか言いつつ面白そうな中古は入線させていますが)がこのカタログを見ていると思わずモデルが欲しくなってくる魔力があります(笑)
あるものは突堤の上を走る列車だったり、あるものは機関区の様に機関車が勢ぞろいしていたり、2列車が高低差のついた線路を併進していたり。
そのどれもがモデルが生きているかのような躍動感を感じさせます。
ジオラマについても車両はもとよりシーナリィの配置が巧みなのとフィギュアやミニカーなどのアクセサリの配置にも神経が行き届いていて、驚くほどのリアリティと、それを上回るワクワク感があるのです。
ですから説明書きの英語がわからなくとも、本書は絵本として十二分に魅力的です。
と、まる一晩本書の魅力に酔っぱらった(笑)翌朝ふと思ったのですが、
本書で魅力的に感じた部分のほぼすべてが「現在の日本の鉄道模型のカタログに対する物足りなさ」と表裏一体になっている気がしたのです。
特に編成物なんかはそうですが、単純に各車の羅列で済まされていたり、走行シーンの写真ひとつとってもありきたりな印象で不思議とワクワク感を感じないのです。
レイアウトやジオラマ関連のパーツについても各アイテムの説明やラインナップこそ豊富ですが、ホーンビィほどに「総体としてのジオラマ(レイアウト)の魅力が感じられない」
(例外的にホーンビィのカタログのノリに最も近いのは1980年代のTOMIXやグリーンマックスのカタログだと思います)
その理由を考えてみるに、ひとつにはテツドウモケイ自体の歴史の長さの差(なんといってもイギリスは実車の鉄道だけでなく鉄道模型、それもレイアウトでは始祖的な国ですし)からメーカーレベルでも「魅力的な模型の撮り方、ジオラマの構成の仕方」に一日どころでない長があるのが関係していそうです。
そしてもう一つがホーンビィ自体がマニアには玩具的に見える鉄道模型を続けてきた関係で「初心者(や子供)をワクワクさせる演出」に長けているからではないかと思います。
この点では日本のメーカーは(仮令KATOやTOMIXといえども)ビギナーをワクワクさせる手管に関してまだまだ差をつけられているという印象を持ちました(というよりも、ビギナーを引き寄せるレベルに達していない)
今までの様なマニア相手のデータの羅列も必要でしょうが、それと同時に「初心者をワクワクさせる情感」をも感じさせる演出が身についてくれば、カタログをきっかけにこの趣味に入ってくる新規層は増えるのではないでしょうか。
ところでさっき「玩具的テツドウモケイ」と書きましたが、本書の出た2014年の時点ですらホーンビィのほとんどの動力車がDCC対応でDCC標準装備のモデルも10機種単位で出ていました。
もちろんDCC準拠のコントローラーも用意され、DCCのメリットを最大限に生かせる「2列車を同時に走らせる基本セット」すら用意されています。
ライバルのメルクリンも3線ACで同様のラインナップ(メルクリンデジタル)を揃えているのは偶然ではないでしょう。
(メルクリンデジタルのセットは以前、某熱帯魚屋さんで中古のセットを見た事がありますがいくらデジタル制御の2列車とはいえ35万の値付けは流石に引きました汗)
細密度や質感では負けていても「走らせてこそ魅力を発揮できる」という鉄道模型としての本質を踏み外していない姿勢がこれらのメーカーからは感じられます。
この点ひとつとっても彼の地でHOゲージがいかに普及しているか(さらに言うならその大半がメルクリンやホーンビィのシステム性を駆使している年少者とその親である現実も)わかろうというものです。