少年ドラマシリーズ「蜃気楼博士」から | MODELと日々の徒然と

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 「私は峠原忠明だ!霊魂となって私の正しさを証明する!見たか久保寺!!」

 今回は懐かしの少年ドラマシリーズから
 先日40年ぶりの再放送が実現した「蜃気楼博士」(昭和53年)を観終えました。
 今回が全くの初見でしたが、回を追う毎にどんどん引き込まれ、最終回まで一気に引っ張られたのには我ながら驚きました。

 原則ビデオ撮りされたスタジオドラマ、しかも当時の家庭用VTRのエアチェック素材で画質は今の目で見ると最悪の一語。一部を除いて今では知った顔がほとんど居ない配役陣。
 本当なら今観返して懐かしさはあっても、引き込まれるなんて事があるはずが無いのに、です。

 その理由はやっぱり「ストーリーがサスペンスフルで、視聴者の興味を繋いでゆく演出力が確かな物だったから」なのでしょう。

 「自称霊能力者の峠原忠明が密閉されたクローゼットから霊魂だけを離脱させ、離れた現場で殺人を犯す。その間峠原はクローゼットから出られずしかも凶器はクローゼットの中にあったはずのものだった」いわゆる心霊系密室トリックの正攻法をついた冒頭部。
 霊能力者に対峙するのがかつて「蜃気楼博士(ドクターミラージュ)」と呼ばれた元スター奇術師、久保寺俊作。

 その後次々に続く心霊殺人とそのトリック解明がストーリーの中心となり、中盤では久保寺の手によりトリックの一部が解明される。


 しかしクライマックス近くなってまさかの久保寺の死、それに伴う畳みかけるようなどんでん返しの連続がラストシーンまで続きます。

 多少セットがチャチだったり、描写にゴージャスさが欠けていても(とはいえあの頃のNHKらしく「多くの取材陣の集まったワイドショーのスタジオ」なんて金のかかりそうな舞台描写もあるのですが)トリックの不可能性とストーリーの緊迫感で一気に引っ張ってしまうのはまさにあの頃の「少年ドラマ」の真骨頂ではないかと。

 少年ドラマだけに主人公は中学生なのですが、彼と兄の雑誌記者が事件に巻き込まれながらも久保寺のアドバイスのもと、謎と真相を追求してゆく中で心理的に成長してゆく(立ち位置は基本傍観者なのですが)過程も丹念に描かれています。
 こうした「主人公の成長」という最近のミステリー系アニメにないプロセスがあるのも、巻き込まれ型サスペンスの多い少年ドラマならではの持ち味でしょう。

 (一見、久保寺のワトソン役かと思われた主人公の兄がラスト近くで一転事件の真相に真っ先に気づくというひっくり返しも見事)

 

 やはり少年ドラマシリーズの魅力はある部分で時代を超えた物がある事を実感しました。

 さて、上で「知った顔のいない配役陣」と書きましたが、これは本作がNHK名古屋で製作され、配役のほとんどが名古屋系の役者ばかりだったというのに起因しています(因みに「中学生日記」も名古屋製作です)


 そんな中で
 久保寺を演じる故井上昭文氏は時代劇の悪役やアクションものの高利貸しなどの印象が強いのですが、本作では理知的な元マジシャンを好演(井上氏はレインボーマンのダイバダッタや西部警察の浜刑事の様な味方サイドの役もありますが)
 また自称霊能力者の峠原忠明を演じる剣持伴紀氏はサンダーバードのアラントレーシーの声、その後光戦隊マスクマンでギャラクシーロボを作った博士の役で印象に残ります。